政治・経済

20170307JONAN_P01東京、いや、全国の信用金庫関係者が固唾を飲んで見守る事態が進行している。有力信金、城南信用金庫の今後の行方である。場合によっては、信金再編の核になりかねないからだ。一体、城南信金に何が起こっているのか。文=ジャーナリスト/長田義弘

権力闘争の末の迷走劇

 東京・五反田に本店を置く城南信金は預金量3兆5千億円を超える大規模信金である。信用金庫と言えば、小規模金融機関のイメージがあるが、城南信金の規模は地銀クラスに匹敵する。2001年に京都中央信金が再編で誕生するまでナンバーワン規模の信金として君臨してきた。01年以降も全体第2位の規模を誇っている。

 この有力信金に最近、金融庁の検査が入っている。金融庁検査は、さまざまな観点から経営チェックを行うものだが、城南信金に対する今回の件はやや異質なのだ。「ガバナンスに限定した検査」だと言われている。要するに、経営体制にメスを入れるために金融庁が検査官を差し向けたのが今回の城南信金検査なのだ。異例の出来事と言っていいだろう。

 城南信金はかつて、中興の祖と言われる第3代理事長、小原鐵五郎氏が「貸すも親切、貸さぬも親切」という名言を残すほどの庶民金融を追求。一挙に、信金業界の雄に上り詰めた。

 しかし、その後、小原氏の秘書も務めた真壁実氏が理事長に就任するや、迷走が始まった。内部では情実人事が横行するとともに、信金業界の中にあっては「モンロー主義」を徹底し、業界協調を放棄する動きに出た。その後、真壁氏の片腕だった宮田勲氏が理事長に就任したものの、結局、真壁色の強い経営が続けられた。

 そこに突然発生したのが、企画エリート役員、吉原毅氏による実質的なクーデターだった。吉原氏は、真壁、宮田両氏の下で企画部門を支えてきた人物だったが、10年、宮田氏、さらにその後に理事長に就任した深澤浩二氏などを一掃し、自らが理事長に就任した。

 吉原氏は理事長・会長の任期制を導入し、さらには60歳定年制まで敷いて、若返りとともに、過去の経営陣の影響力を遮断した。そして、15年には自らが導入したルールに基づいて、理事長を辞して相談役に退いた。

 こうした歴史を見ていくと、巨大信金の中で激しい派閥抗争が繰り広げられてきたことが理解できるだろう。しかし、これだけでは終わらなかった。むしろ、ここから本格的な迷走の時代に突入した。

 吉原氏の後に就任したのは守田正夫理事長である。だが、「吉原氏はじめ、前経営陣たちが相談役、顧問となって、実質的に仕切っている」(信金関係者)状態に陥ってしまっているという。権力の二重構造と言ってもいい事態なのだ。

単独での生き残りは難しい局面に

 しかも、吉原理事長時代から、「城南は商売が荒っぽくなった」と言われ続けている。実際、京浜工業地帯などを営業基盤としていながら、近年も貸出金は低迷し続けていた。ようやく、ここに来て貸出増強の動きを強めているものの、その営業姿勢が問題になっている。

 「城南と並行メーンの取引をしていた企業に対して、突然、城南の役員がやってきて、城南への借り入れの一本化を求めるどころか、そうしないと取引をやめかねないと強調した」

 ある信金幹部は呆れ顔で、城南信金のセールスぶりを訴えている。そうした行動は係数になって現れてきている。今年度前半戦で城南信金は貸出金を前年比増にもっていったが、その一方では、貸出金利回りは1.53%という低さなのだ。前年度も既に東京圏内では最も低いレベルになっていたが、それをさらに下回る低さである。もちろん、東京圏内の信金で、最も低い水準だ。

 「地道な活動を捨てて、他の金融機関の融資をダンピング的な格安金利で奪い取っているためだ」

 都内の中堅信金のトップは不快感をあらわにこう語っている。まさに迷走に歯止めがかからない状況と言えそうだ。

 そうした中で、金融庁が2月、城南信金に対するガバナンス検査に着手したという事実はやはり、決して軽視できない出来事である。「金融庁は近年、顧客企業の事業性を評価する取り組みを求めているが、城南は完全にそれと真逆の経営をしている」という信金関係者は「それだけでもアウトに近い」とすら言い切っている。その上、経営の二重構造のような事態が発生しているとすれば、何をかいわんや、である。

 城南信金の経営地盤である京浜地区は、神奈川県の横浜銀行と、東京の東日本銀行の経営統合によって競争関係ががらりと変わり始めている。城南はこの二つの勢力の挟み撃ちが必至と言っていい。そうした中での舵取りに対して、金融庁はどう臨もうとしているのか。

 「城南単独路線は厳しい」。早くも信金業界では、こんな声すら飛び交い始めている。ただし、周辺の信金にとっては、「経営内容はともかく、城南はあまりに大きい」存在である。「一信組での合併は不可能に近い」(信金関係者)とすれば、複数の信金が関与することになるのか。そうなれば、信金業界は一挙に再編機運の渦の中に巻き込まれることになる。

 つまり、この先のことは極めて視界不良というわけだが、少なくとも、中興の祖、故・小原鐵五郎氏が草葉の陰で涙を流していることだけは間違いない。

 

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