マネジメント

圧倒的に稼げる人とそうでない人との違いは何なのか。事業における成功と失敗の分かれ道はどこにあるのか。本シリーズでは、幾多の修羅場をくぐりぬけてきた企業経営者たちを直撃し、成功者としての「原点」に迫っていく。

小田健太郎氏の先見性 いち早くスマホ対応技術に着手

アイリッジPHOTO4

(おだ・けんたろう)慶応義塾大学経済学部卒業後、NTTデータを経て、ボストン・コンサルティング・グループ入社。モバイル業界を中心に、事業戦略、新規サービス立ち上げコンサルティングを多数実施。2008年アイリッジを創業し、代表取締役社長に就任。2015年東証マザーズに上場。

江上 今度私は、起業のPDCAという本を書く予定なんですが、やはり起業するには準備がすごく大事で、どんな準備をしたかで成否が決まるということを書こうと思っています。小田社長はサラリーマン時代にきちんと目標を定めて、資金も貯めて、顧客への提案能力も養って、きちんとステップを踏んでいるなと思いました。そうした経験を基に、今のメンバーの方々にはどんな指導をされているんでしょうか。

小田 実は、そこは自分で相対的に弱い部分だと思っていて、会社員時代は小規模チームのマネージャーみたいな感じだったので、見ていたのはせいぜい3~4人のチームだったんです。今は70人のチームを率いているのですが、その規模のマネージメントは過去に経験していないので、学びながらやっていますし、今後人数が増えた時も同様だと思ってます。もし、100人規模、1,000人規模のマネージメントを過去に経験していたら、もっとうまくできるんじゃないかと思っています。

江上 なるほど。では、業績が飛躍的に伸びたポイントを教えていただけますか?

小田 いち早く、スマートフォンに目を付けた時だと思います。スマホが世に出てきたのはちょうどわれわれの創業と同じくらいの時期だったんですが、当時は日本でスマホは流行らないと言われていました。日本のガラケーのほうが先を行っていて、ガラケービジネスで上手くいっている人たちが多かったからです。でも、われわれはベンチャーですから、新しいものに活路を見出すしかありませんでした。そうしているうちに、2010年ぐらいになって、大方の予想を覆してスマホがすごく成長しだしました。われわれは、既にスマホ対応の技術開発をしていたため、優位に立てたんです。創業3年目には、ベンチャーキャピタルから数千万円の資金調達を行い、さらなる成長の準備をしました。

江上 東証マザーズへの上場が2015年でしたね。

小田 そうです。資金調達して4年ぐらいで上場できたので、順調なほうだと思います。以前に比べて、今はベンチャーキャピタルからの資金調達がしやすくなっていますが、当時はリーマンショックの影響が残っていたので大変でした。

江上 そこは、ボストン・コンサルティング時代のプレゼン力が生きたということでしょうか。

小田 そうかもしれません。ボスコンに勤めていなかったら、プライベートカンパニーとしてコツコツやっていた可能性もありますが、資金調達によって会社を成長させられることを知っていましたから。

幸運を呼び込むための準備をしていた小田健太郎氏

江上 上場後に苦労したことはありますか?

小田 上場までは割と順調でした。われわれのビジネスであるO2Oの概念は、資金調達した時点ではまだ世の中に知られていませんでした。われわれがやっていることに、世間が後追いで注目してくれるようになったんです。幸運なことに、その流れにうまく乗ることができ、「業界のリーディングカンパニー」と言えるようになりました。

江上 運の重要性は松下幸之助さんも言っていますね。運が良くなる人は、目標設定をしっかりやったり、きちんとステップを踏んだりといった部分で共通点があると思うんですが、幸運を呼び込んで成功するためのポイントを小田社長は押さえている気がします。

小田 確かに運もあったと思いますが、運を上手くつかめる準備をしていたということが大きいと思います。いろんな挑戦をする中で、一番顧客からのニーズが強いものを手掛けて、資金調達をして成長するための準備をして、そこにフォローの風が吹いた、という感じですね。

 経営の観点から常に「ヒト、モノ、カネ」ということは意識していて、初めはまず資金を貯めておき、次に企画をいろいろと提案する中で引きが強い事業を見付けて、人を採用して、上手く行きだしたら成長するための資金調達と、タイミングによって次に何をしなければいけないかということはいつも考えています。

江上 いち早く事業の芽を見つけるのに、何かコツはあるんでしょうか。

小田 われわれが手掛けるのはB to Bの領域なので、顧客企業のマーケティング担当者にいろんなことを提案していくと、「こういうのが欲しい」という声がいくつか出てきます。感覚的には、3人が欲しいと言うものがあればゴーですね。アンテナをたくさん持って、ニーズがあるところに上手く突っ込んでいけました。

小田健太郎氏の信念 強い意志を持って挑戦を

アイリッジPHOTO5江上 現在の業績はどうなっていますか?

小田 前期の売上高は約15億円で、今期は20億円を目標にしています。

江上 経営計画は創業当初から作っていたのでしょうか。

小田 ベンチャーキャピタルから資金調達するときに初めて作りました。経営計画については思い通りにいかないこともありますが、つくったほうが将来成長している姿を経営者がリアルにイメージできるという良さはあります。

江上 私は『年収1億円人生計画』という本の中で、人生計画書を作ることを推奨しているのですが、成功する人は自分の人生計画と会社の人生計画を両方のバランスよく持っています。

小田 たとえば、単に「お金持ちになりたい」というのと、「50歳で1億円持っていたい」というのでは、後者の方がリアリティがあるので実現できる可能性が高いでしょうね。経営計画についても同じではないでしょうか。

江上 最後に読者へのメッセージとして、起業するうえで大事なこととこれから飛躍するためのポイントを。

小田 起業で一番大事なのは、やはり「思い」の部分でしょうね。初めは困難しかなくてもそこを乗り越えると成功確率はグッと上がります。困難を乗り越えるための強い意志を持っていれば、どんなやり方でも上手くいくのではないでしょうか。人の成長は、知識と経験の掛け算だと思いますが、特に経験の占める割合が多いと思います。どれだけ沢山の成功と失敗を経験できたかが重要です。私自身、会社経営を始めてからは全部が挑戦なので、いろんな経験が積めていると思います。

 事業を作るということは、世の中に価値を作る一つの形です。経営者として新しい事業を作り続けていくことを楽しんでいきたいと考えています。江上治×小田健太郎(前編)

(えがみ・おさむ)1億円倶楽部主幹・オフィシャルインテグレート代表取締役。1967年生まれ。年収1億円超の顧客を50人以上抱えるFP。大手損保会社、外資系保険会社の代理店支援営業の新規開拓分野で全国1位を4回受賞、最短・最年少でマネージャーに昇格し、独立。著書に16万部突破『年収1億円思考』他多数。

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