政治・経済

日比谷1

旧三信ビルディング

 日比谷は、明治以降の日本の近代化・国際化を主導し、その象徴となった街である。明治政府は欧化政策を進める中で、1883年、外交・社交の場として鹿鳴館を現在のNBF日比谷ビルの場所に建設した。隣接地には1890年、日本初の国賓ホテルとして帝国ホテルが建てられた。また、江戸時代の大名屋敷の跡地には、1902年に日比谷公園が開園。中央公園として国家行事の開催場所や集会などの社会運動の拠点にもなった。

 昭和に入ると、日比谷映画劇場や東京宝塚劇場、日生劇場、有楽座など多くの劇場・映画館が建ち並ぶ一大エンターテインメント拠点となった。また、東宝の本拠地である東宝日比谷ビル(日比谷シャンテ)も位置し、日比谷公園内には日比谷公会堂がある。日比谷は世界の文化、芸術と出合える街として、日本人の豊かな感性を育んできたといえる。

 この日比谷エリアにおいて、三井不動産が新たに「東京ミッドタウン日比谷」の開発を進めている。日比谷公園に面する旧三信ビルディングと旧日比谷三井ビルディングの老朽化に伴い、跡地を一体的に再開発するもので、地上35階、地下4階、延べ床面積約18万9千平方メートルのオフィス・商業等の複合施設を建設する。

 オフィスフロアは9.10階のロビー階から11~34階に位置する。また6階には、ベンチャー企業や大企業など多種多様な人材の交流を新産業ビジネスにつなげる場として「日比谷ビジネス連携拠点(仮称)」を設ける。さまざまなワークスタイルを提供し、新たな国際ビジネスの拠点となることも期待される。

 商業フロアは地下1階~地上7階で、全60店舗が出店する。6階と9階に大きな空中庭園を設け、隣接する日比谷公園の豊かな緑を建物の中にも取り込む形をとる。なお、4階と5階には、11スクリーン約2300席のシネマコンプレックス「TOHOシネマズ 日比谷」が入る。現在、東宝は有楽町マリオンに「TOHOシネマズ日劇」があるが、TOHOシネマズ日比谷に移転する形で、TOHOシネマズ日劇は閉館する。東宝としても、新たな TOHOシネマズ日比谷により、映画・演劇の街としての日比谷を再興させていく構えだ。

 東京ミッドタウン日比谷は、2018年2月1日に竣工し、3月29日にグランドオープンを予定している。

地元密着と官民連携を推進歩行者ネットワークを整備

日比谷2

旧日比谷三井ビルディング

 今回の開発では、区画整理を行い、千代田区の区道を広場に変えた。具体的には、開発前は旧三信ビルと旧日比谷三井ビルの間に区道があったが、再開発に際して、区道と旧三信ビルの敷地を付け替え、旧三進ビルの跡地に新たに広場を設け、区道のあった場所を旧日比谷三井ビルの敷地と一体化しビルを建設した。敷地の入れ替えによって生じた広場は日比谷シャンテ前の合歓の広場と連続する空間となり、ここでさまざまなイベントを開催し、街の賑わいを創出する。

 この広場空間は周辺の歩行者ネットワークの結節点の役割を果たすことが期待されている。日比谷エリアの課題として歩行者の回遊性の悪さを指摘する声がある。日比谷は、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)や銀座、霞が関が徒歩圏内という地の利があるが、ある意味、周辺エリアから分断されていることが課題となっている。具体的には、銀座との間にはJRの線路があり、ガードが銀座から日比谷への回遊を妨げている。また、丸の内方面からのアクセスは晴海通りが1つの障壁となっている。そこで今回の開発では丸の内方面からのアクセスについて、開発エリアを南北に貫く道路を、丸の内仲通りからつながる歩行者ネットワークを形成する。そしてその賑わいの中心に広場空間を位置付ける。

 東京ミッドタウン日比谷への鉄道アクセスは、地下鉄日比谷線の日比谷駅と千代田線の日比谷駅が至近だが、現在、両駅間はバリアフリーの動線がない。今回の開発に伴い、日比谷線の日比谷駅と千代田線の日比谷駅からそれぞれ東京ミッドタウン日比谷の地下1階につながる地下通路をつくる。ここをバリアフリーの動線として、歩行者の利便性を向上する。

日比谷3

東京ミッドタウン日比谷の完成イメージ図

 三井不動産では、東京ミッドタウン日比谷の建設だけでなく、日比谷エリア全体の街づくりを進めている。地域との連携を図るため、15年3月に「日比谷エリアマネジメント」という街づくり団体を設立。このエリアマネジメント団体には地元企業や町会なども加わり、地域一体で運営する体制になっている。また、三井不動産では、エリアマネジメント設立前から地元と話し合いを重ね、日比谷の将来像についての議論の結果を踏まえて、今回の開発を進めている。

 実際にエリアマネジメント活動が本格稼働するのは、建物の建設後になる。施設の建設はデベロッパーが行うが、施設完成後の街の賑わいを創出・発展させていくのかがエリアマネジメントの役割となる。具体的な活動は集客イベントなどの企画・実行で、既に3年前から実施しているものとしては、エリア内の飲食店を食べ歩きができる「日比谷バルナイト」がある。こうした街の賑わいを創出する活動の担い手として、地域と連携・密着したエリアマネジメント団体は今後重要視されてくる。三井不動産としても、エリアマネジメント団体に、これまでのノウハウを提供し、街づくりに寄与していく。(写真提供:三井不動産)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界12月号
[特集]
東京新起動

  • ・二度目の変貌を遂げる大都市・東京
  • ・虎ノ門エリアはグローバルビジネスセンターとして進化中
  • ・東京ミッドタウン日比谷誕生で映画・演劇の街が再興
  • ・文化の発信地「渋谷」の百年に一度の大改造
  • ・泉岳寺・品川とも連携 品川新駅(仮称)のエキマチ一体開発
  • ・城北、埼玉方面への玄関口は行政が積極的
  • ・辻 慎吾(森ビル社長)
  • ・若林 久 西武鉄道社長

[Special Interview]

 稲垣精二(第一生命ホールディングス社長)

 「DNAの“第一主義”で圧倒的な未来をつくる」

[NEWS REPORT]

◆若者のクルマ離れに抵抗する豊田章男・トヨタ自動車社長の意地とプライド

◆ヤマトHDが人手不足よりも恐れる「送料無料」という意識

◆有機EL転換は避けられず 新生JDIは生き残れるか

◆シェール革命が動かす世界のパワーバランス

[特集2]今さら聞けないビットコイン

・可能性と危険性が共存するビットコインの魅力

・ビットコインだけではない! 1千種類を超える仮想通貨の世界

・ビットコインの2つの謎 ブロックチェーンとマイニング

ページ上部へ戻る