国際

谷内正太郎氏は首相の信頼が厚く、高潔な人物

 

 新帝国主義的な構造転換を遂げる国際社会に対応すべく、日本政府も必死の努力をしている。国家安全保障会議(日本版NSC)の創設もその1つの試みだ。NSCの本質は、日本が戦争に参加するか否かの政治意志を決断することだ。このNSCを事務的に支える国家安全保障局長の人事を安倍政権が内定した。
 〈安倍政権は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)の事務局となる国家安全保障局の初代局長に、元外務次官の谷内正太郎(やちしょうたろう)・内閣官房参与(69歳)の起用を決めた。来年1月にも発足する組織のトップとして首相への説明、緊急事態への対応などを担う。/谷内氏は安倍晋三首相の外交ブレーン。第1次安倍内閣でも外務次官として、戦略的互恵関係を掲げる首相の日中外交を支えた。民間企業や大学で役職に就いているなどとして就任に難色を示していたが、首相側の強い要請で受け入れに傾いた。〉(11月12日『朝日新聞デジタル』)

 谷内氏が安倍首相の要請を受け、国家安全保障局長に就任することになり、本当によかった。その理由が2つある。

 第1は、安倍首相の谷内氏に対する信任がきわめて厚いことだ。大日本帝国憲法下の統帥権をNSCが持つ。日本の命運を担うこの機関を事務的に支える安全保障局長には、外交、安全保障に関する識見を有するとともに首相と一体になって国益について考え、行動する人物が必要だ。谷内氏はまさにその条件を満たしている。

 第2は、谷内氏が吏道(官僚としての正しい立ち居振る舞い)をわきまえた高潔な人だからだ。かつて鈴木宗男氏が政権中枢にいて、外務省に大きな影響力を行使していたときに、圧倒的大多数の外務省幹部が鈴木氏に擦り寄って、歯の浮くようなお世辞を言って、自らの栄達を図った。当時、谷内氏は総合外交政策局長であったが、鈴木氏に阿るような言動を一切しなかった。同時に対ロシア外交や北方領土交渉などで鈴木氏の主張に道理があると考えるときは、それを採用した。

 田中真紀子氏が外相に就任し、恣意的な人事や発言で外交政策を混乱させたときに、多くの外務省幹部がサボタージュをした。谷内氏だけが誠実に田中氏を支え、日本外交に与える悪影響を体を張って極少化する努力をした。

 鈴木宗男疑惑の嵐が起きたときの谷内氏の立ち居振る舞いも立派だった。かつて鈴木氏に擦り寄った外務省幹部が文字通り涙を浮かべ「宗男にひどい目に遭わされた」「宗男は外務省の癌だ」と激しい鈴木バッシングを行った。谷内氏はそのような人たちとは一線を画し、鈴木バッシングに一切加わらなかった。

 

谷内正太郎氏による北方領土問題の解決案提示に期待

 

 谷内氏の行動原理は国益だ。それだから筆者は谷内氏を心の底から尊敬している。国際情勢が帝国主義的傾向を強める中で、日本国民と日本国家のために、谷内氏にはもう一働きしてほしいと思う。

 谷内氏は、北方領土交渉についても意欲的だ。11月11日のMSN産経ニュースはこう報じた。

 〈谷内氏、北方領土「引き分け」論に賛同

 谷内正太郎内閣官房参与は11日、都内で講演し、プーチン露大統領が北方領土問題に関し「引き分け」との表現で解決に意欲を示したことに賛同する考えを示した。

 谷内氏は「『小さい2島(色丹島と歯舞群島の返還)で手を打つ引き分けには乗るべきではない』と言う人がいる」と紹介した上で、「どういう形の引き分けならば、両国民を説得する内容になるか話し合おうとロシア側に持ちかけていくべきだ」と主張した。〉

 プーチン大統領は、一定の譲歩をして北方領土問題を解決する用意がある。しかし、ロシア外務省が慎重で、妥協案を作成しようとしない。谷内氏が中心になって、日本の国家安全保障の観点から、プーチン大統領が「これならば、『引き分け』になる」と心を動かすような、解決案を政治主導で作成することを筆者は期待している。プーチン大統領が日本側提案に興味を示せば、ロシア外務省も重い腰を上げざるを得なくなる。

 

筆者の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年6月号
[特集] 進化するリーダーシップ
  • ・あなたは北風、それとも太陽?
  • ・小路明善(アサヒグループホールディングス社長兼CEO)
  • ・鈴木貴子(エステー社長)
  • ・千葉光太郎(ジャパン マリンユナイテッド社長)
  • ・二木謙一(國學院大學名誉教授)
[Special Interview]

 中村邦晴(住友商事会長)

 「正々堂々と向き合えば、仕事は人を幸せにする」

[NEWS REPORT]

◆パイオニアに続きJDIも 中国に買われる日本企業の悲哀

◆会社はだれのものなのか サイボウズと株主がつくる“共犯関係”

◆24時間営業はどこへ行く コンビニ業界未来予想図

◆トヨタとホンダが手を組み参戦 「MaaS戦争」いよいよ勃発

[特集2]ブランド戦略 新時代

 技術やデザインだけではない ブランドとは商品の哲学だ

ページ上部へ戻る