経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「めんどくさい人」の脳はどうなっているのか?―加藤俊徳(脳の学校代表)

「左脳の扁桃体」は感情を生む工場

「あの人は、本当に面倒な人だよね」と思ったことが1度や2度は誰にでもあるでしょう。

「めんどくさい」アラームは仕事など物事だけでなく、人に対しても発動します。あなたの周囲にも「あの人、ちょっとめんどくさいよね」と思う人がいませんか? 人は人、自分は自分なのに、どうして人に対して「めんどくさい」と思ってしまうのでしょう。

「一言でいえば、それは、「めんどくさい人」は、例外なく「面倒を見てほしい人」だと言えます。つまり、周囲に余計な頭を使わせる人を「めんどくさい人」と感じるということです。「めんどくさい」と言葉や態度でしめしている張本人は、半ば思考停止状態になっています。働くべき脳番地が、キビキビと働いていない状態です。(『「めんどくさい」がなくなる脳』より引用)

他人に面倒をかける人の脳にはそれなりの特徴があります。

めんどくさい人の第1位は、自分のことが分からない脳です。めんどくさい人は、自己分析が苦手な人です。自分を顧みる脳番地はどこか? 著者は今まで脳を見てきて、「左脳の扁桃体とその周囲」が作り出す脳の働きだと考えています。左脳の扁桃体とその周囲は、自分の感情を生み出す工場といってもいいかもしれません。これらの脳番地の成長は人生の艱難辛苦で養われ成長します。学生の頃、勉強で苦労しなかった人は要注意です。

若いときに、この左脳の扁桃体が未熟だとある利点が生まれます。それは、気分に左右されずにどんどん知識が脳に入りやすいのです。「座って勉強するなんて、めんどくさい!」そんな感情を揺れ動かすやり取りを家族としている間に、あっという間に2時間がたちます。その2時間で疲れ切って、机に向かうときには集中力を欠いてしまいます。この負の連鎖が起こりにくいのが、未熟な左脳の扁桃体を持つ人たちです。

もし未熟な左脳の扁桃体のまま、社会に出て、出世したらどうなるでしょう。このようなタイプもめんどくさい人の第1位に入っている可能があります。

めんどくさい人は、多くの場合自分では動かない特徴があります。その理由も脳から説明が可能です。知識が身に付きやすい人は不器用なことが多いからです。運動系脳番地が弱く左脳の扁桃体も未熟なのですが、左脳にある言語能力が抜群なので、記憶力が優れていて理屈っぽく、弁が立つのです。要するに、アタマがよくてもてきぱきと行動しない人は「めんどくさい人」と言われることになります。

脳の中心部の断面をMRI脳画像で撮影すると左右の目の奥には扁桃体という感情の目玉が2つある(脳の冠状断MRI)

脳の中心部の断面をMRI脳画像で撮影すると左右の目の奥には扁桃体という感情の目玉が2つある(脳の冠状断MRI)

脳のストレスはなぜ起きるのか

人の脳は、もちろん、左脳の扁桃体だけで、自己分析をしているわけではありません。左脳と右脳の理解系脳番地は、人が自省、反省する脳機能を支えています。

他人に迷惑をかけても、自分の気持ちが動かなければ、悪びれることもありません。このような人は、「他人の気持ちを考えない人だよね」と言われます。

他人の感情を受け取る脳は、「右脳の扁桃体とその周囲」が作り出す脳の働きだと考えています。他人の感情の吸い取り紙工場が、右脳の感情系脳番地なのです。つまり、他人に迷惑なことをしている自分のことも分からなければ、他人に嫌がられていることも分からない。このような脳の働きを司る脳番地が、MRIで示した左脳と右脳の感情系脳番地です。

「めんどくさい」ことからのストレスは、多かれ少なかれ誰もが感じるものです。そこで、「人は予測外の一手に脳が青ざめる!」という脳のルールを覚えておきましょう。

脳のストレスは、予測を超える酸素消費の需要がある脳番地で急に高まったときに起こりやすく「めんどくさい」を発します。脳は酸素を消費させられる負担にはとても敏感なのです。例えば、ゴルフでは、ティーショットよりバンカーショットはめんどくさい。

将棋の「桂馬」「角」は、「金」「銀」と異なり斜めに動くことが可能で、他の打ち手とは異なり、不意を突かれることがあります。つまり、金や銀よりめんどくさい駒と言えます。「その手があったのか!」と脳の血圧は上昇し興奮すると、脳は酸素をうまく使えずに、酸素を含んだ血液が無駄に脳番地に流れ始めます。このような不意打ちの出来事は、経営でも同じです。

急激に酸素を使い青ざめた脳は、一転して、クールな脳から、働きが非効率になります。普段から「めんどくさい」がなくなる脳を目指して脳の癖を改善しましょう。

(かとう・としのり)昭和大学客員教授。米国ミネソタ大学放射線科MRセンターに6年間在籍、慶応義塾大学、東京大学などで脳研究に従事した後、2006年「脳の学校」を創業。2013年加藤プラチナクリニックを開設し、経営者向け脳画像診断指導を行っている。新刊に『「めんどくさい」がなくなる脳』(SB Creative)など。

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