マネジメント

出版物の販売部数が右肩下がりとなる中、その景況にあまり左右されない動きを見せているのがデアゴスティーニだ。パートワーク(分冊百科)という独自のジャンルを日本でも定着させ、出版業界の活性化に一役買っている。

1つのテーマを長期間、リーズナブルに楽しめる

20170418DEAGOSTINI_P01

(むらの・はじめ)1962年生まれ、東京都出身。85年横浜国立大学経済学部卒業後、ソニー入社。ソニーハンガリー社長、ソニーメキシコ社長、グローバルセールス&マーケティング本部部門長を歴任。2012年リコー顧問、リコーイメージング常務執行役員を経て、15年デアゴスティーニ・ジャパン入社、同年6月社長に就任、現在に至る。

 パートワーク(分冊百科)とは、特定分野の深く掘り下げた知識を週刊もしくは隔週刊形式で少しずつ紹介していく「楽習」方法である。雑誌だけでなく、パーツが付属し模型などが完成する組み立てシリーズや、毎号1つCDやDVDソフト、ミニチュアモデルなどが付属しコレクションできるシリーズもある。

 組み立てシリーズでは1年以上に分けて組み立てることになるが、全号揃えると10万円以上の高額製品が多いため、週刊に分割することで買いやすくなる。また、現在は余暇の時間が限られる人が多く、毎日少しずつ楽しめる形も時流に合っている側面があり、なおかつ完成までに長期間楽しめるメリットがある。

 このパートワークのフォーマットを確立したのがデアゴスティーニだ。同社は1901年にイタリアで創業し、日本には80年代にパートワークを持ち込んだ。現在までいくつかのヒットタイトルを生み出し、パートワークを根付かせている。

 パートワークの雑誌は基本的に1つのテーマを深く掘り下げることになるため、テーマ選びが何よりも重要となる。ワンテーマなので絞り込む。広く浅いテーマよりは、狭く深いテーマのほうが人にささり、継続率の高い読者が付きやすい。その一方で、継続して購読してもらうためには、創刊号を手に取った時点で全号そろえた最後の姿が予見できることも重要となる。

 最近の代表的なヒットタイトルは、コミュニケーションロボット「ロビ」を組み立てる『週刊「ロビ」』。全70号で、ロビの完成まで約70週を要したが、好評を博し第3版まで刊行された。

 また、デアゴスティーニで特徴的なのはテレビCMだ。出版社のCMがテレビで流れることは少ないが、同社は創刊号に合わせて積極的にテレビCMを打つ。また、雑誌のテーマが絞られているため、対象としている層には響く内容のCMになっており、興味を持った人が書店に足を運ぶ動機になる。また、総額十数万円となるため、書店も定期購読を勧めており、売り場の活性化にもつながっている。

注目を集める仕掛けを機動的に展開

 デアゴスティーニ・ジャパンは近年、年間約10タイトルの製品を出しているが、業界動向に関係なく、ロビのようなヒットタイトルが出た年は業績を大きく押し上げる。今後はタイトル数を増やすと同時に、ヒットタイトルの創出にこだわる。

 ヒットタイトルを生むためには、製品が魅力的なことはもちろんだ。さらに情報があふれている中で、いかに読者に興味を持ってもらい、書店で手に取ってもらうかが重要となる。「そのために雑誌でもいろんなプラスアルファのことが機動的にできる」とデアゴスティーニ・ジャパンの村野一社長は語る。

 一つの試みが、今年1月5日に創刊した『週刊「日本の城 改訂版」』だ。きっかけは昨年夏、村野社長が義援金を持って震災の慰労のため熊本を訪問したこと。書店からは「普通に商売がしたいから商品を持ってきてほしい」という声が挙がった。また、避難された方々からは「震災前の熊本城の姿を見て元気を出したい」という話も聞いたという。

 そこで、2013年に創刊した『週刊「日本の城」』を再編し、創刊号に熊本城を持ってきて商品化した。創刊号の特別定価299円のうち100円、第2号以降の収益金の一部を熊本城の復興支援に寄付する形をとっている。今回の場合は城について深く知るという本来の雑誌の目的に加え、さらにプラスアルファとして熊本城を一緒に直そうということを明確に打ち出した。これを機会に城を勉強しようという読者も増え、第2号以降の継続率も非常に高いという。

 「今回の日本の城シリーズは、雑誌ものとしては、非常にタイムリーで、かつお客さまの目にとまり、手にとっていただけたのかなと思います」と村野社長は手応えを感じている。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る