政治・経済

2015年に破綻したスカイマーク。民事再生決定後もスポンサー選定で紆余曲折あるなど混乱したが、民事再生の終結からわずか1年後の16年度には早くも67億円もの純利益をあげ、数字の上では復活を遂げた。果たしてその復活は本物なのか、その道のりを追った。文=古賀寛明

仙台―神戸線の就航が持つ意味

201709スカイマーク

B737-800による効率的な運航がスカイマークの好調を支えている

 7月1日、中堅航空会社のスカイマークは新たに仙台―神戸線を就航した。2015年の破綻後、新規路線では初の就航となる。破綻からわずか2年あまり、スカイマークの復活を印象付ける出来事であった。当日は、仙台、神戸両空港でセレモニーが行われ、新たな路線開設に地元も沸いた。沸いた理由のひとつに仙台―神戸線が、民事再生による再編で15年10月に撤退した路線であったことが挙げられる。そういった意味で、スカイマークの社員にとっても再生の道のりに自信が持てる再就航だったに違いない。

 スカイマークが急激な円安や超大型機であるエアバスA380のキャンセルによる違約金の請求といった理由により、急速に業績が悪化し、民事再生法を申請したのが15年の1月のこと。すぐさま、現在スカイマークの会長である佐山展生氏が代表を務めるプライベート・エクイティ(PE)ファンドのインテグラルが支援に手を挙げたものの、航空会社によるスポンサーが必要となる再生計画の段階ではインテグラル・ANA連合と、同じく債権者である航空機リース会社、イントレピッド・デルタ航空連合の2案が争うなど混乱した。

 最終的に現在のインテグラルとANAによる再生計画が選ばれ、佐山氏が会長、日本政策投資銀行でエアドゥの再建にあたった経験を持つ市江正彦氏を社長に、そしてANAからも役員を迎え、新経営体制が発足したのが15年の9月のこと。以来、宮古、石垣、仙台、米子の各空港から撤退するなど、26あった路線を縮小して、新たな再スタートを切っている。

 あれから1年と10カ月が過ぎ、スカイマークを取り巻く環境は大きく変わった。当初は路線の撤退により提供座席数を大幅に減らしたが、一方で需給バランスをうまく取り、搭乗率は右肩上がりで伸びた。例えば、破綻した15年1月の搭乗率は55.1%だったが、翌16年1月には72.3%に。さらに今年の1月は79.8%にまで伸ばしてきている。

 その結果、減便していた路線でも増便を重ね、それが今回の仙台―神戸線の再就航にまでつながった。

 また、以前は8月のハイシーズンには高い搭乗率を誇るものの、閑散期には一気に冷え込む、ボラティリティの高さが経営にも不安定さを生んでいたが、確実に採算の取れる路線に絞ったことで、16年度には年間を通して安定してきており、不安定さは解消しつつある。

 こうした取り組みは、業績にも反映されており、16年度の事業収益は755億円にまで増え、純利益も67億円にまで達し、久方ぶりの黒字決算となった。また、営業利益率も高まり、15年度の2.1%から8.9%にまで上がっている。

効率的で高いサービス新たな強みで得る信用

 好調の理由のひとつとして挙げられるのが、業績悪化の原因であり、破綻と同時に運航を停止したエアバス社のA330-300から、ボーイング737-800に機種を統一したこと。これにより、整備や調達の面でも一本化することができ、無駄がなくなった。何より270席もあるA330の座席を高い水準で売り続けることは難しく、この機材の使用をやめただけでも、販売ロスを減らすことにつながった。現在使用するB737-800は、177席の小型機であるため、結果、効率的な運航につながっている。

 加えて、以前のスカイマークと比べてサービスが格段に向上したことが挙げられる。定時性向上への取り組みでは、破綻前には83.4%と、90%を超える他のフルサービスキャリアに比べ明らかに見劣りしていたが、16年度は89.8%と全社での運動が結果となって現れている。ただ、目指すは「日本一」、世界的にも定時性で評価の高いJALに追いつけ、追い越せと目標に掲げており、今期は4月、5月、6月といずれも90%以上の定時出発を実現させている。

