マネジメント

右肩下がりの業種であっても、やり方ひとつで大きな成功、成長を成し遂げることができる。それを証明してみせたのが、Best Delight Groupの桝村健右社長だ。彼の取り組みには、同業だけでなく異業種にとっても大きなヒントが詰まっている。

新しい手法が次々と成功を呼び込む

201803BESTDELIGHT_P01

株式会社Best Delight Group代表取締役 桝村健右(ますむら・けんすけ)

 レジャーホテルという業態を色眼鏡で見る人は少なくないかもしれない。事業として見ても業界全体が1990年代後半から右肩下がりで、これから先の展望も見いだしにくい。ところが、15年ほど前に十分に伸びしろがあり、チャレンジしがいがある業態だと考えた1人の大学生がいた。その理由は、レジャーホテルの部屋はどんなホテルよりも広く、設備は豪華なのに料金は格安だから。これはレジャーホテルに対する固定観念が生み出している現象で、その固定観念を覆すことさえできれば、大きなビジネスになると考えたのだ。大学を卒業した彼は、外資系の大手会計コンサルティングファームに入社する。いくつかのビッグプロジェクトにも参画してビジネスセンスを身に付けた彼が、3年間のサラリーマン生活を経て会社を辞め、念願のレジャーホテル事業に乗り出したのは2008年。現在では「Best Delight HOTEL&SPA」グループ全27店舗を束ねている桝村健右社長がその人だ。

 「起業した当時も現在もそうですが、この業界には何かを変革しようとする経営者がほとんどいません。私のスタートは、買収した京都府福知山市のロードサイドにある小さなホテルでした。自らリニューアルを手掛け、アメニティーも当時の人気アイテムを網羅する充実した品揃えを用意しました。また、当時は全く考えられていなかったクーポン券を発行するなど、これまでのレジャーホテルには絶対にない新しいサービスを次々と取り入れた結果、半年後には単月の黒字化に成功し、あっという間にエリアナンバーワンのレジャーホテルに成長したのです」

 1軒目の成功は金融機関の信用も得ることとなった。2軒目は金融機関からの紹介物件だったそうだ。紹介されたのは、大阪市桜ノ宮にある半ば不良債権化していたホテルだったが、1軒目同様に飛び抜けたサービスを投入することで見事に立て直しに成功した。自らの考えが正しかったことを証明した桝村社長は、ここまでで得たノウハウを水平展開し、その後も毎年のように新しいホテルを立ち上げ、現在は売上高30億円に達するグループに成長させた。

 自らを業界の異端児と称する桝村社長は、ほかでは絶対にやっていないハードとソフトに徹底的にこだわっている。ホテルを改装する際には設計事務所に丸投げするのが一般的という業界の中で、壁紙一つから自分で選ぶ。そんなホテルの中には、2メートルのサメが泳ぐ水槽や、ゴルフシミュレーター、ビリヤード台などが置かれている。どんなホテルにもない設備を用意する、それが彼のポリシーだ。それは従来のレジャーホテルでは考えられない共用スペースを設けるところまで広がった。共用スパや共用ダーツ場、バリエステサロンの併設など、『るるぶ』や『anan』にも取り上げられるほどの、レジャーホテルとは思えない設備にリピーターが続出しているそうだ。

駅前1等地にチャレンジし業界全体を変革していく

 そんな桝村社長の次なるチャレンジは、新しい業態である「ビジラブホテル」の立ち上げだ。駅前の1等地にあるビジネスホテルを買収し、ビジネスユース、カップルユースだけでなくあらゆる客層のニーズに応えられるホテルを目指している。

 「ラブホテル街にあると、どうしても一般のお客さまは入りづらくなります。どれほど素晴らしい設備を備えていても、体験していただくことが難しくなってしまう。駅前にあれば、誰でも何時でも気軽に訪れてもらうことができます。全ての大人が楽しめる空間づくり、それが私の目指すところです」

 Best Delightグループのホテルは、フードメニューも充実している。グランドメニューは、一流レストランに勤務経験のあるシェフを招き開発したものだ。その味は、専業のレストランにも引けを取らないおいしさで、顧客からも大好評だという。

 また、接客にも心を砕いている。現在でもスタッフ全員が制服を着用しているのは当たり前で、サービスパーソンとしての社員教育を徹底して行っているそうだ。

 「どこにもない設備、おいしい料理、しっかりとしたサービスがあれば、お客さまは必ず集まります」

 駅前立地であれば、パーティーや女子会などの多人数用途としても使いやすく、新しいエンターテインメントスペースとしてのニーズを掘り起こすことも可能になるだろう。

 ここまでで、次のステップに進むための足場固めはできた。確かな勝算をもとに、今年から「ビジラブホテル」へのチャレンジを始めたいと桝村社長は熱い想いを語る。

 「今後は、首都圏を中心とする関東地区にも本格的に進出していきたいと考えています。レジャーホテルには時間帯規制があるテレビ広告も自由に出せるようになりますし、金融機関の融資条件も緩和される。『ビジラブホテル』が事業の好循環を生み出すエンジンになると確信しています」

 次々と行動を起こす桝村社長の動機には、変わろうとしない業界に対するいら立ちも少なからず含まれているようだ。しかし、桝村社長は「ビジラブホテル」が成功すれば、業界全体が少し変わるのではないかという期待感も持っている。

 「個々の取り組みの成果は第三者には見えにくい。でも新しい業態として成功すれば、追従してくる人が出てくると信じています」と、業界全体の大きな変革を目指す桝村社長は笑顔で締めくくった。

 

株式会社Best Delight Group

  • 設立/2008年
  • 資本金/1000万円
  • 売上高/30億円
  • 従業員数/約500人(グループ全体、パート・アルバイト含む)
  • 事業内容/ホテル経営・運営およびコンサルティング業、不動産売買・仲介およびコンサルティング業
  • 所在地/大阪市都島区
  • 会社ホームページ/http://best-delight.com

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

金利固定化の方法を知る

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メーン銀行との付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

金利引き上げの口実とその対処法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

所得税の節税ポイント

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

固定資産税の取り戻し方

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

人を育てる「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手に育成するコツ

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

部下の感情とどうつきあうか

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

“将来有望”な社員の育て方

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

201710_KEIZAIKAI_P043_GLOBIS_CATCH

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年6月号
[特集]
なぜ、あの人についていくのか 求心力の秘密

  • ・松本 晃(カルビー会長兼CEO)
  • ・木股昌俊(クボタ社長)
  • ・迫本淳一(松竹社長)
  • ・水田正道(パーソルホールディングス社長CEO)
  • ・辻 発彦(埼玉西武ライオンズ監督)

[Special Interview]

 永守重信(日本電産会長兼社長CEO)

 売り上げ10兆円を目指す 働き方改革と人材育成の在り方

[NEWS REPORT]

◆不祥事続出でも企業が仮想通貨に群がる理由

◆通信事業親子上場に踏み切るソフトバンクの思惑

◆コーポレートガバナンスの呪縛〜お家騒動はなぜ繰り返されるのか〜

◆欧米名門大学への登竜門 ボーディングスクールが注目される理由

[特集2]

 働き方改革の闇

ページ上部へ戻る