マネジメント

「最近の若いやつは根性が足りない。俺が若かった頃はどれだけ苦労したか」。今と昔でまったく違う時代背景や労働環境を省みず、過去の自分自身の美化にひた走る、名づけて「恐竜上司」。その言葉を聞かされる若手や新人は、ただただうんざり。労働問題の現場で今日も奮闘する野崎大輔氏が今回も鋭く切り込みます。(聞き手・文=大澤義幸)

労働問題の背景 「最近の若いやつは」は上司自身の過去礼賛

――始まりました! ついに第3回、今回は誰もが1度は聞いたことのある「俺が若かった頃は」を自慢する上司たち! この言葉が口癖の本人たちには耳が痛い話かもしれませんが、野崎さんはそんな人たちを「恐竜」と呼んでいます! では野崎さん、今回も元気よくどうぞ!

野崎 なんでそんなにテンション高いんですか(笑)。大澤さん、普段と全然キャラ違うでしょ。

――はい、ネットの世界ですし、明るいキャラで行こうかな、なんて。さて、本題に入りますが、「最近の若いやつは」「俺が若かった頃は」と話す上司は、どの組織にも必ずいますよね。経営者でもいると思いますが。

野崎 いますね。私のコンサル先などを思い浮かべてみても、「最近の若いやつは」が口癖の上司に共通するのは、「今」ではなく「過去」ばかり見ていて仕事ができないことです。本来、上司の立場にいる管理職の方は、部下一人ひとりの個性や人柄に合わせて指導や教育を行います。ところがこの手の上司は、気合いだ、根性だ、残業しろと、今の労働環境を無視し、過去の環境を基準に自分の価値観を押し付けてきます。「うつ病なんて甘えだ。ゆとり世代は弱い」という人もそう。昔と今ではストレス環境も違うので、強いか弱いかは一概には決めつけられません。時代は変わっているのに昔の価値観で生きている、だから「恐竜」なんです。環境の変化に対応できない恐竜は絶滅するしかありません。

――なるほど言い得て妙ですね。「最近の若いやつは」と言う上司は、部下を褒めることもないですよね。

野崎 褒めませんね。正しいのはすべて「俺様」ですから。自分本位で自分大好き、自己評価が異常に高く、自分以外の人の言動は全否定して、ダメ人間扱いします。

――その上司が一番ダメ人間ですよね……。

野崎 そのとおり。この発言は、できる上司かどうかを見極めるバロメーターになります。一概には言えませんが、50代以降の世代に多く見られますね。

――その世代の人たちに多いのは、昔はどの企業でも年功序列・終身雇用の縦社会があって、頑張れば上に行けると自分なりに頑張ったけれど上がれなかった、あと一歩で成功をつかめなかったといった苦い経験があり、過去の自分を美化してしまっているのではないでしょうか?

野崎 それもあるかもしれません。よく居酒屋で武勇伝を語る人がいますよね。「俺は昔は悪かった」とか。

――どうでもいいですよね(笑)。

野崎 どうでもいいです(笑)。今が良ければ武勇伝を語る必要はないわけですし。能ある鷹は爪を隠すものです。

――「最近の若いやつは」発言を聞いた若手たちはどんな反応をするのでしょうか? 私自身の経験からは、「うんざりする」に尽きますが。

野崎 企業の若手社員に話を聞くと、表面的には「すごいですね」とうまくやり過ごしていますね。しかし上司に面と向かっては言いませんが、内心は「上司自身はやらないのに、なんで俺たちにばかり仕事を押し付けてくるんだ」と不満を募らせています。あとは、「それはいつの時代の話ですか? 昭和ではなく、今は平成ですが」と冷めた目で上司を見ていますね。それが2度、3度と続くと、言われた瞬間に「聞かないスイッチ」が入り、本来はためになることすら学ぶ気が失せ、右から左に聞き流すようになります。上司がそう発言するほど裏ではバカにされますね。

――上司と若手の間に温度差、溝が生じる瞬間ですね。若手からしたら上司の実績を知らないわけですし、ただ自慢したがる人に見えてしまいますよね。上司本人はそれに気づかないものでしょうか?

