政治・経済

WiiU

Wii Uの販売は振るわなかったが….

家の中でも外でもプレーが可能

 東京ビッグサイトで開かれた発表会には、ゲーム業界の関係者らが集まった。発売日が3月なのは既に明らかにされており、価格が焦点だった。君島達己社長が発表した価格は2万9980円(税別)。任天堂の現行ゲーム機「Wii U」よりは高く、市場の想定の範囲内だった。だが、「ディスプレーが付いていることを考えると安い」(業界関係者)と、評価する声も多い。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「プレイステーション4」も現在は同じ価格だが、これは値下げの結果で、発売当初は3万9980円(税別)だった。任天堂は、スイッチ普及に向けスタートダッシュを狙う戦略的な価格設定に踏み切ったようだ。

 任天堂は2016年10月にスイッチの動画を初めて公開。それまで「NX(仮称)」と呼ばれてきた新型ゲーム機がベールを脱いだ。最大の特徴は、これまでのゲーム機と同じくテレビに接続して遊ぶほか、ディスプレー付きの本体を持ち運び、外出先でも楽しめることだった。君島社長は「ゲームのプレースタイルを多様化させる」と話した。

 新たに明らかにされたのは、ジョイコンの「HD振動」と「モーションIRカメラ」という機能。HD振動はコントローラーを微細に震わせることで、これまではできなかった表現を可能にする。例えば、持っているコップに水が注がれているという感覚を指先に伝えることなどができるという。モーションIRカメラはジョイコンに搭載されたカメラで、近くにかざされた手などの距離や動きを認識する。

 いずれも、これまでにないゲームの操作を可能にするものだ。スイッチ本体と同時に発売されるソフト「ワンツースイッチ」では、ボールが入っている箱を振動で表現し、何個入っているかを当てたり、牛の乳搾りの速さを競うなどのミニゲームを楽しめる。スイッチ総合プロデューサーの小泉歓晃氏は、「コントローラー自体が表現力を得た。新しい娯楽の世界にお誘いしたい」とアピール。斬新なゲームが楽しめるソフトの開発で、こうした新機能をどの程度生かせるかが重要になる。

 発表会では、セガゲームスの名越稔洋・コンシューマ・オンラインカンパニーCOOや、英エレクトロニック・アーツのパトリック・ソダーランド上級副社長らが登壇。名越氏が「ユニークさにあふれたハードで興奮している。それを生かしたソフトをつくりたい」と述べるとともに50社以上がスイッチのソフトを開発していることが紹介された。

 Wii Uでは、「サードパーティ」と言われる任天堂以外のメーカーによるソフトの提供が鈍く、販売低迷の一因になった。その反省もあり、スイッチにはサードパーティの参加を促すとともに、同じ轍は踏まないという意思をアピールした。

スマホとの親和性をどう構築するか

 据え置き型ゲーム機を販売しているのは任天堂のほか、SIEとマイクロソフトだけだ。このうち、任天堂は06年に発売してヒットした「Wii」が象徴していたように、いたずらに高機能化を志向せず、「誰もが楽しめるゲーム」づくりを目指してきており、今回もその特徴を前面に出す。

 ゲームファンだけでなく、幅広い利用者を取り込む戦略だ。Wiiでは、無線のコントローラーを振り回したりすることで、直感的な操作を可能にしたことが成功。ジョイコンもその延長線上にあり、複雑な操作を必要としないゲームを生み出せる素地をつくる狙いとみられる。

 スマートフォンをどう活用するかも注目される。ゲーム市場ではスマホ向けゲームが台頭し、任天堂も昨年12月に「スーパーマリオラン」をiPhone向けに提供を始めている。

 ゲーム機とは比較にならないほど多くの人が持っているスマホでゲームをする人を増やすことでゲーム人口のすそ野を拡大し、任天堂の「本領」であるゲーム機の利用者増につなげるという戦略だ。一方で利用者がスマホ向けゲームで満足してしまえば、ゲーム機ビジネスには逆風になってしまう可能性がある。スマホ向けの戦略の巧拙がスイッチの成否にも直結しそうだ。

 この点について、君島社長は、「スマートデバイス(スマホやタブレット端末)上で遊ぶ時間を約束したり、ボイスチャットできるようにする」と強調した。これを含む有料オンラインサービスに加入することで、遠くの友人らと対戦・協力して遊べるようになるという。今秋の正式スタートまでは無料で試せる。

 説明会当日、任天堂の株価は急落し、終値は6%安。市場関係者からは「サプライズがなかった」と厳しい指摘が出た。確かに価格が予想以上に安かったり、仮想現実を楽しめるプレイステーションVRのような新技術が打ち出されるなど、分かりやすい新機軸はなかった。ただ、任天堂はジョイコンで「可能性」を示し、サードパーティについても多くの有力企業の参加が明らかになった。

 販売面で振るわなかったWii Uに続く2回連続の“失敗”は、任天堂にとっても絶対に避けたいところ。世界的に有名な老舗ゲーム会社の真価が問われる。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る