マネジメント

LED電球で高いシェアを有し、生活家電を展開するアイリスオーヤマ。最近では家電メーカーとしての認知が高まっているが、祖業はプラスチック加工であり、過去にはプラスチック収納品で事業を大きく拡大した。同社の製品開発のベースには、消費者目線に立った需要創造があり、消費者の課題解決に必要な製品を世の中に提供することで、事業領域を大きく拡大してきている。現在は東日本大震災復興に関連した事業も展開している。文=村田晋一郎 Photo=佐藤元樹

震災復興支援の一環でコメの消費喚起を図る

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おおやま・けんたろう 1945年生まれ、大阪府出身。64年に大山ブロー工業所を引き継ぎ代表者に就任。71年に大山ブロー工業株式会社に改組、89年に本社を仙台に移転し、91年にアイリスオーヤマに社名変更、現在に至る。

 アイリスオーヤマは、従来からプラスチック収納品に代表されるように、生活の中での不満や不便を汲み取って需要を創造し、快適な生活を支援する製品を提供し、事業領域を拡大してきた。そして現在の製品開発の一つの柱となっているのが、「ジャパンソリューション」だ。

 きっかけは2011年3月の東日本大震災。アイリスが本社を置く宮城県も被災地として甚大な被害を受けた。日本全国から被災地に多くの支援が寄せられたことを受け、大山健太郎社長が「地元企業として国に対して何か貢献できることがあるのではないか」と考えたことが出発点となっている。ジャパンソリューションは、アイリスの商品活動を通して、日本が直面している課題の解決に取り込むというもの。現在、具体的にはLED照明、家電、精米の3つの事業を進めている。そのうち震災と深くかかわっているのがLED照明と精米だ。

 まずLED照明については、もともと温室効果ガス削減の機運に端を発し、節電向け事業として09年にLED電球などを製品化していた。そして、東日本大震災時による原発の停止や電力不足で節電意識が高まったことを機に、製品開発を加速させた。家庭用・法人用を問わず事業を拡大し、トップクラスのシェアを獲得。家電量販店への販路拡大や認知度向上など、家電に本格展開する上での基盤にもなっている。

 精米事業については、食品事業への参入というよりは、被災地・東北地方の復興支援を目的としている。東北地方は地理的条件から一次産業を強みとしている。とりわけ農業で稲作が盛んだが、しかし日本におけるコメの需要は年々減少し、稲作農家は非常に厳しい状況にある。政府も農家に対してさまざまな支援をしているが、農家を支援しても消費が増えなければ、問題の解決にはならない。そこでアイリスでは、メーカーベンダーとしてのノウハウや販売チャネルを生かして、コメの消費拡大を図っている。

 具体的には、低温製法で精米した生鮮米を小分けパックで販売する。コメの消費が減った理由は、準備が簡単なパンや麺類に需要が流れたことが挙げられる。そこでコメも「簡単・便利・おいしい」とすれば、また消費者の需要が戻るだろうと判断し、商品開発を進めた。

 おいしいコメをいかに簡単に食べられるようにするか。アイリスが商品開発で重視するのはユーザーインの視点で、エンドユーザーの利便性だ。従来からコメは2キログラムや5キログラムの大袋で販売されており、家庭の米びつに1~2カ月放置された状態のコメを食べている。これは過去からの文化と言えるが、保管状態は悪い。コメが劣化して当然で、味が落ちてしまっているという。アイリスオーヤマでは、低温製法でおいしさを担保し、なおかつ1~3合の合単位の小分けパックで食べきりサイズにすることで、簡単でなおかつ鮮度を保ったコメが食べられるようにした。

 14年の発売開始以降、ここに来てスーパーマーケットからコンビニエンスストアにまで販路を拡大し、順調に売り上げを伸ばしているという。

家電製品の開発を加速「なるほど感」を重視

 家電については、LED電球に加え、従来からサーキュレーターや空気清浄器などの軽家電を手掛けていたが、白物家電に本格的に参入している。本格参入にあたって、4年前に大阪に開発センターを開設。ちょうどその頃は関西圏にある大手家電メーカーで業績不振によるリストラが相次いだ時期であり、大山社長には、「解雇された優秀な人材が海外企業に流出していくのを止めたい」という気持ちがあったという。

