政治・経済

プレミアムフライデー

バブルの時代、週休2日制の導入とともに金曜日の夜を謳歌する「花金(ハナキン)」なる言葉がはやり、そして消えていった。あれから四半世紀の時を経て、新たに「プレミアムフライデー」が誕生する。仕掛けるのは、経産省や経団連。果たして「ハナキン」の復活成るか。文=本誌/古賀寛明

「月末金曜は、ちょっと豊かに」の狙い

 経産省、経団連などが仕掛ける「プレミアムフライデー」が2月24日から実施される。月末の金曜日15時に早く仕事を終えて買い物や旅行など、日常よりちょっと豊かな時間を過ごそうという取り組みだが、まだどのくらいの人が休みを取得でき、どんな盛り上がりを見せるのか見えない部分も多い。

 推進する経団連が会員企業に出した協力のお願いによると、「毎月の月末金曜日に、買い物、外食、旅行、ボランティア等、日常ちょっと豊かな時間(各人にとって『プレミアム』『サムシングスペシャル』と感じる時間)を過ごす習慣を創り出し、定着させることにより、働き方やライフスタイルの見直しを推進。結果として消費マインドの向上につながることも期待」とある。

 この話は、そもそも600兆円のGDPを目指す政府の方針の中で、内需の柱である個人消費を300兆円から360兆円に拡大させるための施策として、2016年2月に行なわれた経済財政諮問会議から誕生したもの。早い話が、働き方の前に、個人消費を刺激したいというところが狙いだ。

 会議の要旨を読むと、国内消費を伸ばすために、米国のブラックフライデーやサイバーマンデーといった小売りの一斉セールを日本でも春節やシルバーウィークの時期に全国規模のセールを展開し、地域企業の活性化につなげよう、という日本総合研究所の高橋進理事長の意見があった。その意見に東京大学の伊藤元重名誉教授が、バレンタインデーのチョコレートや正月の福袋といった社会全体で消費をする流れをつくることも手段としてはよいのでは、という言葉で受けたところが出発点となっている。

 昨年秋に、プレミアムフライデーの「過ごし方」について調査した博報堂行動デザイン研究所によれば、過ごし方のトップは「旅行」で31.5%。次に「自宅でのんびり」という回答が30.3%と続く。以下、食事(8.8%)、買い物(7.4%)、近場の行楽地へ行く(7%)となっており、その結果を知ってか知らずか、いち早く動いたのは旅行業界だった。

 旅行大手のH.I.Sは、休日が半日延びることを利用したプレミアムフライデー用の海外ツアーを販売。他社も追随する。

 航空会社では、ANAは旅行代金によって割引するクーポンを発行。例えば、総額8万円以上であれば1万円を割引く(先着200枚限定)といった具合だ。一方、JALも星野リゾートと組み、北海道のスキーリゾート、トマムへの特別ツアーを企画、売れ行きも好調のようだ。ホテルでは、プリンスホテルが限定プランを全国各地で開催する。

 いずれの商品も即日完売というほどでもないが、旅行に関して言えば、半日増えるというのは魅力的かもしれない。

盛り上がりの継続は欲望の刺激次第!?

 旅行商品の販売結果はともかく、気掛かりなのはどれだけの人がこの休みを取得できるかだ。上場企業に勤務する会社員を中心に、2月24日からのプレミアムフライデーを休めるのか聞いてみたが、「名前は知っているが、人事からまだ何も連絡はない」、「月末は休めないかなぁ」といった意見が多い。中小企業に至っては「遠い国の話」と笑う。しかしながら、プレミアムフライデー推進協議会で旗振役を務める博報堂の担当者は、「週休2日制も10年くらいかけて定着したので、すぐに浸透するとは思わないが、2月24日の直前には盛り上がりをみせるので、徐々に広まり、いずれ定着する」という。また、「大企業の多くが、有給休暇の消化や働き方の見直しなどが課題となっているため、この機会をきっかけとして利用しようといった動きも後押しになる」と期待する。

 ただ、ある大手企業の人事責任者が「休めるのであれば活用を呼び掛けるが、各人の仕事の進み具合に任せるしかない」と言うように、今のところは企業としての努力目標といったところか。そもそも、働き方改革が多様化する働き方を認めていくことを考えれば「一斉に半休」などというのはそれこそ時代錯誤だといえる。

 現在、消費を促すチャンスととらえ、新たな仕掛けを考える企業や団体は1月下旬の段階で860件強。間近になれば「2千件近くの団体が発信を始める」(推進協議会事務局)とみており、ある程度の盛り上がりはみせるはず。小売業界にとっても年末から続くセールが終わり、8月同様売り上げが低迷する時期。セールを行うことも難しいが、工夫を凝らしたイベントで需要低迷を脱するチャンスを狙ってくるに違いない。

 だが、誰もがプレミアムフライデーを優雅に過ごしたいとは思っているものの、何か大きな後押しに欠けるのは事実。

 事の発端である経済財政諮問会議でも、バレンタインデーや福袋といった例えが出されているように「欲望」を刺激するようなものや、タイミングを狙った企画はないのだろうか。クリスマスより盛り上がるようになったハロウィーンの例もある。2月24日からの取り組みが定着するかどうかは、プレミアムなアイデア次第かもしれない。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る