マネジメント

ろくに仕事もせずに社長や上司の悪口を言いふらし、労働者保護を盾に過剰な権利主張を繰り返す問題社員(モンスター社員)。そうした社員に及び腰になり、組織を壊滅寸前まで追い込む経営者。組織の「悪」を排除し、組織で働く1人ひとりが本来の力を発揮するには何が必要なのか。労働紛争予防解決のスペシャリスト・野崎大輔氏に聞く。(聞き手=大澤義幸)

組織崩壊へ一直線 人材の中でも最も問題となる反逆的破壊者

―― 今回からよろしくお願いします。「組織の悪を見逃すな」をテーマに、組織に影響を与える問題社員や経営者について掘り下げていければと考えています。早速ですが、ズバリ、組織の悪となる人とは?

野崎 開始1分でいきなり核心ですね(笑)。まず組織で働く従業員を9つに分類していきましょう。

人材マトリクス新 この縦軸に【会社への貢献度】を取ると、上位の〈貢献するゾーン〉にいるのが、(1)「経営者人材」、(2)「中核人材」、(3)「縁の下の力持ち」。この貢献度は、【会社の価値観や経営者の思いに対する共感度】の高さに比例します。

 (1)~(3)は【業務遂行能力・成果】の高い順です。次に貢献度の中位に、良いほうにも悪いほうにも〈流されるゾーン〉にいるのが、(4)諸刃の日和見主義者、(5)日和見主義者、(6)悪影響を受けやすい日和見主義者。下位の〈組織を乱すゾーン〉にいるのが組織の「悪」となる人たちで、(7)影響的破壊者、(8)破壊者、(9)反逆的破壊者です。

 ―― その中でも、組織に大きな悪影響を及ぼすのが反逆的破壊者ということですね。特徴はありますか?

野崎 もちろんありますよ。やるべき仕事をやらず、経営者への共感度も低く、「経営者が悪い」「給与が低い」と常に悪態をついています。そのくせ言葉巧みに仲間を洗脳し、反・会社の徒党を組んだりします。仕事のパフォーマンスの評価も、「自分は良いが他人はダメ」というのが、〈組織を乱すゾーン〉にいる人たちの特徴ですね。

――まるで日本にいて文句ばかり言うどこかの国の外国人たちのようですが、そんなに嫌なら自国に帰ればいい……ではなく、会社を辞めればいいのに。

野崎 自分の能力が低く、他の会社では通用しないと分かっているから辞めないんですよ。そうした能力の低い従業員のモチベーションを上げようとして、報酬を与えすぎるのも逆効果です。余計に辞めなくなりますから(笑)。仕事をしない人がいると、周りがその仕事を肩代わりしなければならず、真面目に働いている人ほど、「なんであんな奴に高い給与を払っているんだ。なぜ辞めさせないんだ」とバカらしくなる。組織のパフォーマンスは下がる一方です。

――負のスパイラルですね。そんな職場では他の従業員のストレスも大きそうです……。

野崎 経営者もイライラしますよ。そうならないためにも、経営者は反逆的破壊者には早めに辞めてもらうことです。その決断を先延ばしする経営者にも問題があるでしょうね。

――反逆的破壊者は特別だとしても、いわゆる問題社員が生まれやすい職場環境には特徴があるのでしょうか?

野崎 職場に従業員の行動規範を示すルールや規則がなかったり、甘やかしすぎると増長して問題社員化する傾向がありますね。また介護や保育など人員基準の設けられた業界では、創業から2年目くらいまでは労働問題が発生しやすい。人手を揃えたい時期なので、多少難ありと思える志望者も採用してしまうからです。入社後に十分留意して教育できればいいのですが、放任するから取り返しがつかなくなる。問題社員の見極めのポイントは、「会社の方針に従う姿勢があるか」。いつも反抗的な態度を取るような人は、どんなに仕事ができても組織に良い影響は与えないでしょう。

――そういう反逆的破壊者を見つけたときに、経営者や部門長はどう対応すればいいのですか?

