政治・経済

経営者の感覚、民間の発想……。政治家こそそれをもって政策を立案し法律を作っていかなければというのがこの人の信条だ。平将明衆議院議員。議員になる前の経歴がそのまま議員活動の礎になっている。東京・大田青果市場の仲卸社長時代は、バブル崩壊や金融危機などの中で経営に取り組み、東京青年会議所(東京JC)理事長時代は選挙での候補者公開討論会を実現するなど組織活動の改革に挑んだ。その平氏は、現在、自民党の経済構造改革特命委員会事務局長、クールジャパン戦略推進特命委員会委員長代理、そしてネットメディア局長。新しい自民党の世代交代の旗手として注目を集めている。中でも、経済政策や成長戦略は、党の基本戦略の取りまとめ役を務め、「待ったなし。発想を変え政治主導で」と力を入れている。少子高齢化の厳しい時代に向かう処方箋は、話を聞くとどこまでもユニークな発想があふれる。Photo=幸田 森

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たいら・まさあき 1967年生まれ、東京都出身。早稲田大学法学部卒業。サラリーマン生活を経て、家業の仲卸「山邦」に入社。2005年、衆院選東京4区にて初当選。内閣府副大臣、経済産業大臣政務官兼内閣府大臣政務、自民党副幹事長を歴任。自民党行政改革推進本部副本部長を務める。現在、5期目。自民党の経済構造改革特命委員会事務局長、クールジャパン戦略推進特命委員会委員長代理、ネットメディア局長。


ネット番組の討論では議員の力が問われる

―― 以前から自民党のネット発信に力を入れてきましたね。

 ネット社会になってきて発信がしやすくなりました。自民党が野党になった時に私も参画して本部の1階の喫茶店を改造して「カフェスタ」というネット番組を始めました。ずっと与党だったからマスコミが来てくれるのが当たり前だったのが、野党になったら全然来なくなった。それで自ら発信しようと始めた。ネットメディア局長になる前からずっと番組を続けていて180回ぐらいやっています。

―― 局長として新しい試みは?

 前回の衆議院選挙の時にスペシャルで、河野太郎外務大臣や小野寺五典防衛大臣、岸田文雄政調会長、最終日には安倍総理に来てもらいました。特に北朝鮮のミサイル問題などさまざまな動きがあったので、タイムリーに素朴な疑問、有権者が知りたがっていることを、担当大臣から直接聞こうという企画でした。YouTube再生数は多分5万回ぐらいだと思うんですが、そこから派生した動画にいろいろなタイトルがついて、それが一つ10万回再生とか、どんどん広がっていくんですね。選挙期間中というのは、マスコミは公正中立を旨とするので、あまり突っ込んだ報道をしてくれない。そういう中で、やっていることを正確に、また実績などを伝える意味で、選挙の際の番組はものすごく効果があった。その延長上で予算委員会を生中継して、政策の解説をしようと。

―― 番組の評判はどうか?

 この番組の効果は、自民党議員の力も問われるということなんです。私も含め、解説者たちは結構遠慮せずに言う(笑)。与党でも野党でもダメなものはダメだと。

―― 自民党の単なる宣伝番組ではなく政治家を育てるものになった?

 予算委員会の質問者が後で僕らの解説を見てるんですよ。これは下手な質問をすると同じ党といえどもバッサリやられるぞと。最終的にはこの番組を見ている人たちがその政治家の資質を見ることになりますからね。質疑の中でどれだけ政策の本質を理解しているかも分かるし、委員会を荒らすためだけに無理筋な質問をして、もっぱら進行の時計を止めることだけに専念している議員もいるし、そういうのを有権者が見るわけです。

 与党だって太鼓持ちみたいな質問とか地元の陳情みたいな質問ばっかりしていれば、視聴者はもうちょっと国会議員の質問としてはレベルをあげなきゃいけないんじゃないのかと判断するでしょうから。そういう意味では面白い取り組みだと思っています。

日本の伝統文化の価値を世界で再評価させる

―― 今後少子高齢化や時代が進む中でどんな経済政策を描いているか。

 人口が確実に減っていく中で、1億総活躍など政策が成功したとしても、そもそも1億人という前提そのものは今と比べて2500万人少ないし、さらに減っていく。そうすると、今の日本の豊かさを維持するためには劇的に生産性を向上させなければいけない。今言われている生産性革命って、安倍総理のほうから出てきた言葉なんです。選挙でボーンと出したんですね。そのあとの中身は、党で作ってきたんです。私が自民党の経済構造改革特命委員会の事務局長ですが、選挙後に岸田政調会長に呼ばれて生産性革命のパッケージを作るよう指示され、いろんな方々と議論して作ったんですよ。

―― 全体的なイメージは?

