政治・経済

 健康食品として広がりを見せているミドリムシだが、地球環境にやさしいバイオ燃料としても大きな可能性を秘めている。ユーグレナは現在、2020年にバイオジェット燃料を実用化する計画を進めている。ミドリムシのバイオ燃料の展開について、出雲充社長に話を聞いた。聞き手=村田晋一郎 Photo=佐藤元樹

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いずも・みつる 1980年生まれ、広島県出身。2002年東京大学農学部卒業、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。05年8月ユーグレナを創業し、代表取締役社長に就任。「日本ベンチャー大賞」内閣総理大臣賞をはじめ受賞多数。

ほかのバイオ燃料とは全然違った

―― まずミドリムシでバイオ燃料を開発することになった経緯は。

出雲 もともと私はミドリムシの栄養の抱負さに魅かれていて、栄養失調の子どもたちにミドリムシで元気になってもらうことが念頭にあり、当初はミドリムシがバイオ燃料になるというアイデアはありませんでした。いろいろ調べる中で、栄養素を多く含まない代わりに、油分を多く含むミドリムシがいるのを知りましたが、食料問題解決には役に立たないとあまり関心を向けていませんでした。ところが、2008年頃、当時の新日本石油(現JXTGエネルギー)が新しいバイオ燃料の原料を探していた時に、ミドリムシを試したら、「ほかのバイオ燃料と全然違う」という反応でした。

―― 油が全然違うというのはどういうことですか。

出雲 ミドリムシの油は、軽油に性質が似ているため、航空燃料に適した油になるということがスタートのアイデアでした。

 最新の研究では、動物の死骸がたくさん地層に堆積して、それが何百万年と地層の圧力がかかって原油になったと考えられています。その動物の一つが、例えば5億年前から存在するミドリムシで、ミドリムシも原油のソースになっているとしたら、原油を精製してジェット燃料やガソリンなどを作りますが、同じようにミドリムシの油を精製して、ジェット燃料やガソリンが出てきても、別に不思議な話ではありません。

―― 従来の軽油に性質が近くて使い勝手が良いことは、ミドリムシ由来のバイオ燃料の長所だと思いますが、そのほかの長所や逆に欠点はありますか。

出雲 最大のメリットは、原料となるミドリムシの生産性の高さです。ほかのバイオ燃料のもとになる高等植物は、非常に進化していますが、成長は遅い。ミドリムシは単細胞の生物なので、光合成で細胞分裂を繰り返して増えていきます。ほかのどの植物と比べても生産性は圧倒的に高いことが最大の利点です。その裏返しで、デメリットは、ミドリムシが増えると、そのミドリムシを食べるバクテリアなども増えることです。よって、ミドリムシを守る高度な培養技術が必要になります。

 2つめのデメリットは、安定供給面についてです。これはミドリムシだけではなく、サツマイモやサトウキビなどもそうですが、農業には天候リスクがつきものです。バイオ燃料で一番難しいのは、ユーザーは毎日同じ量を使いますが、作る側が天候リスクを回避することは非常に難しい。恐らく未来になっても、100%バイオ燃料という時代が来る可能性は低く、ベースを原油で確保して、プラスアルファとして、例えば50%がバイオ燃料、50%が石油という使い方になると思います。それでも石油を50%削減できますから、随分良いと思います。

普及のカギは規制緩和

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バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの完成予想図

―― 事業化に向けた動きとして、全日空などと「国産バイオ燃料計画」を進めていますが、その進捗は。

出雲 横浜市の鶴見区で千代田化工建設にバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの建設を依頼していますが、今年の10月31日に完成し、19年前半から本格的に運転を開始します。設計では100%稼働すると、毎日5バレル、国産のバイオ燃料が生産できます。19年にしっかり準備しノウハウを蓄積して、20年には、みなさんに安心して使っていただける燃料にしていきます。

―― 現状で課題はありますか。

出雲 技術的な課題はないです。ただ民泊やライドシェアなどと一緒で、規制緩和が課題です。今までミドリムシからバイオ燃料を作ることは誰もやっていないですよね。もちろん安全なものであることはわれわれがしっかりテストしていきますが、その上で、ミドリムシから作った燃料を飛行機に入れてもよいことにしてもらう必要があります。ミドリムシを搾って作ったジェット燃料を安心して使っていただけるようにするには、いろんなチャレンジが残っています。

―― 20年に実用化し、順調に事業を拡大していくと、将来的には既存の事業よりもバイオジェット燃料の事業のほうが、売り上げはかなり大きくなると思いますが。

出雲 現在、当社の売り上げは100億~150億円の規模ですが、これをこれからコツコツと食品や化粧品などの事業で200億円、300億円へと成長させていきます。一方で、例えば航空燃料は、全日空と日本航空の2社で毎年約1兆円使っていますが、COP21で日本は30年までにCO2を26%削減することになっています。ですから、全日空も日本航空も今後、バイオジェット燃料の購入は不可避になると思います。そのとき、食品や化粧品の売り上げも増えていると思いますが、バイオ燃料も大きくなる可能性はあると思います。しかし利益は分からないです。直観的な話ですが、航空燃料はそんなに利幅が取れるビジネスではないので、利益貢献という意味では食品もバイオ燃料も大きく変わらないと思います。

 どちらが大事ですかとよく聞かれますが、地球環境の問題も、人の健康寿命を延ばすことも、両方とも大事ですので、両方のビジネスを通じて社会貢献していきます。

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