マネジメント

20170207SEIBU_P01

開発中の吹付ドローン

土木測量では既にドローンの活用が進んでいるが、西武建設ではインフラ構造物の点検と補修にもドローンの導入を検討している。人の入れない場所や高所での点検や補修をドローンで対応できれば、施工の低コスト化や無人化が可能になるため、実用化が期待されている。

土木測量と点検に活用

 西武建設として、ドローンの活用を検討するきっかけは、2014年2月の大雪で、グループ内の西武鉄道の西武秩父線が運休になったことだった。秩父方面の山深いトンネルが雪で塞がり、状況把握をしなければならなかったが、現場に入ることが非常に困難だった。そこで人が入れない場所で情報を得る方法が検討課題に挙がった。また、橋梁をはじめとするインフラ構造物で老朽化が進んでおり、点検・養生の必要が生じているが、その際に長大橋梁や高所での作業に足場を組まずに手軽で低コストに点検する方法の必要性が指摘されるようになった。この2つの観点から、実地検査や点検の分野でドローン導入の検討が始まった。

 さらに業界全体の流れとして、国土交通省が15年11月にICT建設技術を統合した「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の取り組みを発表。土木現場にICT技術を全面的に活用することが推奨され、調査・測量にドローンが活用されるようになってきている。

 西武建設でも、東北復興事業で応札した福島県の保原桑折地区の道路改良工事が、i-Constructionの推奨現場に指定されたことから、測量にドローンを活用。ドローンによる航空写真測量を実施し、現況地盤形状の3Dモデルを作成している。また、災害対応について、16年8月に台風の影響で、西武多摩湖線で土砂崩れが発生した際にも、ドローンを活用した。上空から現場を撮影することで、さらなる土砂崩れなど2次災害の危険性を啓発。早期の復旧の一助となった。

 測量や点検では徐々にドローンの活用が進められているが、一方で問題もある。測量は広大な土木現場でドローンを飛ばすが、インフラ点検では、橋梁の下や高圧線直下、さらにトンネルの中など、GPSが効かない環境でドローンを飛ばす状況が生じる。ドローンが手軽に安定的に飛ばせるのは、GPSで自らの場所を捕捉できるからである。空中での静止はGPSに基づいた場所に留まるようドローン自らモーターを調節する。このため、GPSが効かない環境では、空中での静止も常に操縦者が操作し続ける必要がある。また、風に流されやすくなるため、特に強風が吹くことが多い橋梁の下での操縦はいっそう困難になる。土木事業部エンジニアリング部の二村憲太郎氏によると、GPSが効かない環境下では機体の性能よりも操縦者の技量に左右されるという。

人が入れない場所や高所での作業に

 測量・点検に加えて、西武建設が芝浦工業大学と共同で進めているのが「吹付ドローン」を使った構造物の補修だ。

 吹付ドローンは2リットルのタンクに水や補修剤を蓄え、4本のノズルを利用してスプレー噴射。これにより、橋梁やトンネルなどコンクリート構造物のひび割れた部分を補修する。目的は点検と同じく、人が入れない場所での作業や高所で足場をかけないで作業を行うことで、低コストの補修を実現することにある。ただし、点検と同様にGPSが効かない環境下での作業が想定されるため、操縦者の技量が問われる。さらにドローンを目視で操縦する際に、特にスプレー噴射では構造物との遠近感がつかみづらいという。そのため、現在は構造物との距離を把握できるセンサーの開発を進めている。センサーで飛行が安定するようになれば、操縦も容易となるため、センサーの開発は大命題だという。

 また、補修については、現状では補修剤を吹き付けることしかできない。本来、補修する含浸剤はローラで塗布するものであり、吹き付けるだけで、補修剤の効果をどこまで発揮できるか、検証が必要だという。

 現在進めている機体の改良については、位置を把握するセンサーに加え、さらにスプレー噴射の精度も向上させる。また、春先をメドにスプレーのタンクの容量を2リットルから3リットルに増量し、バッテリー搭載型とすることで高度制限をなくし適用範囲を拡大する。そのため機体の大きさも全体的に1.2倍に大型化する。

 まだ実用化までの課題は多いが、ドローンによる点検や補修が実現できれば、高所作業が不要になるため、施工の省力化・無人化が実現できる。今後も西武建設では実用化に向けた取り組みを加速していく。

 「土木作業自体、技能労働者が減っていくことが見込まれる中で、無人化施工は今後必要になる。それに向かって吹付ドローンの開発を進める」と同担当部長の井上靖雄氏は意気込みを語った。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応のプリンシプル

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

リーマンショック後の2010年にスタートした柳前社長時代は大幅な合理化や新興国戦略を推進。経営改革に道をつけ、17年度は過去最高益を更新した。日髙新社長は、事業企画・経営企画や2輪事業の経験と豊富な海外経験を買われてバトンを受けた。売上高の約9割を海外が占めるヤマハ発動機のトップとして、改革路線を継続しつつ成…

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年11月号
[特集]
大丈夫? 御社の危機管理

  • ・サイバーセキュリティ後進国日本の個人情報流出事件簿
  • ・「リアル」「バーチャル」双方で企業を守るセコムとアルソック
  • ・南海トラフ地震、首都直下型地震は、今そこにある危機
  • ・「いつ来るか分からない」では済まされない──中小企業の事業継続計画
  • ・黒部市に本社機能の一部を移転したBCPともう一つの狙い(YKKグループ)
  • ・高まる危機管理広報の重要性 平時の対応がカギを握る

[Special Interview]

 大谷裕明(YKK社長)

 「企業の姿勢や行動が危機対策以上の備えになる」

[NEWS REPORT]

◆胆振東部地震で分かった観光立国ニッポンの課題

◆M&Aでさらなる成長を期すルネサスの勢いは本物か

◆トヨタは2割増、スズキは撤退 中国自動車市場の明暗

◆このままでは2月に資金ショート 崖っぷち大塚家具「再生のシナリオ」

[特集2]

 利益を伸ばす健康経営

ページ上部へ戻る