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成熟社会を迎え、子どもの教育、就職、働き方など、さまざまな面において、これまでのやり方が機能しなくなってきた日本。難病を抱えながら息子とともにハワイに移住し、事業家として成功を収めたイゲット千恵子氏が、これからの日本人に必要な、世界で生き抜く知恵と人生を豊かに送る方法について、ハワイのキーパーソンと語りつくす。

日本人が騙され易いのは教育にも原因

久保田後編PHOTO

(クリスティーン・くぼた)神奈川県横浜市出身。カトリック系インターナショナルスクール卒業後、シャミナード大学ホノルル校に入学。学生時代からツアーコンダクター、通訳、不動産業、貿易業などさまざまな経験を積み、1988年弁護士資格取得。以降、ハワイのデーモンキー法律事務所で弁護士業務に従事、現在は同ディレクターを務める。米国弁護士協会、米国移民法弁護士協会会員。日本で生まれ育ったバイリンガル弁護士として活躍中。ホノルル日本人商工会議所元会頭・ハワイ日系人連合協会元会長・ハワイ日本文化センター理事長。

久保田 訴訟は凄くお金と時間がかかるので、裁判所も当事者たちに和解を勧めることが多いです。相手がいることなので難しいのですが、双方の弁護士同士が共通の目的を持って話をすれば、何か妥協できる場があります。そこにたどり着くのが私たちの仕事です。日本人のクライアントはアメリカのシステムがよく分からない場合が多いので、そこからよく説明しなければなりません。

イゲット こちらではどんなケースの裁判が多いのですか?

久保田 やはりお金の貸し借りに関することですね。ビジネスマンがお金を貸すときに担保を取らないとか、それで後になってトラブルになることがよくあります。

イゲット 契約書を作らないでトラブルになった話もよく聞きますよね。

久保田 チェックの支払いであればまだ分かり易いのですが、キャッシュの場合は困りますね。1千万円を書面なしで貸しちゃうような場合もあるし、たとえ契約書があっても契約違反の問題も出てきます。ハワイに来ると、人々はハッピーでおおらかな気分になりますが、お金が絡むことはきちんとやらないといけません。

イゲット 日本では全額後払いのケースも多い気がしますが、ハワイでは大抵デポジット(預託金)を払ってからビジネスがスタートすることが多い印象です。

久保田 日本人は他人を信用しやすいので、知り合いに5万円くらい貸して5年たっても返ってこないといったパターンが多い。ビジネスで相手に「お任せします」と言うのであれば、お金が返ってこなくても仕方ないと言う気持ちでないと。

イゲット 日本人は学校教育の中で、指示されたことに従うサラリーマンを育てる教育、いわば労働者教育を受けているせいもあるかもしれません。だから「お任せする」と言えば、相手がやりやすいように気を利かせているつもりになってしまうのではないでしょうか。

従業員との対話がトラブルを防ぐ

久保田 たとえば、グーグルみたいな会社に勤めた場合、自らアイデアを出していく事が大切で、黙っているべき時に黙っていることは悪くないけど、発言すべき時は発言するようにしないと、自らの存在意義がなくなってしまいます。

イゲット 息子の学校の教育を見ていると、労働者ではなく起業家を育てるのに適しているのがよく分かります。誰かの下で働くにしても、新しい意見を述べたり人の意見をまとめるリーダーになったりする素養を磨くことが重視されています。日本とは教育の段階で違うんです。企業がグローバル化する中で、子供たちをどう育てていけば世界に出ていけるのか、身を持って感じました。あと、ダイバーシティの問題で言えば、アメリカのほうが日本より法律面でも女性が優遇されているように思えます。

久保田 アメリカの場合、日本より随分前から女性の問題がフォーカスされて来たからでしょう。日本はこれからだと思います。ハワイの商工会議所で、日本の女性社長を20人集めて議論したことがありますが、私たちが普通に思っていることを喋っても、難しいとかできないという感覚の人が多かった気がします。法律面でもハワイのほうが安定はしているでしょうね。ただそれでも給料は男性と完全に同じではないし、問題がないわけではありません。

イゲット ハワイでもセクハラやパワハラの案件は多いんですか?