野崎 そういう上司は自分に都合の悪いところを見ないので、まず気づきません。そうなると、経営者や経営幹部がその上司を注意するか、外部のコンサルタントなどが忠告するしかない。けれども、もし経営陣も恐竜ばかりで固められていたら……。そんなジュラシック・パーク的組織に未来はないですね。

――チーン……。普段の職場では言わなくても、飲むと気が大きくなって急にそういう話をする上司もいますね。

野崎 あれは一番ダメです。居酒屋での注意は、気が緩んだ上司の自己満足的な「俺様リサイタル」でしかない。それで割り勘だったら論外ですね。そもそも大澤さんは「俺が若かった頃は」と過去の話をしますか? 私はまったくしません。

――「最近の若いやつは~(否定)」の文脈ではしないですね。私が話すときは、過去に勤めたことのあるブラック企業を例に挙げ、「こんなひどい会社で働いていたけれど、今では考えられないよね。当時は若いから気づかなかったし体力もあったけど、洗脳されてるのと一緒だよ(笑)」と面白おかしく話すことはありますが。もしくは、「俺なんて全然ダメです」という若手に対して、「私が若かった頃よりずっと頭はいいし、仕事もできるよ」と褒めるか、ですね。もちろん本心からの言葉ですよ。

野崎 それこそが、今を見ているからできる褒め方であり、フォローです。つまり「最近の若いやつは」は、今を見ていればまず出てこない言葉なんですよね。

労働問題の将来 尊敬されない恐竜上司に教育はできない

――「最近の若いやつは」と話す上司に対し、会社はどう接すればいいのですか?

野崎 仕事はできて会社に役立つ人もいるでしょうし、その言葉を発するだけでは解雇事由にもならないので、一番良いのは部下を付けないことです。部下の教育には不向きなので、本人が単独でできる仕事に就けるのがいいでしょうね。

――極論に聞こえますが、やっぱりそうなりますよね。恐竜が若手を教育・指導する組織では、育つのも恐竜ばかりで、優秀な人材を育てるなどは期待できませんし。もっとも、若者のほうが賢いから、教わることをスルーすることで生き延びる知恵を身につけるのかもしれませんが。

野崎 教育という視点から考えると、昔と今では若者のモチベーションの上げ方も違います。昔は大量生産・大量消費でモノをつくれば売れる、時間をかけて頑張れば売れるという、わかりやすい状況がありました。でも今は消費者の価値観が多様化し、モノも溢れるほどある。売り手の労力が売り上げに比例せず、こうすれば売れるという成功法則もありません。そうした中、若者はモチベーションの源泉をお金やモノではなく、精神的充足や人と人とのつながりに求めるようになっています。

――企業でも上司とのつながりが強ければ、若者は多少嫌なことがあっても会社を辞めません。つながりが希薄だからすぐに辞めてしまうんですよね。あとは、バブルを経験していない私たちもそうですが、若者は豪遊する経験をしたことがないので、そこを目標とするイメージを持ちづらいのかもしれませんね。

野崎 よく言われますが、今の若者のモチベーションを上げるキーワードは、「人のために」「成長」です。したがって、企業はその後押しをする教育体制を整えれば、モチベーションの高い人材を育てられるわけです。

――確かに「世のため、人のため働く人になりたい」「社会起業家になりたい」と考える若者は多いですね。みな高い目標を掲げて自ら努力しています。悲惨なのは、そうした若手の意図を読み取れずに、恐竜上司が主導して若手教育を行う企業ですね。当然、その企業は良かれと思って教育しているわけで、実は若手に伝わっていないことに気づかない。「良い若手研修をした」という会社の自己満足で終わってしまう。

野崎 もはや悲劇ですね。教育で大切なことは、教える側の上司が部下に尊敬される人間性を持っているかどうかです。例えば部下がミスしたときに、「俺の責任だ」と言える人間かどうか。「お前がミスをしたのだから、お前が謝ってこい。これも経験だ」という上司には誰もついていきません。逆に言えば、部下から尊敬される人でなければ上司は務まらないし、教育もできないということです。

――そうですよね。問われるのは、教育する上司の質ですね。手塩にかけて育てた若手が、もし会社を突然辞めてしまったら、会社も間違った教育をしていたと気づくのでしょうか。そのときはもう手遅れですね。ともあれ、近年は「最近の若いやつは」と自慢するのはカッコ悪い、ダサいという風潮が出てきていますから、それに恐竜上司も会社も早く気づいてほしいですね。

野崎 そうですね。そして私たちも恐竜にならないように十分気をつけたいものですね。

 

野﨑PHOTOCATCH(のざき・だいすけ)。日本労働教育総合研究所所長、グラウンドワーク・パートナーズ株式会社代表取締役、社会保険労務士。上場企業の人事部でメンタルヘルス対策、問題社員対応など数多の労働問題の解決に従事し、社労士事務所を開業。著書『「ハラ・ハラ社員」が会社を潰す』(講談社+α新書)など。

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