経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

感謝する心、諦めない心が事業成功の礎 今は元気な女性が支える社会づくりに挑戦――磯上恵美子(イー・エム・アイ代表取締役社長)

イー・エム・アイ代表取締役社長 磯上恵美子氏

18歳で九州福岡から神奈川に出てきて以来、事業家としての歩みを続けてきたイー・エム・アイの磯上社長。彼女の激動の半生には、多くの学びがある。そして今、彼女の目は将来の日本を支えるため、元気な女性を生み出すことに注がれている。

まず感謝されることそれが仕事の原点

株式会社イー・エム・アイ代表取締役社長 磯上恵美子(いそがみ・えみこ)

株式会社イー・エム・アイ代表取締役社長 磯上恵美子(いそがみ・えみこ)

30年以上前、筑豊炭鉱のまち福岡県飯塚市に1人の少女がいた。両親の離婚で迎え入れた義母との折り合いが良くなく、ラーメン店を営む伯母に養われながら中学校に通わせてもらった。毎日店を手伝っていた彼女が1人で店番をしていたときに1人の客が訪れた。ラーメンづくりはしたことがなかった彼女の「ラーメンは注文しないで」との願いも虚しく客はラーメンを注文する。つくり方だけは教えてもらっていたので、生まれて初めてつくったラーメンを出すと、「まずい」と怒られるのではないかという心配する彼女の目の前で客はスープまで全部飲み干し「うまかったよ、ありがとう」と言ってカウンターに代金の180円を置いて店を出ていった。

「このときに『お客さまに感謝されることで初めてお金がついてくる』ことを理解しました。お金を先に考えると仕事はうまくいかない。感謝してもらうことを先に考えることが仕事の全てです。これが私の仕事に対する原点です」と、かつての中学生、磯上恵美子社長は語ってくれた。

18歳で福岡から横浜に出てきた彼女は、福岡と異なり深夜でも人通りが絶えない横浜を見て驚くが、遅い時間でも食事ができる店があれば喜ばれるに違いないと考えた。しかし知る人もいない、お金もない18歳の少女が店を出すのは不可能に近い。手書きの計画書を手に不動産屋を巡っては安い物件を紹介してほしいと頼む毎日。彼女の熱意を認めたある不動産屋が安い物件や内装業者なども紹介してくれた。資金は東京に住む伯母が家を担保にして借金して融通してくれた。そうして、川崎の京町に24時間営業の軽食カフェを出したのが彼女の事業家人生のスタートだった。

「これまで、事業の節目で必ず良い縁が私を支えてくれました。でも今思い返してみると、それは私がどんなときでも決して諦めなかったからかもしれません。単に幸運だったのではなく、しがみついて踏ん張ることで縁が訪れてくれた。私は社員や身近な人たちに、このことをいつでも説いています」

立地は決して良くなかった1店目だが、徐々に客が訪れだし「川崎の七不思議」と言われるくらいの繁盛店になる。余勢を駆って2店目も成功させた彼女は、アパレル分野に進出。オリジナルブランドを立ち上げ、髙島屋や三越にも口座を持った。ここでも訪れた縁が後押ししてくれた。売り上げトップになるまで順調に成長させていたが、ある日百貨店の集客力が落ち始めていることに気付く。実はバブルが弾ける直前だったのだ。日本中の誰しも崩壊など考えもしない中で自分が得た嫌な感じを信じてアパレルからの撤退を決意する。アパレルは常に1年先の、膨大な量の在庫を抱える業界だ。磯上社長は、製造を止め催事専門に徹してその時あった在庫全てを売り切ることにした。その直後にバブルが崩壊する。多くのアパレル業者が売れない在庫を抱えて倒産する中、見事な引き際で危機を切り抜けたのだ。

女性が活躍できる元気な社会を目指す

類まれな感覚でバブル崩壊の影響を避け、さらなる飛躍を目指していたとき、身に覚えのない借金の返済を求められる。当時のパートナーが無断で数億円もの借金をしていたのだ。磯上社長は、福岡を出てから蓄えた資産全てを手放し返済に充てた。

しかし諦めない彼女は、事業家として第2のスタートを切る。それが、それまでは素人だった不動産業を手掛けるイー・エム・アイ。勧めてくれたのは銀行だったそうだ。

「当時、私の周りにはバブル後遺症で苦しむ飲食店や、競売物件の運営に困っている地方の資産家が多数いました。人のことを心配する余裕がないはずなのに、飲食店の再生や競売ビルのリーシングの手伝いを自分ごとのように行っていました。それを見ていた銀行が『磯上さんには不動産のコンサルティングが向いている』と勧めてくれたんです」

「ものすごい方向音痴」だったから考えたこともなかった不動産業でも彼女の原点である「感謝されることをまず考える」が成功に導く。彼女のアイデアは不良債権となったビルやホテルを次々と再生させていく。

「事業はシンプルです。どうすれば少ない予算でお客さまが感謝してくれるか、それがしっかりできれば必ず業績は伸びていきます」

磯上社長にはもう1つ事業に対して「女性」という視点がある。

「男性と女性は求めるモノが本質的に異なります。そして女性が好み集まる事業やサービスには、男性も集まってきますが、その逆はあり得ないんです。私は全ての事業において、女性目線を大切にしています」

磯上社長は女性だが、全ての女性が同様の発想をするとは限らない。どちらかというとこれまでの女性経営者には、男性に伍していくためあえて男性の視点で考える人が多かったようにも見受けられる。

自らが女性であることを生かし、大切にする磯上社長。これからの日本は、女性がもっと自立できる社会でなければいけないとも説く。

「日本が将来にわたって元気であるには、未来の日本を担う今の子どもたちが元気で笑顔でいなければならない。そして子どもの笑顔は、お母さんが元気でなければ生まれません。私自身もそうでしたが、家庭にもいろんなことが起きる。お母さんが元気でいつづけるためには、自立することが必要なんです」

磯上社長は女性がいつまでも元気でいられることを願い、美容サロンの経営や女性だけが入居するシェアハウスの運営、メンタル面でのセミナー開催など実に多様な事業を展開して女性をサポートしている。2018年以降は不妊女性のサポート、子育て支援にも取り組むという。

「人から感謝されること、それさえ考えていれば、私はどんなことでも頑張ることができます」

筑豊で育った少女は、横浜から日本中の女性が活躍できる社会をつくることで、日本の未来を支えようとしている。

株式会社イー・エム・アイ

  • 設立/1997年1月
  • 資本金/5000万円
  • 事業内容/不動産の仲介・売買、不動産の物件管理・テナントリーシング、不動産コンサルティング、不動産信託受益権の売買および媒介、不動産取得による資産運用
  • 所在地/横浜市中区
  • 会社ホームページ/http://emi-grp.co.jp/

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