文化・ライフ

今年も暑い季節がやってきた。クールビズの観点から、冷房を28度に設定する企業は多いが、男性を中心に「暑い!」という声も多い。しかし、設定温度を下げると、今度は冷え性持ちが多い女性にしてみればたまらない。では、どうするか、登場したのが「音楽で涼しさを感じる」解決法だ。

音楽で涼をもたらす快適オフィスとは

USENウェブPhoto

USENオフィスサウンド営業部の齋藤淳部長

 気象庁によると今年の夏は全国的に「猛暑」となるらしい。 

 仕事で外回りの人にとっては厳しい夏になりそうだ。ではオフィスにいればいつも涼しく、快適かといえば、そうでもない。

 節電はいまや当たり前になり、キンキンに冷えたオフィスなどはほぼ見られない。最近ではノーネクタイ、ノージャケットのクールビズも定着。玄関ロビーに大きな氷の柱を置いたり、風を感じさせる笹を飾ったりして、企業も五感で涼を感じさせる工夫を凝らしている。

 そんななか、暑さを音楽で乗り越えようという新たなサービスがはじまっている。

 有線放送大手のUSENがはじめたのは、涼感BGMというサービス。6月1日から9月15日までの夏限定で行なわれるのは、仕事の能率が落ちる暑い夏に、ボサノヴァやジャズ、ウクレレなどの爽やかな音楽に波の音や小川のせせらぎといった自然音を加えることでオフィスに「涼」をもたらそうという狙いだ。

 実際に、目を閉じていると確かにオフィスにいることを忘れ、風そよぐ森の中の小川や静かな海岸にのんびり佇んでいるような気分になる。ただ、これを仕事中に流すとなるとどうだろう。果たして仕事になるのだろうか、さらに言えば涼しさを感じられるのか疑問だ。

 そこで、実際にサービス開始当初から涼感BGMを導入している富士通を訪ねてみた。涼しい(かもしれない)夏を体感できるのは、汐留本社内にあるサテライトオフィス「F3rd shiodome」。

 コンセプトがオフィスの自分の席や自宅とも違う3番目の居場所としてつくられているだけあって、電話会議もできるモニターや個室といったハードに加え、ドリンクやお菓子などソフトも充実している。その場所に涼しげなBGMが流れているのだ。

 富士通総務部の相京ひとみさんによれば、導入のきっかけは、サテライトオフィスには音がないために話しづらい、電話にも出づらいといったことから、BGMが欲しいという要望があったからだという。

 そこで、このサービスを導入したところ、最初は「音が気になる」、「うるさい」といった声も聞かれたが、音量を調整したことで、苦情もなくなったとのこと。

 さらに、「ウチのオフィスにはボサノヴァや波の音が流れてカフェにいるみたい」と自慢する声もあがるなど、快適なオフィス環境づくりに一役かっている。

 ただ、「涼しくなるか」と尋ねると「う~ん、どうでしょう(笑)」(相京さん)というお答え。確かに、物理的に温度が下がるわけではないので、当たり前の話か。

 とはいえ、サテライトオフィスの環境もあってか、ほのかに聞こえる涼しげな音楽と自然音は、仕事に余裕を与えてくれそうだ。導入者としては、利用者には涼しさはもちろん、優しさも感じてもらいたいのではないだろうか。

音楽による人への影響とビジネスへの活用

 この音を使って人の心に働きかける涼感BGMは、音楽でオフィス環境を快適にする「Sound Design for OFFICE」というUSENが提供するサービスのひとつのジャンルだ。

 サウンドデザインとは、単にオフィスに音楽があれば心地良い、ということに留まらない。音の専門家である大学教授や精神科医によって監修されたオフィス向けの音楽サービスをいう。

 オフィス用というだけあって効果も「集中力の向上」、そして「リラックス」、「リフレッシュ」、「気づき」と仕事に効くカテゴリーに分けられており、それぞれの目的のために多くの番組が用意されている。合計すると94の専門チャンネルに加え、ラジオも聴くことができる。そこに「涼感BGM」が加わったというわけだ。

 サウンドデザインのサービスをはじめたのは2013年の2月だが、近年、企業からの受注も増えている。ランニングコストが月額5千円からと手軽さが受けていることもあるが、「働き方改革」や「ストレスチェックの義務化」など、働く環境を変える必要に迫られた企業側の事情もあるようだ。

 その効果は、免疫音楽医療学が専門の和合治久埼玉医科大学短期大学名誉教授が行った、生体機能への影響調査で証明されている。

 USENのオフィスサウンド営業部の齋藤淳部長はこう話す。 

 「和合教授の研究結果によると、聴く前と聴いた後では、手の甲の温度や唾液の分泌量、唾液物質が変化し、副交感神経を刺激することもわかっています。たとえば、集中力の向上が必要な場合には、モーツァルトやバッハ、ショパンなどのクラシック音楽が効果的です」

 さらに効果を高めようと、和合教授の研究エビデンスを基にして作曲されたオリジナル楽曲まであるほどだ。番組名も「働く人の生産性を高めるバロック音楽」や「働く人のミスを軽減するクラシック」といった具合で、どこに効くのかがひと目で分かる。

 こうした音楽による人への影響は具体的な効果が解明されてきている。

 スーパーマーケットなどで閉店のサインとして「蛍の光」が流れるように、サウンドデザインのサービスの中では、時間管理のツールとしても使われている。

 その例でいえば、住宅大手の三井ホームのケースが挙げられる。同社の終業時間は18時で、その時間に部門ごとの終礼を行っていたが、18時にロッキーのテーマを流して時間のメリハリをつけることによって、退社しやすくなった。結果として、残業時間が24%削減されたというデータも出ている。

 他にも、スーパーマーケットが午前中は高齢のお客さんが多いことからスローテンポな音楽を流し、仕事帰りのお客さんが多い夕方は、アップテンポな曲を流して、購買行動に影響を与えるという話がある。

 音楽をはじめとする音の可能性はまだまだ広がりそうだ。齋藤氏も、「お客さまからの反応で知る効果も多く、さらにエビデンスを蓄積することで、ビジネスの可能性も広がると感じています」という。

 次に誕生するサービスで、音のどんな可能性を見せてくれるのか楽しみだ。

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る