久保田 今はそれほどないですが、以前はかなりありましたね。日本の男性がターゲットにされたこともあります。たとえば、女性の肩に簡単に触れてはいけませんとか、水着の女性のカレンダーを職場に貼ってはいけませんよとか、年齢に関することも言ってはいけませんとか、理解してもらうのが難しかったです。今はどんな小さな企業でも、綱領をつくって絶対にセクハラがないようにするという姿勢を示すことが必要になっています。それがないと、私も弁護ができませんから。

イゲット 従業員と経営者のトラブルも多いのでしょうか。

久保田 多いです。仕事内容が悪い為に解雇されるのですが、何かと理由をつけてクレームをしてきます。年齢・人種差別などさまざまなケースがあります。経営者が従業員と対話して、コミュニケーションを取ることが非常に重要です。

リーダーシップの重要性

久保田 子供の教育も大事ですが、大人になってからの教育も大事だと思いますね。会社に入るとどういう人が上司になるかで人生が大きく変わってしまいます。良い上司が付いた人は、本当に幸せだと思わないといけないでしょうね。一方で、上に立つ人は良い上司になることを考えなければいけません。企業の社長さんには、そういうことを部長さんや課長さんにどんどん伝えてほしいと思います。

イゲット アメリカではリーダーシップのトレーニングを子供のころからやっているし、日本人と比べて上手だなあと思っていまます。クリスティーン先生は、いろんなところでリーダーシップを取られていますよね。私が先生とお会いするのは、社会貢献の場が多いのですが、日本人のきめ細やかさとアメリカ人のリーダーシップを、とてもうまくミックスされている気がします。

久保田 ありがとうございます。まず、ハワイは狭いところだからやりやすいというのはあると思います。ボランティアや社会貢献のニーズがすぐに集まりますし、知っている人が多いから楽というのもベースにあります。

ただ、みんながリーダーになるわけではないので、フォローする人たちも大切です。私の場合、小さい頃は凄くシャイで、ピアノの発表会にも出たくないような子供でしたが、ある日突然喋りまくるようになってしまいました(笑)。私は自分をあまり良いリーダーとは思わないけれど、いつも他の人たちの意見を聞いて、せっかちだから誰も決めないときは自分が決めてしまうんです。それでみんなが付いてきてくれるんですが、良いリーダーなのかどうかは分からないですね。

地域貢献に対する企業の意識の違い

久保田8使用イゲット 私はまだ40代ですが、日本の若い女性たちにはもっと頑張ってほしいなと思っていて、女性がリーダーシップを発揮できるような活動をしたいと思っています。ハワイには14年お世話になっていますし、その部分でもハワイと日本をつなげるようなことに貢献できないかなと。

久保田 今は30代、40代の日本女性でもすごい人たちが増えてきたのではないですか?

イゲット 以前に比べたらそうですね。私が20年前にネイルサロンを立ち上げた時は、場所を借りるのも苦労しましたから。どこにも子どもを預けられないという問題もありましたし。

久保田 それは企業のサポートがもっと必要かもしれないですね。サポートがあっても親としてのジレンマがあるのは仕方ないですが、女性が働きながら子育てをすることに対する社会全体の理解は、日本よりアメリカのほうがあるのは確かです。

 企業のサポートが重要という点では、ボランティア活動に対する姿勢にも言えます。アメリカは法律も違うし、ボランティア活動に対して税制で優遇されるという事情もあるため、いろんなボランティアをやることが自然になっています。地域貢献の大切さはアメリカ企業にとっては当たり前のことですが、日本企業にもそこをきちんと知ってほしいですね。

イゲット それは著書に書いておきました(笑)。最後になりますが、先生のこれからの夢は何ですか?

久保田 来年はハワイに最初に日本人が就航して150年にあたります。ハワイで日系1世、2世、3世の方々が伝承してきた日本の歴史と文化を、きちんと次の世代に伝えていけるのかということを危惧しています。弁護士を引退したら、そうした活動にフォーカスして活動していきたいと考えています。(イゲット千恵子×クリスティーン久保田 前編)

ChiekoEggedDSC_3145(いげっと・ちえこ)(Beauti Therapy LLC社長)。大学卒業後、外資系企業勤務を経てネイルサロンを開業。14年前にハワイに移住し、5年前に起業。敏感肌専門のエステサロン、化粧品会社、美容スクール、通販サイト経営、セミナー、講演活動、教育移住コンサルタントなどをしながら世界を周り、バイリンガルの子供を国際ビジネスマンに育成中。2017年4月『経営者を育てハワイの親 労働者を育てる日本の親』(経済界)を上梓。

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