マネジメント

 世界で人材サービスを展開するアデコグループの日本法人、アデコ株式会社が、2017年4月に実施した「AI(人工知能)時代に求められるスキル・能力」についての調査結果を発表した。調査は、首都圏の上場企業で働いている40代、50代の管理職(部長職・課長職)を対象に行われ、309人から回答を得ている。日本の管理職たちは、仕事におけるAIの活用をどのように見ているのだろうか。調査結果から紐解いてみよう。[提供:経営プロ]

【AI(人工知能)に高まる期待の声】

 

 人工知能が社会に浸透するというと、「人間の仕事が奪われ、失業者が増えるのでは」と懸念する声もあるが、今回の調査結果を見ると、企業で働く管理職の人たちがAIに寄せる期待は意外にも高いことがわかる。

 AIに対してどのように思うかの質問に対して、「とても期待している」「どちらかといえば期待している」と回答した人が合わせて88.7%にのぼり、「とても脅威に感じる」「どちらかといえば脅威に感じる」という声を圧倒している。

201708_レポート_スカパー_グラフ

 また、AIの普及が進むと、日本の雇用にどのような影響があると思うかを尋ねた質問では、「労働時間の短縮」(58.9%)や「業務の効率化・生産性の向上」(56.3%)などの前向きな意見が、「失業率が上がる」(12.3%)という悲観的な見方を大きく上回る結果となっている。

 AIに任せてみたい仕事については、「データ処理業務」(67.6%)、「データ分析」(63.4%)、「情報リサーチ」(43.4%)が上位に挙がっていて、職場にAIが導入されれば、「既存の仕事の効率化、生産性が向上する」(48.2%)、「既存の仕事の質が向上する」(31.4%)などと見られているようだ。

 つまり、重要だが取扱いにおける人間の負担が大きく、AIが得意そうなデータを扱う業務に人工知能を導入することで、仕事の効率が上がると期待する声が多いようである。

 

【AI(人工知能)に求められるのは「創造力」】

 アデコグループがオピニオンリーダーとして参加している世界経済フォーラムのレポートでは、2020年にビジネス上で求められるスキルとして、「1位 複雑な問題解決能力」「2位 クリティカル・シンキング」「3位 創造力」が上位にランクインしている。今回の調査でも、AIが一般化する2035年を見据えたビジネスで重要な能力を尋ねた問いに対して、「創造力」「分析的思考力・概念的思考力」「複雑な課題に対する解決力」などが多くの回答を得た。

 AIによってデータ処理が高速で行われるようになる中、人間にはそのデータを処理・分析し、複雑化する問題を総合的に捉えて解決に導く力が求められるということだ。

 また、AIが担う業務の範囲が増えていっても、人間にしかできない発想で新しい何かを生み出す「創造力」が、ビジネスマンの価値を決める重要な尺度となっていくのは、当然の流れと言える。世界の第一線で活躍したいのなら、今後に向けてこれらのスキルを磨いておく必要があるだろう。

【AI(人工知能)に求められるもの、世界と日本の差異「対人関係力」】

 世界経済フォーラムのレポートと今回の調査結果を比較すると、1つの大きな違いに気付く。日本の企業を対象とした今回の調査では、AI時代に求められるスキルとして「創造力」や「複雑な課題に対する解決力」を大きく上回って、「対人関係力」が挙げられているのだ。ここに、世界と日本のビジネスに関する意識の差が特徴的に表れているのではないか。

 日本は和を大切にする国だといわれている。近年は、その傾向が薄れているといわれるものの、世界の国々に比べると、やはり日本人は人と人とのコミュニケーションをより重要視しているのではないだろうか。

 「創造力」が人間特有の力としてますます求められるようになるのと同様に、人の心の微妙な感じをくみ取って調整するのもまた、人間にしかできないことである。

 機械化が進む時代だからこそ、こうした部分で仕事の成果に差が生じるのだ。部署間の細部にわたる調整を人の力で行ったり、お客様の目を見て心に訴える仕事をしたりすることこそが、最終的には大変重要になると、日本企業の管理職の人たちは特に、日々の業務の中で感じているのかもしれない。

 

【AI(人工知能)への大きな期待と私たちの今後の課題】

 今回の調査では、将来を担う子どもたちに関する質問も行われた。

 現在の小学生がAI時代にビジネスパーソンとして活躍するために今から取り組んでおいたほうが良いことは何かという問いへの答えとして、3位の「プログラミング(42.7%)」を1位「語学(英語・中国語など)(51.1%)」、2位「国語/読解力(43.4%)」が上回る結果となった。ここでも対人関係力が重要と考えられていることがわかる。

 長年、語学力の低さが指摘されている日本だが、グローバル化がますます進む世界の中で後れをとらないためには、もはや語学力は必須。しかも、ここで挙げられている「語学力」には、単に文面を翻訳できるだけではなく、異文化コミュニケーションをできる力という意味合いが含まれているという。「国語/読解力」も、言葉を正しく理解する、または言葉の奥を読み解く力であり、コミュニケーションの基礎を成す部分である。

 急速にビジネスモデルが変化する中、子どもたちは、世界を見据えたコミュニケーション力と、ITをはじめとする時代に対応した新たなスキルを求められることになりそうだ。

 現時点でAIを導入している企業はまだ少ないようだが、期待は大きく、今後は普及が進むと考えられる。その中で人が人としての価値を発揮できるのはどのような場面なのか。今回の調査結果をもとに、それぞれがビジネスパーソンとして目指す方向性を考えていくべきだろう。

 

 

keieipro_logo_R

 

 

 

【経営プロ関連記事】

ブラック企業問題が新入社員に与える弊害とは?

“褒める”とは管理職の育成である

ハイスキル人材ほどスキルアップ意欲が高い〜人材ミスマッチに悩む日本企業と人材育成

大手企業も参入する「レンタル移籍」という新たな人材育成・人材補強の形

できる」と「わかる」ということ

[“人が動く”コミュニケーション術(8)]〜「苦手な部下」との接し方〜

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長プロフィ…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

一般には馴染みが薄い産業廃棄物処理の世界。古い慣習が残る業界を、ITによって変えようとしているのがトライシクルの福田隆社長だ。業界の老舗企業がテクノロジー導入に舵を切った背景と今後の展望を聞いた。(吉田浩) 福田隆・トライシクルCEOプロフィール   産廃処理で「B to B版メルカ…

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る