文化・ライフ

ゲストの髙遠智子さんはオーガニック薬膳料理研究家。一度は余命3カ月のがんを宣告されたのに、その壮絶な人生を微塵も感じさせないとてもチャーミングな女性です。

末期ガンと診断された髙遠智子氏に大嫌いなトマトが起こした奇跡とは

20161115TAKATO_P01

(たかとう・ともこ)1968年福岡県生まれ。28歳の時に卵巣がんで、31歳で肺に転移、余命3カ月を告げられる。最後の旅行として出掛けたパリでトマトを食べたことから食に目覚め、フランス、中国で食の勉強に取り組む。その過程で元気を取り戻し、食の素材の知識を生かしたオーガニック薬膳料理研究家として精力的に活動している。『食べものだけで余命3か月のガンが消えた』(幻冬舎)は30万部のベストセラーに。

佐藤 髙遠さんが書かれた『食べものだけで余命3カ月のガンが消えた』を読ませていただきました。28歳で末期がんと診断され、その後の闘病を経て、最後の思い出にと出掛けたフランスで現地のセミドライトマトを食べたことをきっかけに、食べることは生きることだと気づいたそうですね。以来オーガニックな食生活を心掛けた結果、余命3カ月と言われたのに、10年以上たった今でもお元気でいらっしゃる。しかも食の素晴らしさを伝える薬膳料理研究家としてお忙しく活動されています。

髙遠 フランスでトマトを食べた時の衝撃はいまでも鮮明に覚えています。実は私は幼い頃からトマトが大嫌い。普段は絶対に食べませんでした。でもパリのマルシェで口に入れたところ、とてもおいしかったんです。しかも唾液も涙も、体中の水分がどんどん沸いてくる。人間の機能の素晴らしさに、この時、初めて気づきました。

 同時に、これは食に真剣に向き合えということだと考えて、それからフランス、そして中国で食の勉強を始めました。すると不思議なことに、薄皮を剥くように症状が改善されていき今に至っています。

佐藤 もしトマトと出合わなかった、出合っても、嫌いだから食べなかったら、と考えると、生命力の不思議さを感じます。

髙遠 私にとってトマトがそうだったように、誰にでもマッチングする食材があると思います。私の料理教室にいらした方で、末期の白血病患者がいらっしゃいました。その方は、セロリやセージなど香りの強い食材が嫌いで、おまけに人間まで嫌い。病気もあってすべてが嫌いになり、とてもやせ細っていました。

 私はその方に、前菜からメインディッシュまで、すべての料理にセロリを入れました。セロリというのは気の巡りを陽性にして、みずみずしさを取り戻します。そう説明して料理をお出ししたところ、その方はセロリが嫌いにもかかわらず、すべて召し上がりました。そして半年後には体重が増え始めたのです。

オーガニック薬膳料理研究家 髙遠智子氏のオススメする体温を下げない方法とは

佐藤 人によって、必要な食材が違うわけですね。それをどうやって見抜くのですか。

髙遠 料理教室に通ってくる方には事前にアンケートを取って、体調をお聞きします。それでだいたいの料理を決めて、当日、直接お顔を見て、アレンジを加えます。お店で2人のお客さまに同じ料理をお出ししても、それぞれの体調に合わせて微妙に味を変えています。

佐藤 本誌の読者は、皆さんお忙しい方です。食事も不規則だったり、会食続きの方も多くいらっしゃいます。そういう人にアドバイスをお願いします。

20161115TAKATO_P02髙遠 私のところにも、数多くの経営者がいらっしゃいますが、その多くの方がショートスリーパーです。こういう人たちは、体温が低くなりがちです。そこで、どんなに忙しくても、朝晩10分ずつ41度のお風呂に首までつかる。そして毎朝、60度の白湯を2杯飲む。これで腸が目覚めます。これを実践されて体調がよくなった方は多いですよ。

佐藤 私は先日断食に行き、3日間、何も食べない経験をしてきました。行く前は、お腹が空き過ぎて眠れないのかと思っていましたが、それほど辛くもなく、夜もきちんと眠れました。何よりよかったのは、ただ静かにそこにいるだけ。普段忙しいだけにその時間が心と体の休息になり、リセットされて本来の自分に帰れたような気がします。