野崎 最初にその気配を感じたときに、従業員の問題行動をきちんと指摘すべきです。それで何度指導しても改善されないなら、過去の履歴を基に退職勧奨を行います。退職勧奨は会社と従業員の双方の合意によって成り立つものなので、違法ではありません。もちろん退職勧奨を強要すれば違法なので注意は必要ですが、会社に反発ばかりする人は、自分に合う会社に行ってもらったほうが双方にとって良いはずです。それでも辞めないと言い張る人は解雇せざるを得ません。

退職勧奨や解雇というと、逆恨みされたくない、かわいそうといった気持ちに揺れる経営者もいますが、この場合、中途半端な優しさは逆効果です。これは個人の問題ではなく組織の問題なので、全体最適の視点から組織に支障が出るなら早めに対処する。例えば悪性のガン細胞が増殖し全身に転移すれば、命を落としてしまいますよね。そうならないためにも断固たる決意を持って、一刻も早い外科手術が必要なのと同じです。

―― 夫婦や恋人間の問題ではないですしね。問題社員にばかり時間をかけて優しくフォローして、他の真面目な従業員のケアができず、組織にマイナスの影響が出てしまったら確かに本末転倒です。

問題社員ではなく良い人材を基準に組織づくりを

―― 今は「働き方改革」の号令の下、「残業禁止」「会社は従業員にとにかく優しく」「注意もオブラートに包んで」といった風潮がありますね。世の中のブラック企業批判を免れる意味も大きいと思いますが。

野崎 それ、まったく逆ですよ。今はちょっと厳しく注意しただけでパワハラとか、精神疾患になったと言われる時代なので、従業員を叱れない、どう指導すればいいか分からないという管理職の声も実際によく聞かれます。でも、腫れ物に触るように神経質になる必要はありません。優しさは大切ですが、時には厳しさも大事です。

また「働き方改革」は業務の効率化や生産性向上を伴うものなので、本来は従業員が自ら仕事を創り出し、自ら仕事のやり方を考える必要がある。その意味では仕事は厳しさを増すはずです。そこを無視して、時短や残業なしなど制度ありきの改革を進めれば、すぐに業務が滞り、逆に組織全体のパフォーマンスを落としてしまいます。

―― 問題社員を叱れず野放しにしていると、有能な従業員にも悪影響を及ぼしそうですね。

野崎 有能な人材はバカらしくなって辞めてしまい、能力が低い人材だけが残る組織になりますね。従業員20~30人規模の企業ではトップの目が行き届くし、理念を共有して物事を進めやすいものですが、そうした企業でも労働問題が発生するときは、管理職が機能していないケースが多いですね。

―― 管理職不在の悩みは私も取材先などでよく耳にします。ただ、中小企業でも、最近「従業員の自主性に任せる」といって体のいい放任主義を取る経営者を見るようになりました。それはいいのですが、他力本願で仕事を任せきりの状況なのに、ちょっとでもつまずくと、全責任を押し付けて「あいつはダメだ」と言い始める。尊敬されない経営者の典型というか……。新しく入社してきた人はたまったものではないし、そうした経営者を見ている他の従業員の熱もどんどん冷めていくのに、経営者自身がそれに気づかない。以前は仕事ができない管理職の口癖でしたが、今は経営者がこれを言いますね。

野崎 よく見てますね。従業員を育てられない企業の経営者に多い口癖です。中途採用でも「会社を変えてくれるような自立している人が欲しい」という経営者ほど、その人自身が自立できていなかったりします。ないものねだりなんですよ。問題社員が生まれるのは会社にも落ち度があるからで、突き詰めていくと経営者にも問題があるからです。そういう経営者は他人に過剰に期待しがちで、最初は目をかけるのに、しばらくして自分の期待値よりも低いと感じる従業員には手のひらを返すように冷たくなる。だから尊敬もされず、孤立してしまうんです。成功している企業では、従業員はまず経営者に魅力を感じ、次第に組織や仲間に魅力を感じるようになります。魅力を感じるからこそ、定着率が高くなり、働き甲斐を見いだし、頑張ろうと努力するんです。

―― 要は期待のかけ方ですね。経営者が他責にしているようでは、誰もついていきませんよね。

野崎 経営者自身ができないことを他人に期待するのは悪いことではありません。期待されてやる気になる従業員もたくさんいます。もっとも経営では、「できる人もそうでない人もいかに生かすか」という視点を持ち、誰もが働きやすい職場環境を整えていくことが重要です。問題社員に基準を置いて足を引っ張られるのではなく、良い人材に基準を合わせて全体最適を図り、その上で目指す組織づくりをしていきたいものですね。

 

野﨑PHOTOCATCH(のざき・だいすけ)。日本労働教育総合研究所所長、グラウンドワーク・パートナーズ株式会社代表取締役、社会保険労務士。上場企業の人事部でメンタルヘルス対策、問題社員対応など数多の労働問題の解決に従事し、社労士事務所を開業。著書『「ハラ・ハラ社員」が会社を潰す』(講談社+α新書)など。

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