マネジメント

 前回のワールドカップで優勝候補の南アフリカを破るなど躍進を遂げたラグビー日本代表。2019年大会は日本で開催されることもあり、さらなる活躍が期待されるが、その代表チームを共同主将のひとりとして束ねるのが立川理道選手。その高いリーダーシップで所属チームのクボタ、スーパーラグビーのサンウルブズでも主将を務める。異なる3つのチームを率いるリーダーは、どうやって誕生したのか、本人に聞いた。聞き手=古賀寛明 Photo=山内信也

新人でもベテランでも対応を変えないと語る立川理道氏

201710RUGBY_p01

たてかわ・はるみち 1989年、奈良県生まれ。天理大学卒業後、クボタスピアーズに所属。2012年4月のカザフスタン戦で日本代表初キャップを獲得し、15年のワールドカップにも出場。現在、日本代表で堀江翔太選手、スーパーラグビー・サンウルブズでもエドワード・カーク選手と共に共同主将を務め、クボタスピアーズでも主将。ポジションは主にセンター。180センチメートル、94キログラム。

―― 3つのチームでキャプテンをされていますが、昔からリーダーを任されていたのでしょうか。

立川 いや、全くそんなことはなくて、一つ上の兄(同じクボタスピアーズに所属する立川直道選手)のほうがみんなを引っ張っていくタイプでしたので、僕はその後をついていくだけでした。ただ、高校、大学と兄がキャプテンをした翌年にキャプテンを務めるといった具合になっていました。とはいえ、兄の真似をするだけでしたね。

―― リーダーシップを評価する声が高いですが、自身をどのようなリーダーだと思われていますか。

立川 リーダーとしての行動を強く意識するようになったのは日本代表を経験してからです。もともと、そんなに積極的に発言をするタイプではないので、プレーで引っ張っていきたいとは思っています。褒めていただくのはうれしいのですが、自分のどこにリーダーシップがあるのか、よく分からないんです(笑)。ただ、周囲からは、人とのつながりをフラットに考えているので、新人でもベテランでも対応が変わらない、とは言われます。日本のスポーツにありがちな上下関係に縛られることがなかったことが影響していると思います。いつも同じチームに兄がいましたから好きなことを言えましたし、好きなことを言える分、後輩からも思ったことを遠慮なく言ってもらう環境づくりは考えていました。

―― 実際にチームづくりではどのようなことに注意していますか。

立川 私は決めきれないところがあって、監督や他のリーダーとよく話し合って方向性を決めています。ラグビーはコミュニケーションが大事ですので、普段から積極的に取らないと意思疎通がうまくいきませんからそこは気をつけています。また、試合には15人しか出られませんが、スピアーズには選手が50人ほどいます。出場できない選手の辛さは分かりますから、出られない選手の存在意義を見いだしてあげれば、その選手もチームのために頑張れると思うので、いつも出場する選手よりも、そうした縁の下の力持ち的な存在の人に気を配っています。その方がチームとしても機能すると思いますね。

―― サンウルブズや代表は共同キャプテンですが違いはありますか。

立川 両チームとも、寄せ集めのチームですから短期間でひとつのチームにするのが難しいということも共同キャプテンの理由のひとつでしょう。サンウルブズは特に外国人選手も多いので、もうひとりのキャプテンであるカーク(エドワード・カーク選手)と緊密に連絡をとっています。僕がケガして出られない場合でも、週1回くらいは連絡しています。また代表では、堀江(翔太選手)さんがずっと日本代表に入っていますしベテランでもあるので、しっかり先頭に立ってもらって僕は支える役目です。サンウルブズにしても代表にしても、プレースキルも意識も高い選手ばかりですので、チームづくりという点ではあまり難しさは感じません。

―― ラグビーのキャプテンには、ゲーム中、レフェリーとのコミュニケーション能力も求められますね。

立川 そうですね。ジェイミージャパンになってからは、レフェリーと前日にしっかりと話せる場を設けてもらえるようになりましたので、自分たちのチームの傾向を伝え、レフェリーからも、日本のこのプレーは誤解を招きやすいから注意したほうがいいといった意見をもらえるようになりました。いろんな国、いろいろなタイプの方が笛を吹くのですが、英語が母国ではないフランスやアルゼンチンなどのレフェリーとは、意外と分かり合える気がします(笑)。

―― 自分のパフォーマンスが悪い時、キャプテンシーに影響しますか。

立川 そういう時こそ、逆に声を出すようにしています。それは、自分にプレッシャーをかける意味もあるのですが、リーダーが沈むとチームも決して良い方向にはいきません。ですから、そういう時こそ、いまチームがやろうとしていること、例えばタックルが良くなければ、「タックルに集中しよう」など短い言葉で伝えるようにします。もし、そこで上下関係があれば「何言ってんだよ」ということになるので、そこは普段からなくすようにしていますね。

―― これまで、参考にしたいと思ったリーダーはいましたか。

立川 兄もそうなんですが、代表に入った時にキャプテンを務められた東芝の廣瀬(俊朗選手・現在は引退)さんですね。ひと言でもいいからチーム全員と言葉を交わすことを自分に課していたり、普段の生活でも、裏方さんやスタッフへのさりげない気遣いができる人です。

―― 最後に、立川選手が考えるリーダーにとって大事なことは。

立川 きちんと自分の意見が言えて、ブレない人です。上がブレるとチームも安定しないし、率直な意見を言えないようでは、この人についていこうとは思わないですからね。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る