髙遠 素晴らしいですね。自分をリセットすることはとても大切です。できることなら、一日が終わるごとに、本来の自分を再確認して、リセットできればいいのでしょうが、それが無理なら、有美さんのようなやり方でいいのではないでしょうか。

髙遠智子氏の料理の原点は舌が覚えている母親の記憶

佐藤 髙遠さんの本には、3歳の時にお母さまが亡くなられて、継母はあまり料理もされなかったと書いてあります。そうなると、髙遠さんの味の原点はどこにあるのでしょうか。

20161206TAKATO_P01

(たかとう・ともこ)1968年福岡県生まれ。28歳の時に卵巣がんで、31歳で肺に転移、余命3カ月を告げられる。最後の旅行として出掛けたパリでトマトを食べたことから食に目覚め、フランス、中国で食の勉強に取り組む。その過程で元気を取り戻し、食の素材の知識を生かしたオーガニック薬膳料理研究家として精力的に活動している。『食べものだけで余命3か月のガンが消えた』(幻冬舎)は30万部のベストセラーに。

髙遠 母は福岡のすっぽん料理のお店のおかみさんでした。人間の味覚は3歳までに形成されるといいますから、私の味覚のベースはすっぽんにあるような気がします。あまり母の記憶はありませんが、舌が母を覚えています。

佐藤 共働き世帯が増えたこともあって、家庭の食生活が乱れています。家の味というのは文化の継承ですから、これから先が少し心配です。

髙遠 晩ご飯はスーパーで買ってきた総菜というのもよく聞く話です。確かに皆さんお忙しいし、毎食、手づくりの料理を出すことはむずかしいと思います。ですから、せめて1日2食の味噌汁から始めませんか、とお伝えしています。味噌汁を飲むことで、体は温まるし心はほっとします。母のお腹の中にいるように、優しさに包み込まれます。これが子どもたちの精神を安定させてくれるのです。

佐藤 私も偉そうなことは言えません。仕事が忙しくて、子どもはいつも納豆ご飯。そうすると子どもが「ママのつくった納豆ご飯は世界一だ」と言ってくれて、それがまた申し訳ないやらありがたいやら。

髙遠 優しい息子さんですね。忙しいときはそれでもかまわないと思います。ただそのときに、ほんのひと手間かけてあげる。それだけで、母親のつくった料理が記憶にも舌にも残ります。それと納豆は発酵食品です。発酵食品は体の再生力を高めます。忙しいときにはぴったりです。

佐藤 日本には味噌やぬか漬けなど身近なところに発酵食品があります。私の祖母がぬか漬けの名人でした。おいしいだけでなく、体にもいい食材を自然に摂っていたんですね

髙遠 発酵食品はアンチエイジングにもいいですよ。最近の研究では、乳酸菌と組み合わせるとさらにいいことがわかってきました。しかも朝よりも夜に食べたほうが効果があります。ですから毎日お酒を飲むという人は、おつまみにチーズとキムチを食べるといった工夫をしていただきたいですね。

髙遠智子氏の最後の晩餐は?

佐藤 糖質オフも話題になっています。実践されていますか。

髙遠 夜はあまり食べないようにしていますが、でも日本人はご飯に始まりご飯に終わります。私も最後の晩餐に何を選ぶかと聞かれれば、白いご飯と答えるほどのご飯好きです。

佐藤 私は納豆ご飯(笑)。

髙遠 そんなにおいしいご飯を食べないことなど、日本人にはむずかしい。それにご飯にはリラクゼーション機能や美肌効果もあります。ですから夜でも、50グラム、お茶碗半分くらいならかまわないと思います。

佐藤 これからどんな料理をつくっていきたいですか。

髙遠 旬の食材を使った、食べる人に寄り添う料理をつくっていきたいです。私が今こうしてお料理をつくらせていただいているのは、皆さまに食を通じて健康をお届けする天命が与えられたからだと思います。その使命を全うするのが私の役割です。

 贅沢な食ではなく丁寧な食。ひだまりのように、皆さまになごんでいただけるような食文化を伝えていきたいです。

佐藤 プライベートは?

髙遠 今は皆さまに料理をつくらせていただけることがうれしくて、毎日がとても幸せです。


対談を終えて

20161206TAKATO_P02対談終了後、高遠さんの料理をいただきました。素材を生かした、とても繊細な味付けで、食べていると心も温かくなってきます。「食べる人に寄り添う料理」を堪能することができました。

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る