政治・経済

201710地銀再編 金融庁が後押しする地銀再編にブレーキがかかりかねない事態が起きた。九州最大の金融グループ、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と長崎県最大手の十八銀行が、10月に予定していた経営統合の再延期を決定。統合により長崎県内で寡占が起きることを懸念する公正取引委員会の審査が難航しているためで、金融庁も静観するしかないのが実情だ。

 人口が減少する中、金融庁は地銀に対し収益力確保のため統合・再編を選択肢の一つとして迫ってきたが、今後追随する地銀が出てくるか、雲行きが怪しくなってきた。

 FFGと十八銀は統合後、FFG傘下の親和銀行(長崎県佐世保市)と十八銀を合併させる計画で、有力地銀同士の合従連衡として注目を集めていた。だが公取委は、合併で長崎県内での貸し出しシェアが7割と突出し、競争環境が保てないことを問題視。FFGと十八銀は他行への債権譲渡などを公取委に提案したが、了承されなかった。

 両社は「すべての関係者が納得できる統合を実現するため議論を尽くす」(FFGの柴戸隆成社長)考えだが、今後も公取委の理解を得られなければ、白紙撤回の可能性もぬぐえない。そうなれば、森信親長官の下で地銀再編を推進してきた金融庁のメンツもつぶれかねない。

 金融庁は、2025年3月期に6割の地銀が本業の融資などで赤字になるとする試算などをことあるごとに示し、旧態依然とした地銀に対し、再編も含め新たなビジネスモデルを開拓するよう意識改革を迫ってきた。

 地銀の数は、なお100行を超えるオーバーバンキング状態でもある。金融庁は表向き「再編を促進しているわけではない」との立場だが、地銀が生き残るには、収益力向上のための統合・再編は避けられないとの見方も多い。だからこそ金融庁は今年3月、FFGと十八銀の経営統合にからみ、長崎県で異例の地元企業向けの説明会を開催。効率化で生まれる経営資源の余力を、地域経済の活性化につなげるよう促すべきだとする見解を示した。

 しかし逆に言えば、金融庁にできるのはここまで。「公取委に対し、何らかのアクションを起こすことは難しい」(地銀関係者)ことから、推移を見守るしかないのが実情だ。

 今年2月には三重県の三重銀行(四日市市)と第三銀行(松阪市)、4月には新潟県の第四銀行(新潟市)と北越銀行(長岡市)が統合で基本合意した。しかし“旗振り役”がこれでは、地銀が再編を検討しようにも不安でならない。

 シェアばかりを重視する公取委に対しては、反発する地銀も少なくない。これまで地銀を動かしてきた金融庁に対しては、有効な打開策を求める声も強まりつつある。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

グローバル化が進む中、多くのビジネスパーソンにとって英語力の向上は大きな関心事の1つ。日本人が相変わらず英語を苦手とする理由と解決策について、英語学習アプリで展開するポリグロッツの山口隼也社長を取材すると共に、同社が提供するサービスについても聞いた。(取材・文=吉田浩)日本でますます高まる英語学習熱  201…

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る