政治・経済

20170307OTSUKAKAGU_P01

大塚家具の業績悪化が止まらない。先日発表した前12月決算では、売上高の大幅減に加え過去最悪の赤字を計上した。2年前のお家騒動が尾を引き、客足が離れたのが原因だ。リユース事業など新規事業に力を入れるが果たして復活の道はあるのかどうか。文=ジャーナリスト/松尾智樹

減り続ける売り上げ、顧客

 「中期経営計画」――。3カ年の経営計画を策定し、それに基づいて経営を行っていく。当然、計画なので未達に終わることもある。その場合は、なぜ未達だったかを分析し、次の経営計画に反映させていく。多くの企業が採用しているシステムだ。環境変化が急で、計画と実績の乖離が大きい場合は、計画の見直しを行うこともある。しかし、計画を完全に取り下げるケースはそれほど多くない。

 それをやったのが大塚家具だ。

同社の2月10日付ニュースリリースにこうある。

 《当初想定しておりました前提条件が大きく変わっており、また、平成28年12月期において大幅な営業損失を計上し、中期経営計画最終年度(平成29年12月期)の目標達成が困難となったことから、現在の中期経営計画をいったん取り下げることといたしましたのでお知らせいたします》

 それほどまでに大塚家具は追い込まれている。中計取り下げと同時に発表した2016年12月期決算(非連結)がそれを物語る。売上高は前年比20.2%減の463億円、営業損益は45億9700万円、最終損益は45億6700万円のそれぞれ赤字だった。過去にリーマンショックの影響で赤字に転落した時も(09年12月期)、営業赤字、最終赤字ともに14億円台であり、前期の赤字の3分の1にすぎない。今回の赤字は過去最悪だ。

 とにかく客離れが止まらない。

 【89、96、88、102、53、61、91、73、86、91、58、79、94】

 これは昨年1月から、今年1月までの13カ月の、店舗売上高の前年同月比だ(単位:%、小数点以下切り捨て)。見て分かるように、前年を上回ったのはわずか1度だけだ。

 大塚家具の創業者である大塚勝久氏と、長女の久美子氏の対立が表面化したのは14年のこと。会員制で高級品を扱う勝彦氏のやり方と、もっと間口を広げ、入りやすく買いやすい店舗を目指した久美子氏の、経営方針をめぐる戦いだった。勝彦会長が久美子社長を解任したことで確執は表面化したが、その後久美子氏が社長に返り咲くなどの曲折を経て、15年3月の株主総会で勝久氏が取締役を解任され、決着がついた。多くの株主、そして社員も久美子社長を支持した。

 久美子社長が父親の路線を切り替えたのはある意味当然だった。大塚家具の売上高は07年12月期の727億円をピークに下がり続けており、14年12月期には555億円と2割以上も落ち込んだ。従来路線が通用しないのは明らかだった。

 しかし、久美子社長の路線は、消費者に支持されなかった。なぜか。先日の決算会見の席で、久美子社長は次のように語っている。

 「高額品だけでなく商品の幅広さを伝えるはずだったのに、店舗オープン化の路線転換が低価格へのシフトという形で消費者に伝わってしまった」

 前述のように、久美子社長は入りやすく買いやすい大塚家具を目指した。しかし消費者はそれを高級路線から低価格路線への変化と受け止めた。会見の最後に久美子社長がいみじくも言った「ニトリやイケアと競合しようとしているわけではない」という言葉に、久美子社長の無念が表れている。

地道な取り組みも時間との勝負

 ではこれから大塚家具はどうなっていくのか。

 昨年秋から、大塚家具はリユース事業に取り組み始めた。他社製品でも買い取り、補修して販売する事業だ。本当にいいものを長く使ってもらうと同時に、家具の買い替えを促す狙いもある。ただしこれは緒に就いたばかり。何よりこの事業で、地に落ちたイメージを上昇させようとしても無理がある。一歩一歩地道に、新しい大塚家具の魅力を顧客に理解してもらうしかない。一度、地に落ちた評判も、最善を尽くしていればいつか上向いてくる。

 問題は、時間が持つかどうか。このまま苦境が続けば、当然、社員の待遇にも影響してくる。親子喧嘩の時は長女側についた社員も、そうなれば、「昔のほうが良かった」思うようになる。こうなれば士気は上がらず、回復への時間も余計にかかる。また財務的にも、前12月期末の現預金は38億円と、1年前の109億円から激減した。このままの状況が続けば、キャッシュ不足に陥る日も近い。もっとも大塚家具は無借金会社のため、融資により当座をしのぐことはできるが、そうなると今度は、経営の自由度が狭まってくる。金融機関の「指導」のもと、再建に取り組まざるを得ない。

 そして最後の選択肢が、M&Aだ。大塚家具は全国に18の店舗網を持ち、減少したとはいえ500億円近い売り上げがある。そこに価値を見いだすファンドや企業もあるはずだ。しがらみにとらわれない大胆な策を講じることで、新たなる価値を生み出すことができるかもしれない。しかしそうなった場合、当然のことながら久美子社長はその座を追われることになる。

 大塚家具は、3月に、取り下げた中期経営計画に代わる経営計画を発表する。そこで何を打ち出し、どう実行していくのか。大塚家具の存続を賭けた戦いがこれから始まる。

 

【大塚家具】関連記事一覧はこちら

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る