政治・経済

実施法案では十分な審議を

20170321_KISO

―― 昨年12月にIR推進法案が成立しました。

木曽 正直に言うと遅きに失したところがあります。私がカジノの調査・研究を行うようになってから15年がたちますが、その間、シンガポールに大型IRが誕生したほか、アジア各国にカジノが誕生するなどベストなタイミングを外してしまいました。ただ2020年の東京オリンピック後の観光振興策としては意味があると考えています。

―― 今後は年内にもIR実施法案が提出され、議論が始まります。推進法案が最初に提出されたのは13年でしたが、廃案、提出を繰り返し、4年目にしてようやく成立しました。実施法案も同じような目に合わないですか。

木曽 推進法案は議員立法でしたが、実施法案は内閣が提出します。つまり与党である自民党、公明党による可決を前提に提出されます。ですから成立することは間違いない。ただし、推進法案はわずか2週間でほとんど審議もすることなく成立しました。実施法案ではそうはいきません。カジノにはどのような問題があり、それを解決するためにどのような方策があるのかということを含め、しっかりと審議していただきたい。

―― 反対派が必ず言うのが、ギャンブル依存症の人が増えるということです。

木曽 残念ながらギャンブル依存症をゼロにすることはできません。カジノには、依存症だけでなく、反社をどう排除するかといった問題もあります。でもこうした問題は、海外のカジノでもさまざまな取り組みがなされています。日本はそうした中から、ベストな制度設計をすることでデメリットを最小化できる。その一方で経済効果を中心にメリットを最大化する。その2つを比較して、社会にとってプラスかマイナスかで判断すべきです。一人でも依存症患者が出たら駄目という考え方ではいけません。

ハードル高い地方議会の同意

―― 実施法案が成立すると、次は自治体の選定が始まります。IRを誘致したいと考えている地域は数多くありますが、どういうところが選ばれるのでしょう。

木曽 政府はIRの目的を、観光の振興、地域経済の振興、財政への貢献、の3つとしています。ですからその地域の政策をIR法案の目的に合致させた上で、どれだけ魅力的なものを出せるかが鍵になります。

 もうひとつ重要なのは、推進法案の付帯決議に、「地方議会の同意を要件とすること」との一文が入ったことです。このハードルは結構高い。IRに関心を示している自治体は数多くありますが、実際に都道府県が予算を計上し、調査・検討などのアクションを起こしているのは北海道、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、和歌山県、長崎県の7都道府県にすぎず、他の府県はこれまでのところ明確なコミットメントは出していません。しかも、その7都道府県にしても、IRを建設する場所の市(区)議会の同意を取れるとは限りません。

 横浜市と大阪市は、ともにIR誘致の有力候補です。大阪の場合、橋下徹知事の時代からIRに強い関心を示していました。ところが、府議会は維新の会が過半数の議席を持っているため同意は間違いなくても、市議会では維新の会は過半に届いていないため、他の政党を組み入れなければいけません。横浜市も、市議会の勢力を見ると賛成派は過半にいたりません。東京都にしても、小池知事は国会議員時代、IR議連に属していましたが、都として推進するかどうかはこれからというスタンスです。日本に誕生するIRは、当初2、3カ所、最大で10カ所です。でも議会の同意を得ることが条件となると、手を挙げるところが2、3カ所にさえ届かないということにもなりかねない。

―― もう一つの懸念は、IR誕生後、本当に人が来るのかどうか。アジアには多数のカジノがあります。その競争にどうすれば勝てるのでしょうか。

木曽 重要なのは、観光客の数より消費額をいかに増やすかだと思います。カジノがあることで観光客を呼び込み、より多くのお金を落としてもらう。カジノ以外のところでの消費が増えなければ意味がありません。そのためには、カジノと地域の資源をどう連携するかが重要です。世界のIRを見ても、それがきちんとできているところはうまくいっています。逆に、客がカジノにしかお金を落とさないとなると、カジノは儲かるかもしれませんが地域振興にはつながらない。それではIRを建設する目的にも合致しません。いかにカジノ以外の魅力を提供できるかによって、日本のIRが成功するかどうかが決まります。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る