政治・経済

 第43回経済界大賞は経団連の榊原定征会長に決定した。榊原会長が歴代会長と比べて突出しているのは、政権との距離の近さだ。

 榊原会長は「政界と経済界は一定の距離を保ち切磋琢磨しあうのが健全な姿」と言いながらも、「でも今は平時ではなく難問が山積している。日本丸が嵐の中を航海しているのに船長と機関長が喧嘩をしていては沈んでしまう。ここは手を結んで何としても安全に岸にたどりつく。そのためにも経済界と政界は同じ方向を向いていなければなりません」(2017年2月7日号掲載のインタビューより)とその理由を説明してきた。そのかいあってか、日本経済は徐々にではあるが力強さを取り戻しつつある。

 GDPは伸び続け、雇用環境は一昔前とは打って変わって超売り手市場になっている。この景気好転に経済界が果たした役割はけっして小さくない。半年後の5月に丸4年の任期を迎える榊原会長に、経団連が目指してきたもの、そして日本経済再生のために必要なことを聞いた。聞き手=関 慎夫 Photo=佐藤元樹

政策提言だけでなく実現のために行動する

201802SAKAKIBARA_P01

さかきばら・さだゆき 1943年生まれ。67年名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了後、東レ入社。96年取締役、98年常務、99年専務、2001年副社長を経て02年社長に就任。10年会長、15年から相談役最高顧問。14年から第13代経団連会長を務めている。

―― 榊原さんが経団連会長に就任して3年半がたちました。慣例では、あと半年で任期を迎えます。これまでを振り返った感想を教えてください。

榊原 3年半前に会長に就任した時に掲げたのが、「ポリシー&アクション」というスローガンでした。

 経団連とは、政策提言を行う集団です。それも個別業界の利益を追求するのではなく、経済政策や社会保障政策などの国策を提言する。ただし、提言してそれで終わりではなく、その政策を実現するために行動する。それが経団連です。

 実現のためには政治と経済の連携が不可欠です。私は政府のさまざまな会合、例えば経済財政諮問会議や財政制度等審議会、未来投資会議、人生100年時代構想会議などに経済界の代表として出席した際、安倍首相や政府に直接提言できる立場にあります。こうした場を通じて安倍首相や政府に対して政策を実現するように働きかける。これを就任以来心掛けてきました。

 政治と経済は車の両輪です。政治が右輪なら経済は左輪、それをつなぐ軸が政策です。政治と経済にはそれぞれ役割がありますが、同じ方向を向けば前に進むことができる。ところが向きが違うとくるくる回ってしまう。安倍政権発足からの5年間、政治と経済が同じ方向を向き、歩調を合わせてやってきました。

―― その成果が出始め、デフレ経済もようやく出口が見えてきました。

榊原 デフレ脱却、経済再生を実現するには、あらゆる政策・取り組みを総動員しなければならないと訴えてきましたが、こうした手立てが結実しつつあります。

 経済指標からもそれは明らかです。GDPが7四半期連続でプラス成長となり、2017年のGDPは540兆円を超えそうです。5年前に比べ50兆円も増えています。それ以前の20年間、ほとんど変わらなかったことを考えれば大きな変化です。

 景気の拡大局面はこの11月で60カ月連続となり、1965年から始まったいざなぎ景気を超えました。私が社会人になったのは、いざなぎ景気の真っ最中でしたが、あの頃の日本経済は毎年2桁成長を果たしていました。現在の成長率は1%台の低い水準ですが、それでも明らかに今までとは違う形になってきました。

 経済4指標と呼ばれる消費者物価指数、GDPデフレーター(全体の物価動向)、GDPギャップ(需要と供給のバランス)、単位労働コスト(人件費の動向)は、少し前まですべてマイナスかゼロ程度だったものが、今ではすべてプラスです。

 また、企業業績も好調で、過去5年間で企業の利益は26兆円以上増えました。税収も5年前より22兆円以上増えています。有効求人倍率も、安倍政権ができるまでは0.83でしたが、今では1.52です。少し前まで就職したくてもできなかったのに、今では採用したくても採用できないという状況に変わってきました。それはそれで別な課題ですが、このことからも分かるように、既にデフレとは言えない状態になっています。

―― 経団連としてはどのような取り組みを行ってきたのですか。

記事の続きは雑誌『経済界』でご覧いただけます

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年8月号
[特集]
パナソニック新世紀

  • ・総論 家電事業でもB2Bでも根底に流れる「お役立ち」
  • ・樋口泰行(コネクティッドソリューションズ社社長)
  • ・B2Bに舵を切るパナソニック
  • ・パナソニックのDNA 家電事業の次の100年
  • ・本間哲朗(アプライアンス社社長)
  • ・パナソニックの家電を支えた“街の電気屋”の昨日・今日・明日
  • ・テスラ向け電池は量産へ 成長のカギ握る自動車事業
  • ・パナソニックとオリンピック・パラリンピック

[Special Interview]

 津賀一宏(パナソニック社長)

 変化し進化し続けることでパナソニックの未来を創る

[NEWS REPORT]

◆商品開発に続き環境対策で競い合うコンビニチェーン

◆サムスンを追撃できるか? ようやく船出する東芝メモリの前途

◆スバル・吉永泰之社長はなぜ「裸の王様」になったのか

◆「ニーハオトイレ」は遠い昔 中国を席巻するトイレ革命

[政知巡礼]

 木原誠二(衆議院議員)

 「政治が気合を持って、今のやり方を変えていく覚悟を」

ページ上部へ戻る