マネジメント

圧倒的に稼げる人とそうでない人との違いは何なのか。事業における成功と失敗の分かれ道はどこにあるのか。本シリーズでは、幾多の修羅場をくぐりぬけてきた企業経営者たちを直撃し、成功者としての「原点」に迫っていく。

他の100人とは違う印象を与える

佐野社長1

(さの・けんいち)1969年生まれ。鹿児島県出身。91年光通信入社。95年有限会社ビジョンを設立し、国際電話サービス販売事業をスタート。96年株式会社に改組。その後、情報通信サービスの販売をWebマーケティングの活用により成長させ、12年には海外用モバイルWi-Fiルーターのレンタルサービスである「グローバルWiFi」を開始。15年東証マザーズ上場、16年東証一部への指定替えを果たす。

江上 佐野社長は鹿児島のご出身なんですね。高校を卒業後、光通信に勤められたそうですが。

佐野 会社の社長になりたいという意識は特になかったんですが、将来自分で何かをやりたいとは思っていました。ただ、鹿児島にいてもチャンスはないので、東京に出てしばらく友人の家に居候していました。

 その友人は起業して、夜な夜なパソコンで超高層ビルの設計を手掛けていたんです。それで結構稼いでいるのを見て、自分も何かをやらないといけないなと。でも、いきなり起業はできないし、どこかで修業して何かしらできるようになりたいと思って、いろいろと選定して最後に残ったのが不動産業界と通信業界。将来性を考えたら通信のほうが伸びそうだと考えて、光通信に面接に行きました。そしたら通信サービスの営業会社だったのですが(笑)、逆にそれで良かったなと思います。

 まず営業ができないと商品やサービスを売れませんし、コミュニケーション力も身に付きませんから。入社初日に同期と飲みに行ったら、みんな将来は独立したいという話をしていて、自分もそうなりたいと思っていました。

江上 自分を変えようと思ったら、目標を立てた上でどんな環境を選択するかが大切だと思いますが、起業家志望の仲間が集まって土台を作ったわけですね。光通信ではどんな営業をされていたのですか。

佐野 通信回線の営業で、基本は地域密着の飛び込み営業でしたね。初日に先輩に半日だけ同行してもらった後は、「1人で行ってこい」みたいな。

江上 では、営業手法はご自身で工夫するしかなかったわけですね。

佐野 自分なりに工夫する中で、学んだことはいっぱいあります。まず、1つはこちらが若かったので、お客様に信用してもらえないという点がネックでした。25年前は、今より若者を受け入れる文化がなかったですし、とにかく「若い人はダメだ」といった風潮が強かった。

 では、なぜ若いからダメなのかと考えたら、訪問していた経営者たちの息子さんや娘さんが僕の歳に近いケースが多く、僕らの世代に対して良い印象を持っていない部分があった。勉強はできるけどコミュニケーション下手、ちゃんと挨拶ができない、根本的な基本ができないからダメ、と言われるわけです。

 そして、自分の息子や娘と比較して、こいつはどうなんだという見方をされる。だから、逆にダメなところを直せば「若いのにしっかりしているね」と見直してくれるということに、結構早めに気付いたんです。挨拶ひとつにしても、1日100人がその会社に出入りする中で、101人目になったら負け。他の100人とは違って、「元気が良くて自信に満ちた若者が来た」というイメージを最初にもってもらえるかどうかで決まります。

江上 知識ではなく、相手との共通項を見付けるコミュニケーション力が重要ということでしょうね。

佐野 難しいことを言わない、というのもポイントです。自分たちの業界のことは詳しいので得てして喋りすぎになりがちですが、専門用語を並べて相手が分かってくれていると錯覚して、いざクロージングしようと思うと失敗するといったことがよくあります。誰にでも分かるような言葉で、相手と同じ目線かそれ以下に落として話せるかどうかがとても大事です。

