マネジメント

圧倒的に稼げる人とそうでない人との違いは何なのか。事業における成功と失敗の分かれ道はどこにあるのか。本シリーズでは、幾多の修羅場をくぐりぬけてきた企業経営者たちを直撃し、成功者としての「原点」に迫っていく。

起業への強い意志はなかった

南原7

(なんばら・たつき)1960年岡山生まれ、愛知育ち。大学在学中に高級外車の並行輸入で起業し、88年オートトレーディングルフトジャパンを設立。人気テレビ番組「マネーの虎」への出演などで知名度を上げる。2005年に英国MGローバー社の経営破綻の影響を受け、全従業員の解雇という事態に見舞われるも、会社を再生し、現在は飲食店経営、自動車の個人売買、医療派遣、レンタカー、出版事業など多方面で展開。15年LUFTホールディングスに社名変更。

江上 南原社長は輸入車販売で成功しましたが、現在は多角化でさまざまな事業を手掛けていますね。方針を変えたのはなぜでしょうか。

南原 簡単に言うと金がなくなったんですね。立派なショールームをつくって内装も豪華にしてやってたけど、そういう商売は何億円も掛かる。仕入れ先のローバーが潰れたのが2005年で、自分が45歳くらいの時。そのあとも車屋さんを続けようと思ってたんですが、銀行からの借金をいったん返済して、新たに融資を申し込んだら「無理です」と。売り上げがないからというのがその理由でした。確かにそれまでは決算書や売り上げ計画を提出して銀行からお金を借りてたけれど、それがなくなったから、もう一度売り上げを作ってから来いと。つまり、お金が先行する商売なんですね。

 ただ、実を言えば、当時から既に自動車業界が右肩上がりでなくなるなと先読みはしていました。日本での新車販売台数は減っていたし、これからは販売台数も儲けも減っていくなと。

江上 南原社長はそもそもいつ頃から起業しようと思っていたのですか?ご家族の影響などはあったのでしょうか?

南原 家族構成は両親と妹3人。あんまり記事として面白くならないかもしれないけど、子どもの頃のことはあまり記憶にないですね。

江上 お父様はサラリーマンだったのですか?

南原 こないだ、会社の上場準備で親族の履歴書を取り寄せたら、オヤジは今で言う商業高校を出て、就職した会社で事務職をやっていたそうです。その後、親族が経営する不動産会社に就職するために、僕が小学1年生の時に名古屋に引っ越しました。そして、昭和60年にオートトレーディングの役員に就任し、今に至ると。僕が25歳の時から、家族全員で僕のすねをかじってるわけです(笑)。

 当時は1カ月に車を30台くらい売って、3千万円くらい稼いでいた。今の物価感覚で言えば、月に6千万円くらい小遣いがあったのかな。でも使うところを知らないから、お金が入っても次の仕入れ資金に回すだけ。25歳で銀座に行っても仕方ないからね。

江上 私のお客さまの中には地方で成功されている方が多いのですが、小さい頃から起業に対する思いがあった方がほとんどです。

南原 イチローは小さい時から将来メジャーリーガーになると言ってたらしいけど、僕はそういうのはなかったと思うよ。

江上 自然の流れ、ということでしょうか。

南原 小学生や中学生の時は普通の子供だったと思うけど、ただ、小学5年生の時の担任の先生に「お前は大成功するか刑務所に入るかどちらかだ」と言われたのは覚えています。幸い、刑務所に入ってないから良かったけどね(笑)。

戦略を変えてフォローの風で打つ

南原2 江上 私は『年収1億円思考』という本の中で、「成功する人としない人は、15歳までの環境と20代の過ごし方で決まる」と書いて、アマゾンのレビューなどで「それじゃ身も蓋もない」とかなり批判されました。南原社長はどう考えますか?

南原 僕の場合は、もっと炎上しちゃうかもしれないね。「南原DNA理論」と呼んでるんだけど、事業に成功するか失敗するかはDNAに刻まれていて、そこで決まっちゃうと思ってるから。

江上 そうなんですか(笑)。

南原 たとえば幼稚園の運動会でも、リレーの最後に走る子は、誰に教わったわけでもないのにウサイン・ボルトみたいなストライド走法で走る。そういう奴は大体中学生になっても高校生になっても足が速いですよね。小中学生の時に頭が良かった奴はやっぱり東大とかに入ってるし、それはもうDNAなんですよ。エジソンは「成功は99%の努力と1%の才能」と言ったけど、所詮才能のない奴に成功は無理です。

江上 では、事業を誰かに任せる際も、南原さんはDNAレベルで人を見るんでしょうか?

