[霞が関番記者レポート]
ふるさと納税の返礼品競争が過熱し金券が暗黙の了解に――総務省
2017年3月7日

ふるさと納税の高額な返礼品競争に総務省が業を煮やしている。高市早苗総務相は2月14日の閣議後会見で、ふるさと納税の寄付者に自治体が贈る豪華な返礼品を競う状況が続いていることについて、「どのように改善できるか検討していく。職員にその旨を指示した」と強い口調で述べ、抜本的に是正する考えを示した。
総務相は4日前の会見でも、千葉県勝浦市がふるさと納税1万円に対して7千円の商品券を返礼として贈っていることに対して、「改善を強く促していきたい」と改善を求める考えを示していた。しかし、猿田寿男・勝浦市長は「取り扱いの見直しを、今後検討していきたい」とコメントするにとどめ、早急な見直しには動かなかった。海産物以外にさしたる特産品のない勝浦市は他の自治体との「ふるさと納税獲得合戦」に打ち勝つために、納税額の7割もの金券を返礼品とする大盤振る舞いに踏み切った経緯がある。お上の指導とはいえ、そう簡単に見直したくない事情があるわけだ。
総務省は、ふるさと納税の返礼品としてプリペイドカードや商品券、電子マネー、ポイント、マイルなどを送らないよう昨年4月に全国の自治体に要請をだしている。和牛肉や魚介、酒類など地方の自治体は豪華な特産物を競っているが、東京近郊など魅力的な特産物がない自治体は金券やそれに近い返礼品で対抗せざるを得ないのが実情だ。事実上、金券が暗黙の了解になっているため、インターネットのオークションサイトなどではふるさと納税の返礼品が頻繁に出品されるという事態になっており総務省が再び重い腰を上げることになった。
総務省記者クラブ加盟社の中には、自治体の返礼品情報を比較しながらいくつものふるさと納税を支払い「完全に元は取れている。いつ何が贈られてくるか分からないので、冷凍庫はいつもスペースを空けている」と豪語する全国紙記者もいるほど。返礼品競争の沈静化を目指す官庁の記者が返礼品獲得に勤しんでいるとは笑止ではある。
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