 また、破綻の前には、安価な航空運賃が魅力であったが、その一方でお世辞にも機内サービスの良い航空会社とは言えなかった。実際、サービスに対してのプライオリティは低く、「クレームは受け付けません」といった文言を搭乗者向けにつくり、ひんしゅくを買ったことまである。

 今も、もちろん至れり尽くせりといったサービスではないが、例えば、ネスレ日本とのコラボレーションでも、ただ飲料や菓子を配るだけでなく、スカイマークを舞台としたオリジナルショートムービーをつくり、機内で上映。スカイマークへの親しみをもってもらう意欲が感じられる。

 こうした取り組みは、ただの業務命令だけでは実現できない。その裏には、従業員満足度の向上を目指す新経営陣の姿勢がある。顧客満足度も大事だが、それを支える従業員満足度を何より重視する姿勢はこれまでのスカイマークにはなかったものであろう。こうした姿勢を経営理念に掲げ、再起を図ったことが、企業風土を変え、サービスを向上させる原動力となっている。

 ただ、復活の最大の要因を挙げろといわれれば、やはりドル箱である羽田空港の発着枠を持っているということであろう。羽田と各地を結ぶ路線の搭乗率は高く、安定的に稼ぐことができている。国内LCCが拠点とする成田空港とは利便性でけた違いだ。もちろんスカイマークも首都圏にある茨城空港から各地へ路線を展開してはいるが、便数は多くはなく主力空港ではない。

 羽田の発着枠を最大限に利用し、効率的な運航に努める姿勢は、かつての好調時のスカイマークの戦略でもあり、もともとは20%近い営業利益率を誇る会社であったことを思い出させる。そう考えると、たられば話になってしまうが超大型機でのニューヨーク便就航というような無謀な夢さえ見なければ、今も順調に成長していたかもしれない。

 「効率的」な運営という、以前の強みを取り戻し、さらにクオリティの高いサービスを加えたことにより、わずか2年で黒字にまでもってきたというわけだ。

「堅実さ」で再上場を目指す

 「2020年には再上場も考えている」と、公言する佐山会長だが、もちろん課題がないわけではない。いくらサービスが良くなったとはいえ、かつての「安かろう悪かろう」というイメージを払拭するにはもうちょっと時間がかかるだろう。また、航空会社のリスクとして、いつまた燃油の高騰や急激な円安があるかもしれない。しかも国内線しかもたない航空会社にとっては稼ぐ通貨は円のみだが、支払いは航空機のリースや燃油など、そのほとんどが外貨であり、為替の影響を大きく受ける。 羽田空港に続く第2の拠点である神戸空港にしても、海上空港であり24時間空港となるポテンシャルを秘めているが、関空、伊丹との関係から現状では発着回数を1日30便に限っているなど、制約がかかっている。この規制解除も待たれるところだ。

 スカイマークの好調を支える機種であるB737-800が既に生産の終わっている機種ということも挙げられる。まだ、市場に在庫があり今後も導入する予定があるものの、後継機を決定しなければならない段階にある。B737-800の後継機であるB737-MAXが最有力ではあるが、エアバスのA320neoといった機種もある。どちらにしても、運航、整備など新たな仕組みづくりが必要だ。

 今後、さらなる成長を考えた時に、どういった戦略をとっていくのか、それが最大の課題であろう。

 上場ということになれば、その後の成長戦略も問われる。現在は羽田の発着便に頼っている状況といえるが、発着枠を増やせるかといえば不可能な話だ。だからといって、地方路線の拡大はリスクでしかない。後は、海外へと視野を広げていくしかないはずだ。

 既に、今年度中にはチャーター機による国際線参入を予定しており、就航地は台湾やグアム、中国といった日本の近隣諸国になりそうだ。それは、B737-800で飛べる範囲で考えているということ。いずれにしても、まずは堅実な判断だ。堅実、それこそがスカイマークの順調なスタートを支えた最大の秘密といえるだろう。

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