ブラジル人ネットワークで販売を拡大

佐野社長2江上 4年半サラリーマンをされた後、富士山を見て独立を決意したそうですが。

佐野 もともと4~5年勤めたら独立しようとは思っていていたのですが、どこで誰とやるのかは決めていませんでした。土日も働いていたのでなかなか計画を立てる時間がないし、少しばかり計画を立てても、所詮は絵に描いた餅に過ぎません。計画だけが積みあがっても仕方がないので、独立するならタイミングが訪れた時しかないかなと考えていました。

 そんな時に、出張先からの帰路、たまたま新幹線が停車した新富士駅の車窓から見えた富士山があまりにも雄大で綺麗だったんです。衝動的にそのまま駅に降り立って、アパートを契約して住むことにしました。何と言うか、「今しかない」という感覚でした。

江上 瞬時に決断したんですか?すごいですね。

佐野 当時はいろんな事業部の事業部長をやって、次は役員かなという状況だったので、独立するならこのタイミングしかないかなと考えていました。静岡なので東京に比べるとマーケットは激減しますが、どこのエリアでやろうと一日に営業で回れる件数は同じですし、何とかなるだろうという感じでスタートしました。

江上 最初は何から始めたんですか。

佐野 回線系のビジネスをやろうと思っていたんですが、それはさて置き、4年半死ぬ気で働いてきたので、まずはサッカーをやりたいなと(笑)。静岡はサッカーどころですしね。それで、小学校のグラウンドでサッカーをしていた、ブラジル人たちのチームに入れてもらったんです。ブラジルのほうが静岡よりさらにサッカーどころですし(笑)。

江上 その発想がすごい(笑)。

佐野 サッカーなら言葉は要らないし、チームに日本人は僕しかいなかったので、いい経験になりましたね。チームメイトたちは日系ブラジル人が多かったのですが、当時彼らが困っていたことが2つありました。1つは、日本でものすごい差別があったこと。当時ブラジルはハイパーインフレで、彼らは日本に出稼ぎに来ていました。今でこそ訪日外国人が増えていますが、昔はたとえば車の自損事故を起こしただけで「ブラジル人が大事故を起こした」などと騒がれてメディアも書き立てる。そんな感覚だったんです。

 もう1つは国際電話料金がすごく高かったこと。海底ケーブルや衛星を使ってブラジルに電話を繋がっていいうわけですが、通信会社にとってそのコストが非常に高額なためでした。しかし、個人でも安くすることができる方法がありました。そういう事情を知っていたので、彼らを雇って国際電話の割引サービスを販売してもらう仕組みを作ったんです。

江上 何人くらい採用したんですか。

佐野 最終的に、50~60人ぐらいでしょうか。結構な数の受注が取れました。一軒ずつ訪問営業するのではなく、全国を対象に電話により加入申し込みを取れる方法をキャリアさんと交渉しました。国際電話はみなし発信と言って、最初に「001」「0041」などをつけて発信すれば、申し込みをしなくても自宅から掛けることができ、掛けたらそれがパーミッションという仕組みです。ブラジル人たちの間で紹介が広がっていき、顧客リストをどんどん作っていくことができました。

江上 たまたまサッカーがしたいと思ったところから、そこまで広がっていったんですね。目の前の人や社会のために役立ちたいという思いから広がっていったというのは、いい話ですね。

佐野 あまりに「ビジネス、ビジネス」と考えすぎていたら、こうした発想は出なかったかもしれません。もちろん楽ではなかったですが、ラテン文化の陽気な人たちだからやりやすかったですよ。「今度、ブラジル人のサッカー選手を紹介してくれよ」と軽く言ったら、清水エスパルスに所属していたシジマール選手やジュビロ磐田のドゥンガ選手を呼んできたり(笑)。

 彼らは「サッカー選手や芸能人だから自分たちとは別」といった感覚が全然なくて、みんなフラットに付き合うスタイルなんですよね。(後編に続く)

(えがみ・おさむ)1億円倶楽部主幹・オフィシャルインテグレート代表取締役。1967年生まれ。年収1億円超の顧客を50人以上抱えるFP。大手損保会社、外資系保険会社の代理店支援営業の新規開拓分野で全国1位を4回受賞、最短・最年少でマネージャーに昇格し、独立。著書に16万部突破『年収1億円思考』他多数。

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