政治・経済

内田氏の引退で小池陣営の戦意喪失を狙う自民党

20170321NAGATACHO_P01 東京23区の区長選挙がテレビの全国ニュースでほぼトップ扱いで伝えられるなどかつてなかったことだ。やはり、小池百合子東京都知事が仕掛ける「小池劇場」の注目度の高さゆえだろう。

 2月5日、日曜日の夜のニュースを賑わせたのは、小池知事と都議会自民党のドン・内田茂都議の代理戦争として大きな注目を集めた千代田区長選挙。結果は予想どおり小池氏が推した現職の石川雅己氏が、内田氏が推した与謝野信氏にトリプル以上の差をつけて圧勝した。

 そもそも石川氏は多選批判や、長期政権による区議会との対立などで年を追うごとに支持基盤が弱まり、当初は石川氏を推してきた内田氏も反目に回った。前回区長選挙では辛勝、今回もかなり厳しい戦いと見られていた。ところが、人気の小池知事が石川氏についたことで一転圧勝となったわけだ。

 「極端な言い方をすればこの選挙は石川さんではなく、小池さんが勝った選挙。そして、小池さんは次の都議選でも千代田区に小池派の候補を擁立して、内田さんの千代田区の定数1の議席を奪って息の根を止めるつもりです」(小池知事周辺)

 ところが、選挙の翌日、新たな展開を見せる。今後も小池知事が都議選に向けてターゲットにしようとしていた内田氏が、区長選の責任を取り次期都議選には出馬せずに政界引退を決めたという情報が駆け巡った。

 内田氏本人は、2月17日現在引退を明言していないが、ある都連関係者はこう打ち明けた。

 「今回、区長選直後に引退表明するというのは、実は自民党の都連の一部の国会議員など幹部がタイミングを目論んでいた。まず第一義的には、内田さんは小池さんとのバトルに負けて身を引くんじゃない、あくまでも区長選の責任で引退するという形にしようとした。それならば、内田さんのメンツも立つ」

 しかし、もっとしたたかな二次的な効果もあるというのだ。

 「内田さんが都議選に出なければ、小池さんは次の都議選で攻める最大の敵、いわば象徴を失うことになる。小池さんを敵失の状態にして戦意喪失させる選挙戦略にもなる」(同)

 昨年の小池知事の就任直後には議会の論戦などでも敵意をむき出しにしていた自民党だが、小池知事の人気が衰えないことから、いわゆる「抱きつき作戦」に方向転換しつつある。例えば、来年度予算案にも賛成の意向を示したり、改革路線も「ともに改革しよう」などと言い出している。夏の都議選でも激しくぶつかり合うのではなく、内田氏を消すことで対立軸をなくし、小池知事の追い風を弱めて無党派などの動きを阻止し、組織票のある自民党に有利に運ぼうということなのだ。

自民党そのものを敵に設定

 だが、自民党の狙いに気づかない小池知事ではない。ならばとぶち上げているのが「小池派の候補を何と70人擁立して単独過半数を狙う」という小池氏周辺から出てきている話だ。

 「小池サイドにとっては、内田さんがいなくなって代わりに誰かいるかというと都議会自民党には大物は見当たらない。それならば『自民党』という巨大組織そのものを敵にして、一気に単独過半数を目指すという、さらに大きな上を行くケンカを仕掛けたということです」(小池氏を支援する都議会会派幹部)

 また、この話が決して絵空事ではない根拠がちゃんとある。同幹部は、「小池サイドの選挙ブレーンが細かく分析調査をしていますが、このままいけば60議席から限りなく70議席に近い勝利は可能という結果も出ている」と話しているほか、公明党が年明けに行った世論調査でも小池氏の都民ファーストの会は60人当選、自民党は30人を割り、公明党も1議席減などのデータが出ているという。

 小池知事の圧勝となれば、都議会の構図が一変するだけでなく国政にも影響が出てくるのは必至だ。

 民進党の若手国会議員は言う。

 「民進党は小池VS自民の戦いに埋没して議席が0~2という予測も出ています。そうなれば、地元東京の蓮舫代表の責任になり、『蓮舫代表をおろす動きが出る』と言う幹部もいます」

 自民党も30を切るような結果になれば国政選挙の母体が弱体化する。次期総選挙で自民党国会議員への影響は大きい。東京で圧倒的な支持が得られることが都議選で実証されれば小池知事がいよいよ東京で国政政党を立ち上げる可能性もある。そこで、取りあえずは「抱きつき作戦」の自民党の中にも「こちらも、都議選を60人規模で戦うべきじゃないか。真っ向勝負すべき」(自民党ベテラン都議)といった声が出始めている。

 今夏の都議選に向けてより激しいバトルが始まった。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る