政治・経済

もしかすると、このインタビューが掲載される頃には、もはや肩書も政党名も変わっているかもしれない――。野党の構図が再編含みで大きく変わるという激動の通常国会となった。その再編の中心でタフな交渉をしている中心人物が増子輝彦・参議院議員だ。昨秋の総選挙では野党合流が迷走し、民進党、希望の党、立憲民主党に3分裂した。増子氏は民進党の幹事長として、安倍一強に対抗するには、野党が再結集するしかないと統一会派や再編へ動いているが、事態は依然流動的だ。「きれいですっきりした形の再編とは何か。そのためには、民進や希望がそれぞれ再分裂や分党で別れ、野党全体が、立憲を中心にしたリベラル野党と、保守系野党の2つに再結成となるかもしれない」(希望幹部)との流れも感じさせる。そんな中、「寛容」が信条の増子氏は各党各議員らと膝詰めで話し、不毛な数合わせではなく、みんなが納得する再編へ尽力している。今国会の政治テーマも含め聞いた。

増子輝彦氏の思い “仮死状態”の野党を早く元気な姿に戻したい

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ましこ・てるひこ 1947年生まれ。福島県出身。70年早稲田大学商学部卒業。在学中より初代自治大臣故石原幹市郎参議院議員秘書を務める。83年に福島県議会議員に初当選。90年の第39回衆議院議員総選挙にて無所属で出馬し当選。94年自民党を離党し、新党・みらいを結党。その後、新進党に合流し、98年には民主党結党に参画。2007年参議院初当選、現在3期目。17年民進党幹事長に就任。

―― なぜここで野党再編なのか。

増子 基本的には私は日本の政治に2大政党が必要だと終始一貫考えてきましたから。自民党を離党したのもそれが理由です。2009年に民主党政権をつくることができて、取りあえずひとつのゴールには着いたんですが、残念ながら3年3カ月で終わってしまった。わたしは10年続けないと定着しないと思っていました。その後の状況は、あまりにも野党が弱い体制になってしまって、安倍一強政治になった。もう一度国民の皆さんに政権選択の機会を与える態勢をつくりたいんです。

―― 総選挙は絶好のチャンスだった。

増子 去年の総選挙で民進党と希望の党との合流は意味があった。しかし、失敗した。ただ私は、この顛末は全員の共同責任だと思っているんです。前原誠司代表(当時)が希望との合流を両議院総会に諮った。私はかなりの反対論が出て紛糾すると思っていましたが、わずか1時間以内で全員が拍手をしてこれを認めたわけですね。誰一人としてその場から反対して出て行く人はいなかった。いろいろ心配な点はあったとしても最終的には全員拍手で同調したわけですよ。民進党の参議院議員や地方組織いずれ合流していくと。もし結果が良ければ今のような状況は起きなかった。そして残ったままの民進党で大塚耕平代表が選ばれ、私が幹事長になった。普通は、参議院議員の代表、参議院議員の幹事長なんてあり得ません。不規則な党の状態です。われわれとしては衆参一体となった形の中で、もう一度大きな塊をつくって、安倍一強政治にキチっと対峙をしていくのは当たり前なんです。ただ、また永田町の論理で数合わせでひとつの党になるというのはあまりにも拙速すぎるから、まずは国会対策で会派を一緒にやったらどうだというのが「3党物語」です。かつての仲間だった立憲民主党、希望、そしてわれわれ民進で一緒に国会対策をやりませんかと。結果として立憲がどうしても希望とはやりたくないと。

―― 今後の見通しは。

増子 大事なことは、会派といえども政策理念は、ある程度合意して一致しなければならない。ただ100点満点は有り得ない。せめて、70~80点くらいのところで合意できればということで、表でも裏でも3党で話は進めてきました。一番難しかったのは安保法制ですね。そこもお互いが譲って80点のところまできたとは思います。が、やはり最後のところでうまく行かない。民進党衆議院側には、ケジメ論を強く言う人たちがいる。

―― ケジメとは。

増子 総選挙の希望との合流の中で、いわゆるチャーターメンバーである細野豪志元環境相を中心とした人たちが、「三権の長経験者は合流を遠慮してもらいたい」と言ったとか、候補者調整の時にまあいろんなことが水面下でありました。だからケジメをつけろと。

―― 細野氏らは3党合流の際に出て行くとか。

増子 私は、再び排除とか、ケジメの連鎖をしたら大きな塊をつくれなくなると。だからなんとかそこは、“寛容な精神”で。いずれにしても合流の際に政策的な一定のガイドラインをつくったら、当然参加できない人も出てくる。だから希望の中では分党論も出てくるわけですよ。残念ながら、統一会派は取りあえずいったん止まりましたけど、諦めずに3党での統一会派を目指していこうというのは基本的な考え方です。

―― 統一会派はうまくいくのか。

増子 どんな形になるのか、やってみなければ分からない。でも野党がこのままでは“仮死状態”だと思っていますからこれを早く元気な姿に戻すのは野党の責任です。

「改憲を論じる必要はあれど9条にだけは手を付けない」と語る増子輝彦氏

―― 安全保障はどうか。敵基地攻撃能力について、沖縄の米軍基地問題、そして憲法9条改正など今年は議論の年になりそうだが。

増子 私は個人的には憲法9条をこのまましっかりと守るという立場です。9条があって、戦後71年先進国の中で戦争・紛争をしなかったという唯一の国ですから、それが基本的に経済繁栄なり国の安定なり、世界に貢献できる国づくりの基礎であったことは間違いありません。専守防衛は当然ですが、私は憲法9条には手をつけるべきではなく、武力行使はあってはならないという考え方。今回安倍首相が自衛隊の存在というものを第3項に入れると言い出してきた。自衛隊の存在は、誰もが認めている。ただこれが武力を行使する部隊であるかといえば、私は国民の考えはそんなところにいってないと思う。自衛隊は、国が攻められた時に守ってくれると同時に、災害があればまさに身命を賭して復旧に取り組んでくれる存在。東日本大震災のとき、私の地元に自衛隊のみなさんが延べ30万人入ってくれたことは生涯、私だけでなく被災者のみなさんも忘れない。私はむしろ自衛隊の存在を憲法に入れるならば、国民の生活を守るというようなところに加憲すればいいと思ってるんです。

―― では改憲には反対?