 大手メーカーからリストラされた技術者を採用し、当初は開発拠点のある仙台に呼ぼうとした。しかし、既に関西に生活拠点があり、仙台での勤務は難しいという応募者が多かったため、彼らが通勤できる大阪にも拠点を置くことにした。大阪駅前のオフィスビルでスタートしたが、すぐに手狭となり心斎橋のビルを取得。この大阪R&Dセンターは開設して4年がたつが、今なお毎月増員している状態だという。

 「家電事業は倍々に伸びている状況ですが、まだまだ製品化のアイデアがたくさんあり、常に開発者待ちの状態です。開発者がいれば、もっと品揃えを増やしていけます」と大山社長は手応えを語る。

 アイリスでは毎年1千点の新製品を発表しているが、このR&Dセンターの効果もあり、家電製品の製品化のペースは加速している。

 アイリスでは3年以内に発売した商品を「新商品」と位置付けているが、今年の新商品の比率は62%になっている。

 また、従来は生活家電で1万円前後の価格帯の製品が中心だったが、今年4月にはエアコンを製品化、いわゆる大型白物家電に新規参入した。家電の製品開発でも消費者目線に基づく需要創造が生きている。

 「日本の家電製品は若干の違いはありますが、プロダクトアウトで開発した製品が多く、基本的に機能も価格帯もみな同じ横並び商品です。違うのは会社のブランドで、お客さまは好きな会社の製品を買っているのが現実だと思います。われわれは家電製品に限りませんが、ユーザーインで、消費者目線で『なるほど感』がないと開発しません。家電製品はコモディティー製品ですから、『なるほど感』と『値頃価格』が大きな購買動機になります」(大山社長)

 まず、なるほど感については、今回発表したエアコンで言えば、Wi-Fi機能を搭載し、スマートフォンを使って遠隔でオンオフや温度設定ができる機能を搭載。エアコンは夏の暑い日や冬の寒い日には、稼働してから部屋が適温になるまで、1~2時間を要する。このスマホによる遠隔操作は、1人暮らしや2人家族で、不在にすることが多い人にとっては、帰宅時に部屋を適温にでき、便利な製品となっている。一方、従来のエアコンは、4人以上の家族で、誰かが常に在宅して操作する家庭を想定している。しかし今や、単身世帯は全体の3割を超えており、従来の家族構成を想定した商品では、機能と利用実態が合わなくなっている。アイリスとしてはそのギャップに需要を創出できる余地があり、それは少子高齢化という日本が直面する大きな課題の解決につながる。

 一方で、こうした製品を値頃価格で実現するために、内製化率を高めているという。家電業界は、ある意味で組み立て産業であり、大手メーカーは外部から調達した部品をベルトコンベアで組み立てて、製品化している。しかし大手と同じことをしては、製品価格を下げることはできない。一方、家電製品の筐体のほとんどや部品の一部はプラスチック製であるため、ここではプラスチック製品を扱ってきたアイリスのノウハウが生きる。そこで、コスト競争力が生きる部分は内製し、値頃価格を実現している。

業種にこだわらない発想で消費者の不満を解決

 大山社長はアイリスのことを「業態メーカー」であり、他のほとんどの会社は「業種業」だと語る。

 業種業とは、金属加工の会社なら金属、プラスチックの会社ならプラスチック、家電の会社なら家電と、1つの分野をずっと深く掘り下げて手掛けている。一方、アイリスはユーザーニーズに基づき、顧客の需要を創造するアイデアが出てきたら、業種にこだわらず、さまざまな知見やノウハウを駆使して、チャレンジして製品化してきた。その結果、今までプラスチックを扱っていた会社が、現在はLEDや家電製品をつくっている。業態メーカーであるがゆえに異業種の発想ができることがアイリスの強みであり、過去の経験にとらわれずに新しいものができる可能性は高くなる。

 今後もアイリスは業態メーカーとして、事業領域を拡大していくと思われる。新たな需要を創出する上で発想や着眼点、消費者目線での気づきが重要になるが、大山社長は次のように語る。

 「普段生活していたら、新しいアイデアはいっぱい出てくるものです。それは気付くか気付かないかで、生活に不満のない人は誰もいないでしょうし、みんな気付いていても見過ごしているだけです。その不満をわれわれの持っている技術やノウハウで解決し、具体的に商品化、事業化していきます」

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