[特集 東京新起動]日比谷
あの「東京ミッドタウン」を日比谷にもつくる狙い
2017年10月30日

日比谷は、明治以降の日本の近代化・国際化を主導し、その象徴となった街である。明治政府は欧化政策を進める中で、1883年、外交・社交の場として鹿鳴館を現在のNBF日比谷ビルの場所に建設した。隣接地には1890年、日本初の国賓ホテルとして帝国ホテルが建てられた。また、江戸時代の大名屋敷の跡地には、1902年に日比谷公園が開園。中央公園として国家行事の開催場所や集会などの社会運動の拠点にもなった。
昭和に入ると、日比谷映画劇場や東京宝塚劇場、日生劇場、有楽座など多くの劇場・映画館が建ち並ぶ一大エンターテインメント拠点となった。また、東宝の本拠地である東宝日比谷ビル(日比谷シャンテ)も位置し、日比谷公園内には日比谷公会堂がある。日比谷は世界の文化、芸術と出合える街として、日本人の豊かな感性を育んできたといえる。
この日比谷エリアにおいて、三井不動産が新たに「東京ミッドタウン日比谷」の開発を進めている。日比谷公園に面する旧三信ビルディングと旧日比谷三井ビルディングの老朽化に伴い、跡地を一体的に再開発するもので、地上35階、地下4階、延べ床面積約18万9千平方メートルのオフィス・商業等の複合施設を建設する。
オフィスフロアは9.10階のロビー階から11~34階に位置する。また6階には、ベンチャー企業や大企業など多種多様な人材の交流を新産業ビジネスにつなげる場として「日比谷ビジネス連携拠点(仮称)」を設ける。さまざまなワークスタイルを提供し、新たな国際ビジネスの拠点となることも期待される。
商業フロアは地下1階~地上7階で、全60店舗が出店する。6階と9階に大きな空中庭園を設け、隣接する日比谷公園の豊かな緑を建物の中にも取り込む形をとる。なお、4階と5階には、11スクリーン約2300席のシネマコンプレックス「TOHOシネマズ 日比谷」が入る。現在、東宝は有楽町マリオンに「TOHOシネマズ日劇」があるが、TOHOシネマズ日比谷に移転する形で、TOHOシネマズ日劇は閉館する。東宝としても、新たな TOHOシネマズ日比谷により、映画・演劇の街としての日比谷を再興させていく構えだ。
東京ミッドタウン日比谷は、2018年2月1日に竣工し、3月29日にグランドオープンを予定している。
東京ミッドタウン日比谷建設と地域一帯で運営する日比谷エリア全体の街づくり
今回の開発では、区画整理を行い、千代田区の区道を広場に変えた。具体的には、開発前は旧三信ビルと旧日比谷三井ビルの間に区道があったが、再開発に際して、区道と旧三信ビルの敷地を付け替え、旧三進ビルの跡地に新たに広場を設け、区道のあった場所を旧日比谷三井ビルの敷地と一体化しビルを建設した。敷地の入れ替えによって生じた広場は日比谷シャンテ前の合歓の広場と連続する空間となり、ここでさまざまなイベントを開催し、街の賑わいを創出する。
この広場空間は周辺の歩行者ネットワークの結節点の役割を果たすことが期待されている。日比谷エリアの課題として歩行者の回遊性の悪さを指摘する声がある。日比谷は、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)や銀座、霞が関が徒歩圏内という地の利があるが、ある意味、周辺エリアから分断されていることが課題となっている。具体的には、銀座との間にはJRの線路があり、ガードが銀座から日比谷への回遊を妨げている。また、丸の内方面からのアクセスは晴海通りが1つの障壁となっている。そこで今回の開発では丸の内方面からのアクセスについて、開発エリアを南北に貫く道路を、丸の内仲通りからつながる歩行者ネットワークを形成する。そしてその賑わいの中心に広場空間を位置付ける。
東京ミッドタウン日比谷への鉄道アクセスは、地下鉄日比谷線の日比谷駅と千代田線の日比谷駅が至近だが、現在、両駅間はバリアフリーの動線がない。今回の開発に伴い、日比谷線の日比谷駅と千代田線の日比谷駅からそれぞれ東京ミッドタウン日比谷の地下1階につながる地下通路をつくる。ここをバリアフリーの動線として、歩行者の利便性を向上する。
三井不動産では、東京ミッドタウン日比谷の建設だけでなく、日比谷エリア全体の街づくりを進めている。地域との連携を図るため、15年3月に「日比谷エリアマネジメント」という街づくり団体を設立。このエリアマネジメント団体には地元企業や町会なども加わり、地域一体で運営する体制になっている。また、三井不動産では、エリアマネジメント設立前から地元と話し合いを重ね、日比谷の将来像についての議論の結果を踏まえて、今回の開発を進めている。
実際にエリアマネジメント活動が本格稼働するのは、建物の建設後になる。施設の建設はデベロッパーが行うが、施設完成後の街の賑わいを創出・発展させていくのかがエリアマネジメントの役割となる。具体的な活動は集客イベントなどの企画・実行で、既に3年前から実施しているものとしては、エリア内の飲食店を食べ歩きができる「日比谷バルナイト」がある。こうした街の賑わいを創出する活動の担い手として、地域と連携・密着したエリアマネジメント団体は今後重要視されてくる。三井不動産としても、エリアマネジメント団体に、これまでのノウハウを提供し、街づくりに寄与していく。(写真提供:三井不動産)
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