文化・ライフ

坂東先生は働く女性の地平を切り開いてきた方ですが、同時に2人の母親でもあります。お子さんが小さい頃は、昼間、家にいない母親に対して不満もらすこともあったとか。でも今では2人ともワーキングマザーとして、母親の背中を追い掛けているそうです。

日本の将来が心配な学生の基礎学力低下

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(ばんどう・まりこ)1946年富山県生まれ。69年東京大学を卒業、内閣府入省。内閣広報参事官。男女共同参画室長を経て2003年退官。04年昭和女子大学女性文化研究所所長、07年に学長(16年3月まで)、14年理事長、16年総長(兼務)に就任した。06年に出した『女性の品格』は300万部を超えるベストセラーとなった。

佐藤 坂東先生は内閣府で女性政策に長く携わり、今は昭和女子大学で女子学生を教える立場です。大学ではどんな取り組みをされていますか。

坂東 国際的な連携の模索です。女子大には女子大の良さがありますが、一方で、国境や性別を越えてさまざまな人と触れ合う機会をつくろうと考えています。

佐藤 女子大にもダイバーシティを導入するわけですね。

坂東 ええ。自分と違う人に出会うのはとても大事なことです。これは男女関係なく日本の大きなテーマのひとつです。日本人は既存のものを改善していくことは得意ですが、新しいものをゼロからつくることは苦手です。創造力が問われますが、そのためにも違う人種・性別・文化と触れ合う必要があります。

佐藤 自分とは違う価値観を知ることで、新しいアイデアが生まれることもあります。

坂東 でも私にはひとつ心配があります。教育の劣化が進んでいるように思えます。

 いまや大学全入時代を迎えています。その一方で、高校生の学力低下が進んでいます。高校3年生の英語の学力の全国平均は中学2年生レベルにすぎません。それでも、大学に入学できてしまう。日本人は勤勉で学力が高いと言われてきましたが、このままでは先が心配です。

佐藤 ゆとり教育の弊害ですか。

坂東 学生時代に勉強以外のことに打ち込むことも大切です。ゆとりや思いやり、リーダーシップも必要です。でもそれ以上に基礎学力を身につけることが重要です。これは学校教育だけの問題ではありません。

 よく、若い人が近現代史を知らないことが話題になります。大学受験に出ないため、教科書でも教えないのが理由だそうです。でも教科書から学ぶことなんて、知的好奇心のほんの一部。物事に関心を持って、それを追究していけば、そこから多くのことが学べます。そういう環境をつくることが大切です。

親の初心者が増えたため子どもと一緒に親も教育

佐藤 そういう環境を整えるのはむしろ家庭です。ところがモンスターペアレントのように、子どもの教育をすべて学校に押し付ける親も出てきました。

坂東 本来、親というのは、心を鬼にして子どもの失敗を見守らなければなりません。小さな失敗体験をたくさんすることで、子どもは等身大の自分を把握していきます。ところ最近は、小さな失敗でもトラウマになると心配して、庇護してしまう。

佐藤 小さなミスも許せず、すぐに学校にクレームをつける。

坂東 昭和女子大学では教職課程を取る学生も多いのですが、彼女たちには、子どもだけでなく、親や地域とのコミュニケーション能力も必要だと教えています。中でも保育士を目指す学生には、子どもと一緒に親も育てなさいと指導しています。一人っ子が増えたこともあり、多くの親が親の初心者ですから。

佐藤 ところで坂東先生も2人のお嬢さんがいらっしゃいます。どんな母親でしたか。

坂東 私は働き続けていましたから、娘たちはそれが不満だったようです。小学生の頃に「友達のお母さんはみんな家にいる。それなのにママは仕事ばかりしているから嫌い」と言われたこともあります。でも今では2人ともワーキングマザーです。

佐藤 嫌いといいながらも、しっかりと親の背中を見てたんですね。素敵な親子関係です。


対談を終えて

20161101BANDO_P02坂東先生は官僚として、男性に伍して仕事をし、「女性初」のポストにいくつも就いています。それだけを聞くとバリバリのキャリアウーマンをイメージしがちですが、実際は大違い。とても可愛らしくたおやかな方です。そのギャップも、先生の魅力のひとつです。

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