政治・経済

 消費の飽和が常態化する中、大量生産・大量消費を前提に導入されてきた「マスマーケティング」という概念はもはや通用しない。今や消費者側の視点に立った「ダイレクトマーケティング」という発想こそが生産者側の成長戦略上、重要な役割を担う。

トライステージの強さの秘密〜妹尾勲CEOの理念は〝売り上げに責任を持つ〟こと〜

「売り上げに責任を持つ」を信条とするトライステージ妹尾勲CEO

「売り上げに責任を持つ」を信条とするトライステージ妹尾勲CEO

 小売り販売市場が横ばい傾向にある中、ダイレクトマーケティング市場における物販は、昨年、約6兆2千億円に達するなど堅調に市場を拡大している。

 これが意味することは、すなわち、これまでの作り手側本位な商品に消費者は飽き、欲しい商品を自ら探し購入する選択購買へと大きくシフトしている証左でもある。

 そんな消費動態の変化からメーカー各社も、今や潜在需要の掘り起こしを命題に、ダイレクトマーケティング型の商品開発に軸を移している。しかし、一方で、これらメーカー側は、マスマーケティング一辺倒で走ってきた弊害か、商品を開発、発売にこぎつけても、その商品特性を上手く消費者に伝えることができず、発売後、わずか数カ月で姿を消すようなケースも少なからず存在する。

 そんな企業の救世主的存在になっているのがテレビ通販をメーンにダイレクトマーケティング支援を実践するトライステージだ。同社の設立は2006年3月と歴史こそ浅いものの前期の売上高は338億円に上るというから、そのビジネスモデルが多くの企業の高い支持を受けていることが分かる。

 同社の強みは、テレビ通販に使用する番組放送枠を豊富に確保している点と10社以上のコールセンターとの提携による受注管理ノウハウを持っている点が大きいが、何よりも過去に蓄積された膨大な販売データから、その商品に最も適した販売戦略を構築できることにある。

 「ゴールデンタイム等、視聴率が高い時間に通販番組を流せば、たくさん売れるというものではないのです。視聴率と売れ行きに相関関係はあまり存在しない。人々の行動パターンに合わせた適切な放送枠で、いかに商品をPRするかが重要なのです」と妹尾勲CEOは語る。

 商品の特性に応じた最も効果的なマーケティングを実践するため、同社の保有するテレビ放送枠は月間で4万~5万枠に上るという。リスクを抱えても、ここまで膨大なテレビ放送枠を確保しているのは、クライアントの〝売り上げに責任を持つ〟という同社の覚悟に他ならない。

 「マーケティング支援というのは、本来的に言えば、クライアントの売り上げまでを保障しなければならないものです。ただ広告媒体を供給するだけでは、無責任と言われても仕方ない。売り上げを担保し、ウィンウィンの関係成立させることがわれわれのポリシーなのです」(同)

 同氏が現在のビジネスモデルに行き着いたきっかけは、大学卒業後に勤務した広告代理店営業職での、ある経験からだ。

 「私が担当していたクライアントから〝出稿はしたが、想定した売り上げに達しなかったので、広告費を半額にしてくれ〟と言われたのです。われわれはクライアントの了解を経て出稿したのですから言うなれば売れ行きうんぬんは別次元の問題、広告費の減額要求など言い掛かりにさえ感じました。しかし、よくよくクライアントの話を聞くと、以前に発行部数が変わらない他の媒体に出稿した時の売り上げに比べ、私が携わった時の売り上げが想定を大きく下回ったと言うのです」(同)

 なぜ発行部数がそれほど変わらない媒体で実売に大きく差が出たのか。その時、妹尾氏は媒体にも読者層など商品によって〝売る力〟に差が出ることに気付く。

 従来の広告の狙いは商品のネームと形状を告知・宣伝し、消費者の単純想起率を100%にするのが狙い。商品の認知度を高めるという意味では、販売の多寡に広告代理店は責任を取る必要はない。同氏の言う媒体の〝売る力〟を数値化している広告代理店もないし、媒体も知りたくないのが現実だった。

 「メディアごとに〝売る力〟を数値化することができれば、特にダイレクトレスポンス型の商品を販売しているメーカーにとっては最大の武器になる」と妹尾氏は直感、ダイレクトマーケティング支援の新部門を創設させ、責任者として目標に掲げた5年で売り上げ100億円を見事達成する。

 しかし、この事業は従来型の広告代理店業務とは似ても似つかぬ点も多く、同氏は今後の事業の広がりを考えれば独立は必須である決意し、上層部を説得し晴れて独立の道を歩むこととなった。

 部門の既存クライアントを持っての独立という背景もあり、トライステージの初年度の売り上げは147億円を記録、その後の売り上げも堅調に推移し、2年5カ月後の08年8月に東証マザーズに上場を果たす。〝売り上げに責任を持つ〟という理念は、口コミで拡大、既存クライアントからの紹介案件も増加し、多くの依頼を断るほどだったという。

トライステージの強さの秘密〜東日本大震災による転換期〜

 しかし、順風満帆だった同社の業務も現在、転換期を迎えている。潮目になったのは11年3月に発生した東日本大震災だ。同社のクライアントの健康食品や化粧品会社が圧倒的多数を占める。これら商品群は言うなれば嗜好品。大震災以降、メーカーの商品開発の動きが鈍化、それに引きずられるように、消費者のマインドにも陰りが見られるようになってきた。

 そこで、妹尾氏は次の一手として物販だけではなく、新たにフィットネスクラブやリゾートといった会員誘導型、言うなればサービス系商品を売ることを、次代の成長エンジンの1つに据える。

 「われわれのコアの強みは映像を見て、消費マインドを喚起するというクリエイティブ力です。このノウハウは会員誘導型のビジネスにも絶対に通用します」と妹尾氏は自信満々だ。

 第2ステージに突入した同社が、これまで培ったノウハウをいかに新分野に生かしていくのかに注目したい。

(本誌/大和賢治)

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