政治・経済

201707格安スマホ

 携帯電話大手のMVNO(仮想移動体通信事業者)事業が急速に拡大し、格安スマートフォン市場に波紋を広げている。KDDIグループのUQコミュニケーションズが展開する「UQモバイル」とソフトバンクグループの格安スマホブランド「ワイモバイル」が資本力を背景に相次ぎ割引サービスを打ち出し、テレビCMの放映でも2強をアピール。UQとワイモバイルの格安スマホ競争は昨年から激化しているが、今夏は大手携帯電話会社の“専売特許”だった家族割サービスでも本格化している。ほかのMVNOとの“格差拡大”が進めば格安スマホ市場が大手資本に凌駕されかねず、同市場育成に取り組んできた総務省も頭を悩ませている。

 総務省はNTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった携帯大手3社の高止まりしているサービス料金の引き下げを目的に、実質0円端末の是正や端末価格とサービス料金の分離などさまざまな手を講じてきたが、最も有効な施策がMVNO育成策だった。MVNOが販売する格安スマホサービスは大手の通信回線を借りて大手の半額以下の料金で通信サービスを受けられるため、徐々に利用者層が拡大。既に国内携帯電話市場全体の10%を超えていると推計される。

 MVNO契約数は昨年6月末には16万3000件程度だったが、今年6月末には100万件超えは確実な情勢。既に500社以上のMVNOが利用者獲得競争にしのぎを削っているが、利幅の薄い料金競争を余儀なくされ、経営的にはどこも厳しいのが実情。しかし、UQ、ワイモバイルといった大手携帯会社のサブブランド的MVNOが販路拡大やテレビCMで知名度を急上昇させ、大手からの乗り換えだけでなく、独立系MVNOのシェアも喰いながら、シェアを拡大している。UQの野坂章雄社長は「格安スマホ市場全体の新規契約の3分の1は当社が獲得する」と鼻息が荒い。人気スマホ「iPhone」販売が強みのワイモバイルは「格安スマホでトップの地位は譲れない」(同社幹部)と自信を示す。

 総務省が問題視するのは、大手のサブブランドが「親会社の通信回線を他のMVNOより有利な条件で使用しているのではないか」(中堅MVNO幹部)という指摘だ。MVNOが大手から借りている通信回線は利用料金を下げるため潤沢には借りられず、利用者が多い時間帯は通信速度が大幅に低下するのが普通だが、「サブブランドの通信速度は頭ひとつ抜けているようだ」(業界団体)。しかし、総務省は「MVNO市場全体が拡大すればスマホ料金の低廉化には寄与する面もある」などと動きが鈍い。しかし、MVNO回線使用の契約に明らかな不平等が認められれば、総務省も重い腰を上げることになりそうだ。

 

【MVNO】関連記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る