国際

成熟社会を迎え、子どもの教育、就職、働き方など、さまざまな面において、これまでのやり方が機能しなくなってきた日本。難病を抱えながら息子とともにハワイに移住し、事業家として成功を収めたイゲット千恵子氏が、これからの日本人に必要な、世界で生き抜く知恵と人生を豊かに送る方法について、ハワイのキーパーソンと語りつくす。

黒田マキPHOTO3

(くろだ・まき)10代でカリフォルニアに家族で移住し、空軍に入隊。4年間勤務したのち、退役してMBAを取得。ソニーコーポレーションアメリカ、マリオットホテル、野村證券などを経て、1996年にハワイに移住。ワイキキトロリーの運行などを手掛けるエノアコーポレーションの代表取締役社長に就任し、現在に至る。

空軍でも問題児ぶりを発揮した黒田真紀氏

イゲット まず、黒田さんがアメリカに来た経緯からお願いします。

黒田 簡単に言うと、16歳の時、家族の関係で来たわけですけど、本当の理由は、私が問題児で学校でトラブルばかり起こしていたので、絶対に不良になると両親が心配して海外移住したんです。

まず、カリフォルニアに行って、空軍にいたころは日本や欧州など、いろんなところに行きました。ハワイには1996年に来て、それからずっと住んでいるので、22年になりますね。

イゲット 大学では何を専攻されたんですか?

黒田 2つ学位を持っていて、1つはビジネスアドミニストレーション(経営管理)、もう1つはマーケティングです。卒業後はすぐに空軍に入って、その後学校に戻ってMBAを取りました。

イゲット 空軍に入ったきっかけは何だったのでしょうか?

黒田 子供の頃から男っぽくて、F15戦闘機のパイロットになりたかったんです。男の子が好きそうなオートバイに乗ったり、中身はまるっきり男性でした。ただ、当時女性はパイロットになれなくて、仕方なく空軍の中の頭脳部に行きました。どんな仕事をしていたかは、機密だから言えないんですが。

イゲット 空軍に女性はどれぐらいいたんですか?

黒田 結構少なかったですね。私がスペインにアサインした時は、女性200人、男性4千人ぐらいの比率でした。今ではたくさん女性がいて、50:50になってるかな。女性もパイロットになれますからね。陸軍や海軍では、まだ女性の数は少ないと思いますが。

イゲット 空軍には何年ぐらい所属していたのですか?

黒田 4年いて、退役した後にMBAを取りました。MBAを取った理由は、国からGIビル(退役軍人に対する恩給)がもらえたからです。私としては空軍が好きだったので、20年間勤めてから退職しようかとも思いましたが、そうしなかった理由は、恥ずかしいことなんですが、子供の頃と同じく問題児だったからです。上官に「なんでこれやるんですか?」とかすぐに質問しちゃうんですね。

でも、軍隊では「やれ」と命令されたらやらなくてはいけない。なのに、「こっちのやり方のほうが効率的で生産的じゃないですか?」なんて提案してしまうほうだったから、そのままいても階級を上げるのが難しいんじゃないかなと。軍隊は民間企業より政治的で、ボスに嫌われたら階級を上げるのが非常に難しいですからね。ボスが右向けと言えば右、歩けと言えば歩かなくてはいけない世界ですから。アメリカの軍隊は、一定期間階級上がらないとクビになってしまうんです。だから、たぶん私はクビになるだろうと思って辞めました(笑)。

黒田真紀氏の経歴とハワイに来て感じたこと

イゲット MBAを取った後は、いろんなところで働いたんですよね?

黒田 ソニーやマリオットホテルや野村證券など、「フォーチュン500」に載るような大きな会社で働きました。それプラス、MBAを持っていると大学で教えることができるので、マーケティングやビジネスを学生に教えていました。HPU(ハワイ・パシフィック・ユニバーシティ)でも教えたことがあります。生徒たちと話しているといろんなアイデア出てくるし、こちらが給料もらって悪いなと思うくらい、教えるのって楽しいと感じていました。そのおかげで、今でもHPUから優秀なインターンが取れたりしています。

イゲット ハワイに定住することになった経緯は?

黒田 最終的にハワイに来た理由は離婚です。前からハワイは好きだったし、人生を変えようということで。最初は5年もしたら、アメリカ本土に帰る予定だったんですが、従業員さんたちがいい人ばかりで大好きになって、もう22年も住んでいます。従業員は300人近くいますが、みなさん心が優しいというか、以前勤めていた大企業とは、何かが違いますね。

この会社にきて、人間の良さがわかりました。正直だから、良いことと悪いことをちゃんと言ってくれるし、私も物事をはっきり言うタイプなので。いろんなことで迷惑をかけているとは思いますが、頑張っていただいて感謝しています。

イゲット ハワイで経営者として22年間過ごして、特に大変だったことは?

黒田 キャッシュフローですね。昔の話ですが、金銭的にきつかったこともあります。ただ、人間関係で大変だったことはないです。

イゲット ワイキキトロリーの業績は、観光業界全体のアップダウンにかなり影響を受けるのではないですか?

黒田 完全にそうです。どんなに頑張っても9.11の後はお客さんが半分に減りましたし。外部要因でハワイに人が来なくなった時は本当に大変です。

イゲット 海外から来る観光客以外に、エージェント向けにもビジネスを行っていますよね。

黒田 エージェントは大口の取引先で、トロリーをチャーターしてもらったりしています。ただ、旅行者の習慣が変わって個人でチケットを探す方が増えているし、インターネットでの販売も増えているので、そちらにも力を入れてようと考えています。

イゲット 旅行の仕方が変わってくれば、ビジネスも変わっていきますよね。

黒田 以前はアメリカ人と比べて、日本人は旅行スケジュールを詰め込む傾向がありましたが、今はもっと余裕を持って、リラックスした旅を楽しむ人も増えて来ました。ブランド物を買いに来るというより、楽しみたいとかいろいろ経験したいという人も増えています。そういう方たちに、どうやってプロダクトを売るか考えていかないといけないので、とにかくリサーチ、リサーチ、リサーチです。

黒田真紀氏の理念 ~失敗してもいいからとにかくやる~

イゲット 黒田さんはもともとマーケティング専攻ですから、新しいことに挑戦するのが好きなんじゃないですか?

黒田 大好きです。間違ってもいいし、100回やれば1回は成功するから何しろやってくださいと従業員には言っています。何かをやる前には、当然フィージビリティ・アナリシス(計画実現のための事前分析)を行って、いくらお金がかかってどのくらいの利益率かといったことは考えますが、とにかくやろうと。結構やるのが早すぎたりもして「今日の夜までにやって!」とか。せっかちなのが私の悪いところなんですが(笑)。

イゲット ハワイで一番せっかちかな人間は私だと自分では思っていましたが、まだ上がいたなと思いながら聞いています(笑)。

黒田 だからみなさんに感謝しているんです。こんなせっかちな人間と一緒に仕事していただいていますから。(後編に続く

 

ChiekoEggedDSC_3145

 

(いげっと・ちえこ)(Beauti Therapy LLC社長)。大学卒業後、外資系企業勤務を経てネイルサロンを開業。14年前にハワイに移住し、5年前に起業。敏感肌専門のエステサロン、化粧品会社、美容スクール、通販サイト経営、セミナー、講演活動、教育移住コンサルタントなどをしながら世界を周り、バイリンガルの子供を国際ビジネスマンに育成中。2017年4月『経営者を育てハワイの親 労働者を育てる日本の親』(経済界)を上梓。

イゲット千恵子氏の記事一覧はこちら

 

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る