政治・経済

品川新駅を中核にしたエリア開発の背景

品川1

品川新駅(仮称)の鳥観イメージ図

 

 JR東日本は山手線の田町駅と品川駅の間に新駅を設け、駅を含めた新たな街の一体開発を進めている。

 直接のきっかけは、品川車両基地の効率化だ。近年になって田町―品川駅間に位置する品川車両基地において、東京発の東海道線夜行列車の減便・廃止により配置車両が減少。さらに上野東京ライン開通などで、車両の配置箇所見直しを行った結果、品川車両基地の規模を縮小させることができ、約20ヘクタールの用地のうち、13ヘクタールが事業用地として活用されることになった。

 そこでJR東日本では新駅を含めたエリア一帯の開発を行うことになった。

 新駅の場所は田町駅から南に約1.3キロメートル、品川駅から北へ0.9キロメートルの地点。山手線と京浜東北線の線路を東側に最大約120メートルずらすことになる。山手線では1971年開業の西日暮里駅以来、30番目の駅となる。また、京浜東北線の新駅としては、2000年のさいたま新都心駅以来となる。

 JR東日本では、これまでも首都圏のターミナルで駅の改善と駅周辺の街づくりを行ってきたが、今回は13ヘクタールと広大かつ何もない土地を一から開発することになるため、新駅を中核施設とし、一つの群として新たな街そのものを創出する。

 現在の進捗は、まちづくりについて、「品川駅北周辺地区まちづくりガイドライン」が今年3月に制定され、開発の大枠は固まった状況。現在は実行に向けた詳細なプランを練っているという。

 新駅の駅舎デザインには、建築家の隈研吾氏を起用。日本の伝統的な折り紙をモチーフにした大屋根を設け、また、障子をイメージして膜や木などの素材を活用、日本の「和」の魅力を発信する。

 駅舎は地上3階で、地上階にホームがあり、2階が改札階、3階が店舗などの駅施設となっている。今回の街づくりでは、「エキマチ一体」がテーマとなっており駅と街を一体的な空間として感じる構造になっている。

 具体的には、改札階の2階部分から街へつながるデッキを検討。駅と街の広場が一体となるような空間をつくる。歩行者はデッキ部分から街へ回遊し駐車場やバス乗り場は地上に設け、歩車分離を実現する。

 また、駅舎東西面に大きなガラス面を設け、3階に設けたテラスから街が見渡せるようになっており、駅と街との一体感を感じる仕掛けになっている。

 

「提灯殺しのトンネル」で遮断されていた品川エリア

 

 街づくりではエリアの交通網も整備する。これまでは広大な車両基地だったため、山手線の線路を挟んだ東西の連絡は、高輪架道橋という片側1車線・一方通行のガードトンネルがあるだけだった。

 しかも、この高輪架道橋は高さ制限1.5メートルの都内で最も低いガードであり、「提灯殺しのトンネル」と称されていた。それだけに東西の交通はほぼ遮断されていたに等しい。

 今回の開発では横に大きな3つの東西軸を通す。

 一つは、東京都が計画している環状4号線を延伸し、線路の上をまたぐ形で、開発エリアを横断させる。

 2つめは新駅から歩行者専用の連絡通路を山側から海側に通す。3つめは従来からある高輪架道橋を全面拡張し、上下両方向の新しい区道に作り替える。これにより、エリア内外の回遊性を高める。

 新駅の開業は2020年を予定しているが、駅周辺は土地の造成が完了した状態であるという。

 このため、開業直後は、その土地を利用して、オリンピック・パラリンピックに関連したイベントなどを期間限定で行う。そしてオリンピック・パラリンピック後に駅周辺の本格的な工事に入り、24年に「街びらき」を行い、駅周辺も含めた本格開業をする予定だという。

 

品川駅を中心に新駅・泉岳寺駅とも連携

品川2

品川新駅(仮称)の街区側外観イメージ図

 

 品川新駅(仮称)の隣接エリアでも開発プロジェクトが進んでいる。まず品川新駅(仮称)から300メートルほどの距離にある都営地下鉄泉岳寺駅があるが、ここでは駅の利便性向上に向けた改良が進んでいる。新駅と泉岳寺の乗り換えも想定されている。

 また、品川駅では、京浜急行が現在2階部分のホームを地上階に降ろして乗り継ぎを容易にすると同時に、駅周辺の連続立体交差事業を進めている。

 さらにJR東海では27年にリニア中央新幹線の発着点となる駅工事を進めている。

 品川新駅(仮称)の開発エリアの中には、新駅、泉岳寺駅、品川駅と3つの駅が利用できる。そして、エリア全体の利便性が高まることで、新駅を拠点とする新たな街もその恩恵を受ける。泉岳寺駅からは京浜急行を経由して、羽田空港にアクセスできるため、世界につながる。

 また、将来的に品川駅からはリニア中央新幹線で関西との時間的距離が縮まる。エリア全体の広域拠点性の高さは大きな強みとなり、世界および国内の各都市に向けた一大交流拠点となりうる。

 新駅の開発プロジェクトが目指すところも、まさにそこで、エリア全体で「グローバル ゲートウェイ 品川」となることを目指している。

 江戸時代には、最初の宿場町として品川宿が置かれ、「江戸の入口」として栄えたが、21世紀の品川は「日本の玄関」として大きく発展する可能性を秘めている。(写真提供:JR東日本)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長プロフィ…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

一般には馴染みが薄い産業廃棄物処理の世界。古い慣習が残る業界を、ITによって変えようとしているのがトライシクルの福田隆社長だ。業界の老舗企業がテクノロジー導入に舵を切った背景と今後の展望を聞いた。(吉田浩) 福田隆・トライシクルCEOプロフィール   産廃処理で「B to B版メルカ…

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る