マネジメント

長崎ちゃんぽん店を展開するリンガーハットの業績が絶好調だ。国産野菜が集客の目玉になったものだが、同社は製造工程にトヨタの生産方式をいち早く取り入れるだけでなく、小集団活動による時間当たり採算の最大化を図るアメーバ経営を取り入れるなど、経営効率の向上と同時に、働き方改革も進めてきた結果が開花した。創業者の米濵和英会長兼CEOと共に、同社の改革に努めてきた秋本英樹社長の“食の喜び”を追求する取り組みとは――。文=榎本正義 Photo=佐藤元樹

国産野菜への切り替えが支持され好業績を継続

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(あきもと・ひでき)1954年長崎県生まれ。78年近畿大学第二工学部(現産業理工学部)卒業。同年株式会社浜勝(現リンガーハット)入社。2001年執行役員東日本営業本部長、02年取締役東日本営業事業部長、05年専務取締役営業本部長兼マーケティング本部長、06年代表取締役専務、09年業績悪化の責任を取り子会社へ出向、リンガーハット開発の社長に就任。13年11月リンガーハットに戻り副社長執行役員管理部担当。14年5月代表取締役社長に就任。

 リンガーハットが発表した2017年2月期決算は、売上高が前期比6.6%増の438億円で7期連続増収、経常利益が17.8%増の31億円で5期連続の増益で3期連続の最高益更新となった。好調の理由を、秋本英樹社長は次のように分析する。

 「09年に主力の長崎ちゃんぽんに使う野菜をすべて国産野菜に切り替え、10年には麺に使う小麦、13年にはぎょうざの主原料も国産に切り替えました。国産野菜というインパクトは強く、テレビ局も注目して取材して放映してくれたことも業績回復のきっかけになりました。これまで4割近く価格改定しましたが、健康志向の高まりで客足は伸びています。調理法を変えたのと、立地を郊外型からショッピングセンター内のフードコートへと転換したことも好調の要因です」

 リンガーハットでは、トヨタの生産方式を異業種でも活用しようという勉強会「NPS(ニュー・プロダクション・システム)」に94年入会した。これにより、調理システムが劇的に変わった。かつては中華鍋でまとめて作っていたので、味ムラが出たり、調理担当者が腱鞘炎になることも多かった。ところが現在は、1個作りにした。まず野菜を炒めるドラム型の「自動野菜炒め機」で野菜を炒め、野菜の入った鍋はIHヒーターが付いた「自動鍋送り機」に乗せられ、右から左に自動で流れる。人が厨房でする作業は、鍋に入れた冷凍麺を返したり、具材とスープをかき混ぜたりするくらいだ。これにより、複数のちゃんぽんを短い時間で同時にムラなく作れるようになった。

 「昔は調理から接客まで一通りできるようになるまで3カ月~半年の修業が必要だったのに、今は1週間の研修でちゃんぽん作りのみだったら済むようになり、厨房に入る人数も減りました」(秋本社長)

 国産野菜への切り替えと同時に、原材料の自社工場での加工をさらに進めたことで、原価が大きく変動しなくなった。また以前より取り組んできた厨房機器の機械化による店舗運営が可能となり、フードコートへの積極出店を後押しし、今では全店の過半を占める。フードコートは深夜営業がない。営業時間短縮は売り上げ減に直結するが、人件費率が下がったのと1時間当たりの売り上げが上がったことで、売上高利益率はかえって上向く結果となったのである。

 「人手不足の対応として、営業時間短縮に取り組み、今までに約80店舗行いました。スクラップ&ビルドと同時にセルフサービスも少しずつ取り入れています。パートの女性店長も増やしていて、30人くらいまでになりました。皆さん地域の方なので、上手な運営をしてくれています。また12年の設立50周年を機に、組織を小集団に分け、時間当たり採算の最大化を図る経営手法を取り入れました。これでパートさんや店長とのコミュニケーションが良くなり、各自が売り上げを上げる方策や、無駄を減らすなどのコスト削減に取り組むようになったことも、成長要因になっています」

労組委員長と子会社転出が次なる成長の糧に

 業績絶好調のリンガーハットの貢献で長崎ちゃんぽんは今や全国区になった。だが秋本社長が入社した当時の飲食業は「水商売」と言われていた時代だ。父親は日本電信電話(現NTT)に勤めていたため、大学時代に配線のアルバイトをしたが、父と同じ公務員の仕事には魅力を感じず、長崎ちゃんめんで既に有名だった浜勝(現リンガーハット)に入社する。もっとも秋本社長は一度は不採用になっている。これに納得できなかったので人事部に電話すると、「あなたは技術系でしょ。うちが欲しいのは営業なんです」とのこと。もともとそういうつもりだったので、「営業します」と答えて合格となったいきさつがある。

 ようやく入社したものの、当時は社員しか鍋を振れなかったので、電気工学を専攻していた秋本社長もそこからスタート。仕事の合間に、鍋に砂を入れて練習したという。快進撃を続ける同社だったので、休みも惜しんで働いた。

 「転機となったのは、その後、労働組合の三代目委員長になったこと。経営者と対峙する機会が多くなり、他社の事例も勉強することができました。09年には業績悪化の責任を取り、子会社で4年間過ごしました。本社に戻ってくるとは思っていませんでしたが、この間は自分なりに子会社を成長させるためにさまざまなことに取り組み、いい経験をさせてもらいました」

 20年までに1千店舗(17年2月現在755店舗)、営業利益率10%(同7.1%)、海外の店舗網の50店(現8店舗)に拡大を中期的な目標として掲げるリンガーハット。

 次のステージ実現のための方策をどう描くのか秋本社長に問うと、「次の50年に向かう成長戦略として、『グローバル企業への飛躍』を掲げています。ハチバンさんとの提携はうまくいきませんでしたが、今後もシナジーがあるところとは、M&Aにも取り組んで行きます。その上で、現在の業態の周辺企業との提携を含めて新たな業態に転換を図ることで、“食の喜び”をお届けし、最終的には外食ナンバーワンを目指したい」。

 人出不足や低成長の外食産業にあって、リンガーハットの好調ぶりは目を引く。今後の歩みに注目したい。

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