政治・経済

日本はIRの運営ノウハウがない。そのためIRができても外資に独占される懸念があった。しかしここにきて、日本企業による海外のIRが誕生し始めた。ここでの経験を日本にフィードバックするためだ。その1社がセガサミーホールディングスだ。

韓国、仁川空港そばに誕生した日系IR

20170321_SATOMI

(さとみ・はじめ)1942年生まれ。青山学院大学法学部中退。在学中の64年にゲーム販売会社設立。その後、父親の経営する食品メーカー内にアミューズメント部門をつくり80年サミー工業社長。2003年セガを買収、04年持ち株会社セガサミーホールディングスを設立、会長兼社長に就任。17年4月に社長を退き会長職に専念する。

 4月20日、韓国の仁川空港のすぐそばに、韓国初のIR「パラダイスシティ」がオープンする。運営するのは、韓国で複数のカジノを所有するパラダイス社と、日本のセガサミーホールディングスの合弁会社(出資率はパラダイス社55%、セガサミー45%)である。

 東京から仁川へのフライトは2時間半。大阪からなら1時間50分、福岡なら1時間25分で到着する。パラダイスシティは仁川空港からモノレールに乗車すれば3分。徒歩でも約10分という至近距離にある。つまり日本から一番近いカジノということになる。もちろん中国北部からのアクセスもいい。

 ここに711室の5つ星ホテルやMICE施設、そしてカジノからなるIRが誕生する。さらに来年には商業・文化施設、デザイナーズホテルやスパなどもオープンすることでさらに魅力は増す。

 セガサミーはかねてからIR事業を成長事業として位置付けており、パラダイスシティはその第一弾となる。同社ではここでIR運営のノウハウを積んだうえで、今後日本でもIR運営に乗り出す考えだ。

 そこで、セガサミーホールディングスの里見治会長兼社長に話を聞いた。

 

―― 韓国で建設を進めている「パラダイスシティ」が4月20日にオープンします。

里見 何としても成功させなければなりません。今は成功への期待と、ごく一部の不安があります。パラダイスシティは、仁川空港に隣接しており、立地的に十分恵まれています。また、合弁相手で、ウォーカーヒルなどのカジノで実績のあるパラダイス社のチョン・ピルリップ社長とは15~16年前からの付き合いで気心も知れています。その意味でパートナーにも恵まれましたから、このプロジェクトは成功できると信じています。

―― ごく一部の不安とは、どんなところですか。

里見 パラダイスシティは投資額1千億円を超えるプロジェクトです。この投資に見合ったリターンをきちんと得ることができるのか、ということです。とはいえ既にわれわれは、近くのホテル内のカジノで実績を積み、利益を上げています。今度のカジノはその5倍の規模となり、VIPも呼べるものになる。しかも韓国には17カ所のカジノがありますが、パラダイスシティは初めてのIRです。4月にオープンするのはホテル、コンベンション、カジノですが、来年には商業施設や文化施設も完成します。さらに仁川空港は現在、拡大工事を行っており、完成すると年間7千万人が利用するようになる。多くの人が集まる条件は整っています。

協業でも主導権はわれわれが取る

―― セガサミーはかねてからIR事業を成長分野として位置付けています。パラダイスシティで経験を積んで、これを国内のIRに結び付けるというわけですね。

里見 そのとおりです。現在、パラダイスシティには35人の社員を送り込んでいますが、今後も随時、増やしていく予定です。さらにローテーションすることで、150~200人にIRのオペレーションを経験してもらおうと思っています。

 カジノ、ホテル、バックヤード、管理部門など、IRに関するすべてのノウハウを学んでもらいます。

―― 日本でもIR推進法が成立し、早ければ5年後にもIRが誕生する見通しとなりました。日本のIRは大都市圏と地方都市の2種類に分かれることになりそうですが、セガサミーが運営するとしたら、どちらのタイプですか。

里見 やはり大都市圏のIRです。より多くの人が集まるところのほうが経済合理性の観点からも有望です。

―― 大都市圏のIRは、ラスベガスやマカオで実績のある外資も狙っています。

里見 日本のIRが、外資に独占されるというのは国益にもかないません。日本企業がきちんと運営していく必要があります。外資と協業ということもあるでしょうが、その場合でも日本企業が主体となって運営されるべきだと思います。

 われわれは、日本企業の中ではIRのノウハウをどこよりも持っていると自負しています。しかもパラダイスシティがオープンすることで、さらに蓄積が増していきます。その強みを訴えて、日本のIRにも参加したいと考えています。

 

【セガサミーホールディングス】関連記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る