文化・ライフ

「仕事ではファッションが大事」と言えば、大事なのは中身だと反論されるかもしれない。だが、「仕事では印象(インプレッション)が大事」と言い換えれば、おそらく異論は少ないだろう。「ファッションとは、その人の内面、在り方を表すもの」と考えれば、そのプライオリティは高まるはずだ。ファッションスタイリストジャパン(FSJ)でスタイリストを務める吉川浩太郎氏が、ファッションとの向き合い方、具体的なテクニックなどを、ビジネスパーソンに向けて伝授する。

幅が広いオーダーメイドの世界

 オーダーメイドスーツと一言で言っても幅が広く、1人の職人が最初から最後まで手縫いで仕上げるフルオーダー、分業によって縫い上げていくイージーオーダー、いくつかのパターンに当てはめるパターンオーダーがあります。これらを全部ひっくるめて「オーダーメイド」と呼ばれることが多いので、その違いはよく知られていません。

 オーダーメイドのスーツを着ているという人を見て、既製品でももう少し良いものがあるのではないかと思わせるようなケースも時々あります。

 フルオーダーの場合、人気のある職人に頼むと何カ月も待たされることがあり、価格的にも高くなります。着る人に合わせてパーツごとの図面を引き、型紙を作成するところから職人が手掛けていくやり方です。

 イージーオーダーの場合は、何種類かある型紙のパターンから調整していきますが、かなり融通が利き、分業体制なのでフルオーダーよりコストが抑えられて納期も短くできます。

 パターンオーダーはコストも納期も最も手軽なのですが、サイズ調整などでかなり制約が多くなります。

 オーダースーツも価格破壊によってかなり手軽に買えるようにはなりましたが、品質や作り手側の負担を考えると、必ずしも良いことばかりとは限りません。ただし、たとえパターンオーダーでも、それまで既製服ばかり着ていた人が着ると、かなり良い物に感じられることもあるようです。

重要なのは「誰に作ってもらうか」

 フルオーダーはもちろんですが、イージーオーダーの場合でも、「誰に作ってもらうか」に大きく左右されます。採寸する人によって感覚が微妙に違ってきますし、買い手としては運任せになってしまう部分は否めません。

 とはいえ、まずは「オーダーだから良い」という感覚を捨てて、作り手を選ぶことを可能な限り心がけてください。最初は作り手に全て委ねるのも良いですが、コミュニケーションを取りながら、「この人に頼んでも大丈夫か」と考えることも大事です。

 あまりにも自分の意見を押し付けてきたり、逆に顧客任せにしたりする作り手だと、仮に失敗した時の後悔が大きくなるでしょう。雰囲気や会話の波長が合うかどうかといった感覚で構わないので、作り手として納得できる相手を選んでください。

 顧客サイドとしては、「オーダーだから絶対にピッタリのものが仕上がってくる」と考えがちですが、「作り手と一緒に育てていく」という意識を持ってほしいと思います。たとえ完ぺきに近い仕上がりでも、着ているうちに「ここを調整したい」という部分が出てくれば、次回はさらに良いものができる可能性が出てきます。

吉川さん写真吉川浩太郎のワンポイントアドバイス

不思議なもので、コミュニケーションで違和感のある相手にスーツをつくってもらうと、失敗する可能性が高くなります。「この人に作ってもらう」と納得して、失敗しても責任の半分は自分という意識を持っていたほうが、上手くいくことが多いのです。

 (よしかわ・こうたろう)1981年5月19日生まれ。東京都日野市出身。紳士服専門上場企業で人事採用や接客業務を経た後、イメージコンサルタントとしてのキャリアを基に依頼者独自の良さを引き出すコーディネート事業を展開。プライベートカジュアルからスーツスタイルまで幅広い知識・提案に定評がある。化粧品会社、大手建機会社、生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会(公益社団法人JAIFA)等で30~100名規模のファッション研修に携わっている。

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