文化・ライフ

共働き家庭では、子どもにきちんとした料理を食べさせたいけれど時間がないと悩んでいるお母さんも多いと思います。髙遠智子さんは「せめてお味噌汁だけでも」とおっしゃいます。味噌汁の温かさが子どもの心を優しく包んでくれるそうです。

舌が覚えている母親の記憶

佐藤 髙遠さんの本には、3歳の時にお母さまが亡くなられて、継母はあまり料理もされなかったと書いてあります。そうなると、髙遠さんの味の原点はどこにあるのでしょうか。

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(たかとう・ともこ)1968年福岡県生まれ。28歳の時に卵巣がんで、31歳で肺に転移、余命3カ月を告げられる。最後の旅行として出掛けたパリでトマトを食べたことから食に目覚め、フランス、中国で食の勉強に取り組む。その過程で元気を取り戻し、食の素材の知識を生かしたオーガニック薬膳料理研究家として精力的に活動している。『食べものだけで余命3か月のガンが消えた』(幻冬舎)は30万部のベストセラーに。

髙遠 母は福岡のすっぽん料理のお店のおかみさんでした。人間の味覚は3歳までに形成されるといいますから、私の味覚のベースはすっぽんにあるような気がします。あまり母の記憶はありませんが、舌が母を覚えています。

佐藤 共働き世帯が増えたこともあって、家庭の食生活が乱れています。家の味というのは文化の継承ですから、これから先が少し心配です。

髙遠 晩ご飯はスーパーで買ってきた総菜というのもよく聞く話です。確かに皆さんお忙しいし、毎食、手づくりの料理を出すことはむずかしいと思います。ですから、せめて1日2食の味噌汁から始めませんか、とお伝えしています。味噌汁を飲むことで、体は温まるし心はほっとします。母のお腹の中にいるように、優しさに包み込まれます。これが子どもたちの精神を安定させてくれるのです。

佐藤 私も偉そうなことは言えません。仕事が忙しくて、子どもはいつも納豆ご飯。そうすると子どもが「ママのつくった納豆ご飯は世界一だ」と言ってくれて、それがまた申し訳ないやらありがたいやら。

髙遠 優しい息子さんですね。忙しいときはそれでもかまわないと思います。ただそのときに、ほんのひと手間かけてあげる。それだけで、母親のつくった料理が記憶にも舌にも残ります。それと納豆は発酵食品です。発酵食品は体の再生力を高めます。忙しいときにはぴったりです。

佐藤 日本には味噌やぬか漬けなど身近なところに発酵食品があります。私の祖母がぬか漬けの名人でした。おいしいだけでなく、体にもいい食材を自然に摂っていたんですね

髙遠 発酵食品はアンチエイジングにもいいですよ。最近の研究では、乳酸菌と組み合わせるとさらにいいことがわかってきました。しかも朝よりも夜に食べたほうが効果があります。ですから毎日お酒を飲むという人は、おつまみにチーズとキムチを食べるといった工夫をしていただきたいですね。

最後の晩餐は真っ白なご飯

佐藤 糖質オフも話題になっています。実践されていますか。

髙遠 夜はあまり食べないようにしていますが、でも日本人はご飯に始まりご飯に終わります。私も最後の晩餐に何を選ぶかと聞かれれば、白いご飯と答えるほどのご飯好きです。

佐藤 私は納豆ご飯(笑)。

髙遠 そんなにおいしいご飯を食べないことなど、日本人にはむずかしい。それにご飯にはリラクゼーション機能や美肌効果もあります。ですから夜でも、50グラム、お茶碗半分くらいならかまわないと思います。

佐藤 これからどんな料理をつくっていきたいですか。

髙遠 旬の食材を使った、食べる人に寄り添う料理をつくっていきたいです。私が今こうしてお料理をつくらせていただいているのは、皆さまに食を通じて健康をお届けする天命が与えられたからだと思います。その使命を全うするのが私の役割です。

 贅沢な食ではなく丁寧な食。ひだまりのように、皆さまになごんでいただけるような食文化を伝えていきたいです。

佐藤 プライベートは?

髙遠 今は皆さまに料理をつくらせていただけることがうれしくて、毎日がとても幸せです。


対談を終えて

20161206TAKATO_P02対談終了後、高遠さんの料理をいただきました。素材を生かした、とても繊細な味付けで、食べていると心も温かくなってきます。「食べる人に寄り添う料理」を堪能することができました。

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