政治・経済

アベノミクス効果による円安が後押しする形で、一部を除いて今年に入って業績の回復が顕著になっている自動車メーカー。業界を取り巻くムードは明るいが、果たしてこのままわが世の春を謳歌できるのか。 (本誌/吉田浩)

商品力を高めた富士重、マツダ

富士重工業の吉永社長

吉永泰之・富士工業社長

 2013年3月期は、為替が円安に振れた好影響が現れ、ほとんどのメーカーで営業利益が前年比を上回る結果となった。現在も引き続き為替は1ドル=98円前後で推移しており、事業環境は良好な状態が継続している。

 ただし、自動車メーカー各社は国内の生産能力増強には慎重な姿勢を崩していない。日本自動車工業会の発表によると13年度4~9月期の四輪車の国内生産台数は前期比3・4%マイナスの474万3593台。国内需要は1・7%減り、輸出も0・9%減った。

 つい最近まで常軌を逸した円高に苦しめられてきた教訓から、各社は生産体制のグローバル化を進め、基本的にその大きな流れに変化は見られない。目先の為替が多少円安に振れたからといって、簡単に国内生産を増強というわけにはいかないのが実情だ。

 

小飼雅道・マツダ社長(写真:時事)

小飼雅道・マツダ社長(写真:時事)

メーカー別で見ると、トヨタ自動車は今年4~9月の国内生産(商用車含む)で前年同月比10・8%増となったが、輸出台数では1・4%の増加にとどまっている。日産自動車は逆に国内生産を10・2%減らし、輸出も11・6%減った。本田技研工業に至っては国内生産は22・6%減、輸出台数は36%も減らしている。一方で、北米やアジアにおける生産は目に見えて増えているのが特徴的である。

 ここで、国内自動車メーカーの中でも国内生産と輸出比率がとりわけ高い富士重工業とマツダの動向に注目してみることにしよう。

 富士重工業は、昨年までの円高をものともせず、商品力の高さを武器に順調に販売を伸ばしてきた経緯がある。さらにここに来て、為替が円安に振れていることで、その勢いはますます加速している。

 13年度上半期は、販売台数、売上高、営業利益、経常利益と、すべての項目において前年比大幅増を達成。吉永泰之社長は、「商品の投入、米国と日本を中心とした販売の拡大、工場の効率的稼働、原価低減の4つが大きく寄与した。円高是正の効果は大きいが、実力の部分で増益を確保できた」と、あくまでも自力で好業績を叩き出していることを強調した。

 実際に、米国では「フォレスター」、「インプレッサXV」などの販売が予想を大きく超える好調ぶりで、13年1~9月の累計販売実績は昨年度の実績である24万5千台を遥かに超える31万3千台を達成。これを受け、13年暦年の販売台数は前回計画の36万5千台から42万台に上方修正している。

 「ディーラーからリスクはないからもっと車を造ってよこせと言われている」(吉永社長)と、うれしい悲鳴を上げる。

 こうした予想を超える好調により、生産能力は完全に需要に追い付いていない状態。これまで、小額投資で少しずつ能力増強を図る「チョコット能増」と呼ばれるやり方で、供給増加に対応してきた富士重工だが、群馬県の本工場の年間生産能力を18万台から20万台に増やす時期の前倒しを決めた。加えて、米国工場SIAの能力も14年夏には17万台から20万台へ増強、16年末には30万台に引き上げる計画を練っている。

 前期に5期ぶりの最終黒字化を果たしたマツダの場合はどうだろうか。

 同社は全体生産の7割を国内生産が占め、そのうち輸出比率が8割という構造。下請けへの配慮などから、生産の海外移転がなかなか進まなかった。このため長年にわたって円高の影響をモロに受けてきたが、ようやく為替のマイナス影響を吸収できる体制が整ったようだ。

 13年度上半期は、こちらも販売台数、売上高、営業利益、経常利益で前年同期比超えを達成。スカイアクティブ技術を搭載した「CX-5」や「マツダ6」の販売が大きく伸びた。

 円安が営業利益に与えたプラス効果は603億円とかなり大きい。とは言え、為替レートが1ドル=77円でも利益が出る体制づくりを目指してきた同社が着実に地力をつけているのは確かだ。好業績の要因は円安の追い風だけではない。

 現在、14年初めの稼働に向けて準備を進めているメキシコ工場は、当初計画より生産能力の増強を図る見通し。これにより、ようやく生産の国内依存構造が緩和されることになるが、それでも全体の5割近くに及ぶ85万台の国内生産は維持される予定である。基本的に日本からの輸出で足りない部分をカバーするという方向性は変わらないようだ。

消費税の影響と自動車諸税の行方が鍵

 富士重工とマツダの事例は、中堅メーカーでも外部環境に左右されない体質をつくることができた日本の自動車メーカーの底力を示していると言える。これらメーカーの強さは、リーマンショック後の景気後退や円高といった逆風を跳ね返すことで培われてきたものだ。

 あえて懸念材料を挙げるとすれば、やはり外部環境か。例えば、財政問題の行方がいまだ不透明な米国市場の動向、そして国内では消費増税の影響などだろう。

 自動車メーカーの多くは、現時点で来年4月の消費増税前の駆け込み需要やその反動の影響を今期以降の業績予想に含めていない。加えて、増税の方向で話が進んでいる軽自動車税、消費増税が及ぼすマイナス影響の見返りとして自工会が求めている自動車諸税廃止、最近になって議論が始まった環境性能による税負担率の変更がどうなるかといったことが、今後の自動車業界を揺さぶる要因になりそうだ。

 

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