政治・経済

 楽天が携帯電話事業進出を発表し、「第4の携帯キャリア誕生」などと騒がれているが、投資ファンドから巨額の資金をかき集めた挙句にソフトバンクに売り抜けたイー・アクセスの千本倖生会長(当時)の二の舞を演じるつもりはないようだ。

 イー・アクセスはソフトバンクやKDDIに対応しようと基地局作りを積極的に行ってきたが、三木谷浩史・楽天会長兼社長は、設備投資は最低限にとどめてNTTドコモの回線や基地局を安く借りて低料金サービスで先行3社のシェアを食おうという腹づもりのようだ。

 楽天は現在、大手キャリアから回線を借りてサービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)で、2017年9月には「フリーテル」を展開する同業のプラスワンマーケティングを買収したばかり。しかし、MVNO市場は安売り競争や通信速度面などサービス品質もまちまちで、成長は頭打ち状態。ネットショッピングで優位性を持つ楽天がMVNOから脱皮を図り、顧客囲い込みを目指して「第4のキャリア」の肩書きをほしがるのも無理はない。

 しかし、そのやり方は狡猾だ。

 「楽天が携帯キャリア事業に新規参入するらしい」。こんな噂が17夏から永田町で流れていた。新経済連盟を立ち上げた三木谷氏は安倍晋三首相と近く、ある自民党参議院議員によると「三木谷が官邸に電波の割り当てを頼んでいた」。

 しかもその裏には、鵜浦博夫・NTT社長もからんでいるというから驚きだ。鵜浦氏はかねて「5G(第五世代携帯電話)の基地局は共用すればいい」を述べ、KDDIやソフトバンクに呼びかけている。設備投資で先行3社に追いつくことが不可能な楽天にとってはまさに追い風。電波さえ総務省から割り当てられれば、後発キャリアも少ない設備投資で先行各社の全国ネットワークを使えることになる。

 この構想に総務省とMVNOである楽天に回線を貸しているNTTドコモは蚊帳の外だった。総務省にとっては、経営不振のMVNO事業を救済してくれた楽天に恩義を感じているものの、頭を通りこして官邸に電波乞いをした三木谷に対する苛立ちがある。

 NTTドコモ幹部は「(楽天に対する)ドコモの支援が取りざたされているけれど、全く発表まで知らなかった。持ち株は知っていたようだが」と政府とNTT、新経連の空中戦をにおわせる。

 総務省は早ければ1月中にも「第4世代(4G)移動通信システムの普及のための特定基地局の開設に関する指針案」に基づく新たな周波数帯の認定申請受け付けを始めるが、楽天が目指す携帯電話事業者の姿は既存の事業者とは随分異なって見えそうだ。

 

【楽天】関連記事一覧はこちら

【ソフトバンク】関連記事一覧はこちら

【KDDI】関連記事一覧はこちら

【NTT】関連記事一覧はこちら

【霞が関番記者レポート】の記事一覧はこちら

【政治・経済】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長プロフィ…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

一般には馴染みが薄い産業廃棄物処理の世界。古い慣習が残る業界を、ITによって変えようとしているのがトライシクルの福田隆社長だ。業界の老舗企業がテクノロジー導入に舵を切った背景と今後の展望を聞いた。(吉田浩) 福田隆・トライシクルCEOプロフィール   産廃処理で「B to B版メルカ…

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る