政治・経済

 健康食品として広がりを見せているミドリムシだが、地球環境にやさしいバイオ燃料としても大きな可能性を秘めている。ユーグレナは現在、2020年にバイオジェット燃料を実用化する計画を進めている。ミドリムシのバイオ燃料の展開について、出雲充社長に話を聞いた。聞き手=村田晋一郎 Photo=佐藤元樹

201804BIO_P01

いずも・みつる 1980年生まれ、広島県出身。2002年東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。05年8月ユーグレナを創業し、代表取締役社長に就任。「日本ベンチャー大賞」内閣総理大臣賞をはじめ受賞多数。

ほかのバイオ燃料とは全然違った

―― まずミドリムシでバイオ燃料を開発することになった経緯は。

出雲 もともと私はミドリムシの栄養の抱負さに魅かれていて、栄養失調の子どもたちにミドリムシで元気になってもらうことが念頭にあり、当初はミドリムシがバイオ燃料になるというアイデアはありませんでした。いろいろ調べる中で、栄養素を多く含まない代わりに、油分を多く含むミドリムシがいるのを知りましたが、食料問題解決には役に立たないとあまり関心を向けていませんでした。ところが、2008年頃、当時の新日本石油(現JXTGエネルギー)が新しいバイオ燃料の原料を探していた時に、ミドリムシを試したら、「ほかのバイオ燃料と全然違う」という反応でした。

―― 油が全然違うというのはどういうことですか。

出雲 ミドリムシの油は、軽油に性質が似ているため、航空燃料に適した油になるということがスタートのアイデアでした。

 最新の研究では、動物の死骸がたくさん地層に堆積して、それが何百万年と地層の圧力がかかって原油になったと考えられています。その動物の一つが、例えば5億年前から存在するミドリムシで、ミドリムシも原油のソースになっているとしたら、原油を精製してジェット燃料やガソリンなどを作りますが、同じようにミドリムシの油を精製して、ジェット燃料やガソリンが出てきても、別に不思議な話ではありません。

―― 従来の軽油に性質が近くて使い勝手が良いことは、ミドリムシ由来のバイオ燃料の長所だと思いますが、そのほかの長所や逆に欠点はありますか。

出雲 最大のメリットは、原料となるミドリムシの生産性の高さです。ほかのバイオ燃料のもとになる高等植物は、非常に進化していますが、成長は遅い。ミドリムシは単細胞の生物なので、光合成で細胞分裂を繰り返して増えていきます。ほかのどの植物と比べても生産性は圧倒的に高いことが最大の利点です。その裏返しで、デメリットは、ミドリムシが増えると、そのミドリムシを食べるバクテリアなども増えることです。よって、ミドリムシを守る高度な培養技術が必要になります。

 2つめのデメリットは、安定供給面についてです。これはミドリムシだけではなく、サツマイモやサトウキビなどもそうですが、農業には天候リスクがつきものです。バイオ燃料で一番難しいのは、ユーザーは毎日同じ量を使いますが、作る側が天候リスクを回避することは非常に難しい。恐らく未来になっても、100%バイオ燃料という時代が来る可能性は低く、ベースを原油で確保して、プラスアルファとして、例えば50%がバイオ燃料、50%が石油という使い方になると思います。それでも石油を50%削減できますから、随分良いと思います。

普及のカギは規制緩和

201804BIO_P02

バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの完成予想図

―― 事業化に向けた動きとして、全日空などと「国産バイオ燃料計画」を進めていますが、その進捗は。

出雲 横浜市の鶴見区で千代田化工建設にバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの建設を依頼していますが、今年の10月31日に完成し、19年前半から本格的に運転を開始します。設計では100%稼働すると、毎日5バレル、国産のバイオ燃料が生産できます。19年にしっかり準備しノウハウを蓄積して、20年には、みなさんに安心して使っていただける燃料にしていきます。

―― 現状で課題はありますか。

出雲 技術的な課題はないです。ただ民泊やライドシェアなどと一緒で、規制緩和が課題です。今までミドリムシからバイオ燃料を作ることは誰もやっていないですよね。もちろん安全なものであることはわれわれがしっかりテストしていきますが、その上で、ミドリムシから作った燃料を飛行機に入れてもよいことにしてもらう必要があります。ミドリムシを搾って作ったジェット燃料を安心して使っていただけるようにするには、いろんなチャレンジが残っています。

―― 20年に実用化し、順調に事業を拡大していくと、将来的には既存の事業よりもバイオジェット燃料の事業のほうが、売り上げはかなり大きくなると思いますが。

出雲 現在、当社の売り上げは100億~150億円の規模ですが、これをこれからコツコツと食品や化粧品などの事業で200億円、300億円へと成長させていきます。一方で、例えば航空燃料は、全日空と日本航空の2社で毎年約1兆円使っていますが、COP21で日本は30年までにCO2を26%削減することになっています。ですから、全日空も日本航空も今後、バイオジェット燃料の購入は不可避になると思います。そのとき、食品や化粧品の売り上げも増えていると思いますが、バイオ燃料も大きくなる可能性はあると思います。しかし利益は分からないです。直観的な話ですが、航空燃料はそんなに利幅が取れるビジネスではないので、利益貢献という意味では食品もバイオ燃料も大きく変わらないと思います。

 どちらが大事ですかとよく聞かれますが、地球環境の問題も、人の健康寿命を延ばすことも、両方とも大事ですので、両方のビジネスを通じて社会貢献していきます。

 

【ユーグレナ】関連記事一覧はこちら

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る