南原 「性(さが)」は変わらないですから。同窓会にたまに行くと、給食を教室の隅っこで食べてた奴は、今でも隅っこで飲んでますしね(笑)。

江上 私の最新刊である『運命転換思考』に書いた内容は、嘘ということになってしまいそうです(笑)。

南原 ただ、DNAは使い方次第です。例えば僕がゴルフでタイガーウッズの10倍練習しても追いつけないけれど、ゴルフじゃない土俵に持って行けばいいだけの話。ビジネスなんてのは最もいい加減な種目ですから。

 たとえば、ラーメン屋1つとっても、テレビで紹介された店に行ってもそんなに旨くなかったりします。かたや、僕の知り合いのラーメン屋は400軒ぐらい食べ歩きして研究しまくって、ものすごくおいしいスープを作るんだけど、最近は近所にこジャレた店ができたために売り上げが落ちたと嘆いていました。でも、こジャレた店に負けるというのは単なる戦略の違いなんです。味が劣っても店の雰囲気を変えたりテレビに出たり、自分のDNAに合った戦略が取れるかどうかです。

 もう1つラーメン屋の話で行くと、以前住んでた地域に、駅を降りて信号を渡る手前にラーメンの券売機を置いている店がありました。そのラーメン屋は電車が停まるたびに満席になっていた。これがフレンチの店なら駄目でしょうが、商売というのはスポーツなんかと違って、決められたルールに沿って実行しなければならないものとは違う。だから自分のDNAにあった商売のやり方は絶対にあります。アゲインストの風の中でゴルフボール打つのは大変だけど、フォローで打つのは簡単ですから。

江上 「フォローの風で打つ」というのは大きなヒントになるかもしれません。

南原 戦略を変えることによって、風をフォローに変えられるんです。僕は旅館の再生を手掛けましたが、もともと20軒ぐらいの旅館があった地域で、僕らが新設しても絶対に元が取れないのは分かっていた。それで潰れそうな旅館を5千万円で購入したんだけど、最初は稼働率を上げるために金土日だけ営業するようにしました。「他の日は何してればいいんですか?」従業員に聞かれたから、「部屋や庭を掃除したり壁のペンキでも塗ってればいい」と。それまでは毎日営業して、一気呵成にお客を送り出して、すぐにまたお客を入れようとするから、負担が大きくなって原価も結局高くなっていたんです。

 さらに、僕らは残存者利益を狙う戦略を取りました。旅館はどんどん潰れていって、ピーク時の全国9万軒から今や5万軒にまで減っています。僕らがやってた3年間ですら、近所の旅館2軒が潰れました。われわれは右肩上がりでやっていたけど、周りの旅館が1軒潰れると、こちらの客数がポンと増えるんです。そういうのをきちんと読んでおけばいい。商売にはいろんな形があるということです。(後編に続く

 

(えがみ・おさむ)1億円倶楽部主幹・オフィシャルインテグレート代表取締役。1967年生まれ。年収1億円超の顧客を50人以上抱えるFP。大手損保会社、外資系保険会社の代理店支援営業の新規開拓分野で全国1位を4回受賞、最短・最年少でマネージャーに昇格し、独立。著書に16万部突破『年収1億円思考』他多数。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

金利固定化の方法を知る

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メーン銀行との付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

金利引き上げの口実とその対処法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

所得税の節税ポイント

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

固定資産税の取り戻し方

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

人を育てる「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手に育成するコツ

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

部下の感情とどうつきあうか

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

“将来有望”な社員の育て方

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

「損して得を取る」事業モデル   不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。  かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。  この登…

支持政党なし

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界10月号
[特集]
リーダーの育て方

  • ・吉田忠裕(YKK会長CEO)
  • ・金丸恭文(フューチャー会長兼社長)
  • ・酒巻 久(キヤノン電子社長)
  • ・山極壽一(京都大学総長)
  • ・立川理道(ラグビー日本代表主将)
  • ・武内 彰(都立日比谷高校校長)

[Interview]

 尾崎 裕(大阪商工会議所会頭)

 大阪を“実証事業都市”として広く喧伝し、人材・投資を呼び込みたい

[NEWS REPORT]

◆1兆円M&Aをぶち上げた三菱UFJ信託の未来像

◆誘拐事件の解決にも使われる中国・百度のAI技術

◆中計見直しに追い込まれたNEC「再成長の鍵」は

◆日本橋に空が戻り、東京は三度水の都となる

[政知巡礼]

 太田昭宏(衆議院議員)

 「未来を見据えて今何をすべきか考えるのが政治家の仕事」

ページ上部へ戻る