国際

興味を持ったらすぐに現場へ

メイツ2

(きむら・ありさ・ゆみ)Meitu日本総責任者、ベンチャーキャピタルアドバイザー。高校卒業後に上海で起業し、不動産コンサル、翻訳・通訳などの業務に携わった後、関西学院大学法学部に入学。在学中から複数の国際的M&A案件に関わり、卒業後はスピネーカーパートナーズのパートナーとしてベンチャーキャピタル事業を立ち上げる。2016年Meitu日本のカントリーマネージャーに就任。

 美容関連アプリを中心に、世界で約12億人のユーザーを抱える中国のIT企業Meitu(メイツ)。評価額5千億円に達するユニコーン企業として注目され、2016年12月には香港市場に上場。日本でも「BeautyPlus(ビューティプラス)」と「MakeupPlus(メイクアッププラス)」の2つのアプリを中心に、2千万人以上のユーザーを獲得している。

 その世界的ITベンチャーの日本総責任者が、木村アリサ祐美さん。日本語、中国語、英語のトライリンガルで、さらに容姿端麗といかにもメディア受けしそうな人物ではあるが、そんな表面上の評価に留まらない、ユニークなストーリーを歩んでいる。

 木村さんは高校卒業後18歳の時に上海で起業し、現地在住の日本人や米国人向けに不動産や通訳・翻訳、ツアーガイドの業務などを手掛けていた。

 その後、日本に戻り関西学院大学法学部に入学。在学中に外資系コンサル企業の子会社で、バイオテクノロジーやハードウェア業界の国際的なM&A案件に従事した。卒業後は、在学中に知り合った名雲俊忠氏(フェノックス・ベンチャーキャピタル・ジャパン社長)が立ち上げた戦略コンサル企業のスピネーカーパートナーズに創業メンバーとして加わり、VCのアドバイザーなどを務めた。

 「学生の頃は、夜行バスで東京から戻って大学の授業を受け、また東京に帰る日々が続きました。ネットカフェの個室に寝泊まりしたこともありますよ」

 相当多忙な日々だったに違いないが、木村さんはこともなげに話す。

 アグレッシブな生き方の根底にあるのは、旺盛な好奇心と思い立ったらすぐに現場に飛び込む行動力だ。日本の大学で法律を勉強しようと思ったのは、日本社会を深く知るために法律の知識が必要と考えたため。VCの仕事を始めたのは、M&Aの業務を通じて財務やテクノロジーの世界に興味が沸いたからだという。

 メイツに参加することになったのも、興味・関心の赴くままに行動した結果だ。

 VCのアドバイザーとしてシリコンバレーのベンチャーと交流があった木村さんは、テクノロジー分野での起業に関心を抱いていた。それにはエンジニアとしての知識が必要と考え、SNSを通じて関連する職を探していたところ、メイツの関係者から声が掛かった。

 同社のアプリは使用していたものの、メイツという会社自体は知らなかったという木村さん。だが、とりあえず、との気持ちで参加したランチミーティングの後には、いつの間にか社員のグループチャットに入れられ、働くことになった。

 「最初からメイツにすごく興味あったわけではないのですが、ユニコーン企業の内部に入る機会はなかなかないですし、人生経験としても挑戦してみたいと思ったんです」

 事業開発のシニアマネージャーとして入社した3カ月後には、日本オフィスのカントリーマネージャーに昇進。もともと同職の候補者を探すミッションを手掛けていたが、美容とテクノロジーとスタートアップに通じ、かつ若者の感性が分かる人材として、木村さんに白羽の矢が立ったというわけだ。

 やりたいことを最優先する人生

メイツ1 日本で展開しているビューティプラスは、静止画だけでなく動画にも対応したアプリで、美肌に加工した人物の動画をそのまま投稿できる。人工知能を使って、自動的に小顔になる機能も備えている。

 一方、メイクアッププラスは、いわばメイクの試着室のようなもの。スマホの画面上でコスメを選び、バーチャルメイクアップができる。気に入ればそのまま商品を購入できる仕組みだ。日本におけるこれらアプリのユーザー獲得とマネタイズが、木村さんの主なミッションとなる。

 起業経験がある木村さんだが、日本の商習慣や法規制などの部分で知らないことも多かったという。だが、これまでと同様、自ら勉強と経験を重ねることで道を切り拓こうとしている。

 「自分の人生だから、やりたいことを最優先したほうがいいと考えているんです。人によって性格的な向き不向きはあるかもしれませんが、私は退屈にならない人生を選びたいと思っています」

 シンプルな行動原理に基づき、グローバル社会で揉まれてきた木村さんの感性は新鮮だ。女性の社会進出が課題となっている日本だが、その生き方は働く女性のみならず男性にも大いなる刺激を与えることだろう。(文=吉田浩 撮影=森モーリー鷹博)

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義 村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

経済界が主催するベンチャー企業支援企画「金の卵発掘プロジェクト2018」でグランプリを受賞した草木茂雄・エムアールサポート社長。建設・土木というガテン系の領域でイノベーションを起こすための挑戦を追った。(吉田浩)草木茂雄・エムアールサポート社長プロフィール 測量とアートが結び付く「測量美術」とは何…

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る