増子 しかし一方では、憲法を改正すべきではないかという点も確かにあります。環境権や地方自治の問題だとか、最近出ている総理の解散権の問題、あるいは私学助成の問題だとか。憲法を論じて、修正すべきところは修正していくことに決して反対はしません。私はかつて自民党を離党して新党みらいをつくったときに、憲法への考えはどうですかと聞かれて、「論憲をすべき」と答えました。その中で改正が必要なら改正していくことはやぶさかではない。ただ、憲法9条だけは手を付けないというのが基本的な考えです。

増子輝彦氏の信念 政策を動員していけば原発のない社会はつくれる

201804MASHIKO_P02―― 福島が地元で特に原発問題に取り組んでこられたが。

増子 1千年に1度と言われた東日本大震災、さらに原発事故という複合災害。津波災害については、時間とお金があればある程度復旧できるかもしれない。7年たってある程度方向性は見えてきました。ですが、原発事故だけはまだまだです。これは、今でも5万人近い方々が県内外への避難生活を強いられている。避難指示が出た12の自治体は、大熊と双葉をのぞけば解除になりましたけど、戻ってくる方々は極めて少ない。この原発事故というものには、さまざまな予想外のことがあるわけですよ。私も実はかつて原発推進論者でした。海外にも売り込んでいました。原発は一番クリーンで環境にもいいエネルギーだと思ってきました。だけど、こういう事故が起きてみたら、賠償の問題も含め、国民の不安はますます増してくる。ましてや福島県民の現状を考えたら、原発のない社会をできるだけ早くつくりたいというのが偽らざる心境です。福島の現状を見れば、炉心溶融した、あの高放射性廃棄物の燃料デブリをいつ取り出せるか分からない。1千個以上のタンクに入った100万トン近くの汚染水も海に放置できず溜まっている。さらに、子どもの将来の健康、風評被害の問題。まだいろいろと残っている。福島県の復興は長期的に、それも完全に原発が収束していくには100年かかると私は思っています。

―― 具体的にはどんな活動を。

増子 簡単に言うと、原発事故を二度と起きないようにするためには、脱原発社会を日本をはじめ世界中でつくる。原発がないとエネルギー源が確保できないと言うけれど、今日本の原発がほとんど動いていなくて国民生活、企業活動になにか困ったことは基本的にないわけですよ。多少、エネルギーコストが上がったり下がったりすることもありますが、これも国民から見れば受け入れられる範囲内だと。だからそういう意味で、再生可能エネルギーもしっかりと増やしていかなきゃいけない。また、原発に関わっている雇用とか企業はどうするかといえば、原発をつくって稼働させるのではなくて、世界に既に500機くらいある原発は事故以外の廃炉が必ずくるわけですから、原発廃炉ビジネスに転換するべき。すると今後100年間は黙って、日本の持っているこの力というのが発揮できるわけですよ。政策を動員していけば必ず原発のない社会をつくれると思っています。

―― 原発の本質的な問題は。

増子 大きな問題は、事故処理の困難と、高レベル放射性廃棄物の処分場が世界中のどこにもないということです。廃炉になった後の放射性廃棄物、加えて事故が起きた後の高レベル燃料、そして中間貯蔵施設から最終処分場に運ぶという中・低レベルの放射性廃棄物、この3つの最終処分場をつくらなきゃならないんですよ、日本国内でどこにつくりますか? どこが受け入れますか? 世界の最終処分実験場を私は全部見てきています。私は国会でも超党派の高放射性廃棄物の処分を考える議員連盟をつくりました。原発の在り方を変えていきたい。

―― 原発問題はライフワークとして取り組む。

増子 もちろんです。福島の復興と、エネルギーの大転換がわたくしのライフワークです。特に最終処分場をつくるということが世界で最大の難問となっていますから。私は、福島原発事故の2年後に、中間提言としてまず処分場をどうするのかについて安倍首相の地元も調査してはどうか、国のトップはその覚悟がいるのではないかと言って、随分叩かれました(苦笑)。でも、それこそ政治生命を懸けて、誰かがやらなきゃならない。

原発については、小泉純一郎元首相が年明けに独自に「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表するなど再び動き始めている。増子氏に小泉元首相らと連絡を取り合っているかを訊ねると、「接点はない」と。しかし、「正しいと信じる方向にきちんと進んで行けば、いつかどこかで本線が一緒になる」と、脱原発の政治勢力の結集を予測した。いずれにしても、安倍一強が、政治の緊張感をなくし、政策議論を薄め、揚げ句に政治家の失言や劣化なども生んでいる。対抗する野党がしっかりしていないことも要因だ。統一会派や野党再編などすっきりした形をつくる責任を増子氏は負う。

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