 生産性革命というのは、劇的に価値を増大させることだから、一番親和性の高いのはイノベーションです。イノベーションが具体的に政策にブレークダウンすると何になるかというと規制改革なんです。規制改革には3つ種類があって、全国一律で規制緩和もしくは規制を変えるというやり方、地方分権するというやり方、国家戦略特区を使うやり方の3種類です。

―― 具体的に聞かせてください。

 国家戦略特区については近未来技術実証特区を、私が特区担当副大臣の時に作りました。ドローンとか、自動走行、遠隔医療、遠隔教育などを集中的にやろうと。実際に千葉市などで動いていますが、まだまだスピード感が足りない。だからもっと強力なハイパー国家戦略特区(レギュラトリー・サンドボックス)を提案しました。さらに、全国一律の規制改革で最も経済効果が大きいと思われる電波にも手を付けるべきだと。電波の電波帯の開放、規制緩和。これは今公的部門に割り振っている電波をモニタリングして、集約して半分ぐらいを開放しようと思っているんです。一説では3兆円ぐらいのバリューがあります。IoTなどの時代、電波が全然足りないので、電波帯を開放することで新たなイノベーションが起きたり、新たなベンチャーが参入できたりする。

―― 電波は規制緩和によって、かなり大きな額を生み出しますね。

 それから、イノベーションというとAIとかIoTの話になって、「ああ、俺は関係ない」と思う人がいっぱい出てくるんですね。だから、そこへもう一つ「地方創生」なんです。私が取りまとめの中で一つ挙げたのは錦鯉特区。クールジャパン特区です。新潟県の小千谷市、山古志村、長岡市というのは錦鯉の生産で有名で、それが今ヨーロッパで大変なブームになっているんです。大体ヨーロッパで火がつくとアジアの富裕層がついてくるという構図になっている。年明けに、東京の平和島で行われた全日本錦鯉品評会というのがあって、オーナーがみんな自慢の錦鯉を持ち寄るんですね。で、1匹、数千万円する。

―― 数千万!

 オーナーの4割が外国人ですよ。彼らはいけすを増やしたいけど場所がない。一方で農家の人たちはうちの余っている水田を使ってもいいよとか、農地を使っていいよと言うけど、農地法や農振法の規制があるから簡単に貸し借りができない。これをクールジャパン特区という新しい国家戦略特区にして、農地法、農振法の特例措置を作って錦鯉の生産を増やしましょうと。

―― 日本のオリジナルコンテンツに目を向けるということ?

 日本の伝統文化である素材を、日本の国内マーケットだけ見ていたからみんな斜陽になってしまった。だから世界で再評価させて、価値を最大化させてさらに量も増やす。そのことによって生産性革命が起きるわけですよ。

次世代の経済政策は日本の価値を知ることから

201805SEICHI_P01―― そう考えれば、日本にはまだまだたくさんコンテンツがある。

 公務でセルビアとかクロアチアに行ったんですが、ときの首相の第一声が「私は日本食の大ファンです」と。「私は天皇陛下の大ファンだ」と言った首脳もいた。日本に対するリスペクトがすごい。和食だけじゃなく文化も。今、西陣織も広がってきていて、帯じゃない幅広の西陣織を作る機械でタペストリーにして、ヨーロッパのお金持ちなどの間ではペルシャ絨毯と競合しています。昔は、巨大なクルーザーの壁掛けに何百万もするペルシャ絨毯があったのが、今は西陣織だったりする。

―― 日本の価値を知るところから次代の経済政策は始まる?

 やっぱり経済合理性がないとサスティナブルじゃなく、打ち上げ花火で終わってしまう。儲かるようになって初めて拡大再生産が成り立って人が集まる。新潟についてはもっとアイデアがあると思っていて、錦鯉特区にしたらバイヤーが世界中から来るんだから、それを受け止められる民泊の仕組みとかライドシェアリングの仕組みを入れるとか。あとは、白赤黒に統一して街全体を錦鯉デザインにするとか。北欧なんかそういう街がありますよね。それが地方創生なんです。

―― 地方創生が具体的に見えてきますね。可能性を感じます。

 ヨーロッパを見ると、例えばフランスは観光、食事もフランス料理があるし、芸術や美術もある。イタリアはデザイン、オランダは農業、オーストリアが林業、ノルウェーが漁業、ドイツは工業といったところでしょうか。日本はどちらかというとドイツ型ですよね。でも、日本が地方創生をやればヨーロッパにおけるイタリアのポジションもフランス、オーストリア、ノルウェーのポジションも全部とれる。しかもEUのマーケットよりもアジアのマーケットのほうが大きし、地政学的にも有利なわけです。自動車も頑張るけれどそれ1本では限界がきます。だから、観光でも伝統文化でも農業でも林業でもデザインでも稼ぐことで、日本が人口減少を上回る生産性革命ができると私は思っています。

―― 発想や法律を組み合わせるクリエーティブな政治が必要ですね。

 今後の政治家に問われている能力は、陳情を受けてそれを役所につなぐのではなく、クリエーティビティですよね。例えば、病床規制なんかはすごく厳しくて、今は海外から大金持ちが美容整形手術を受けに日本に来ても、ベッド数が少ないからすぐ帰ってしまう。そこで、病院のベッド自体は増やせないけど、六本木や赤坂のラグジュアリーな複合施設の中にクリニックがあって、レジデンスがあって、レジデンスがシェアリングエコノミーで民泊ができるようになっていれば中長期の宿泊もできるので、お金持ちは滞在して食事も買い物も楽しめるようにする。こうやってビジネスになっていく。組み合わせですよね。ソリューションを提供して、あとは民間でも頑張っていく、そんな政治家と政治の在り方が必要ではないでしょうか。

平氏は、次期総裁選に出馬すると見られる石破茂元幹事長の派閥に属している。石破氏の政権構想でもある「地方創生」の支柱にも関わっている。歯に衣着せぬ発言は時として敵も作るが、自らが歩んできた民間の発想と手法による経済政策は、実現可能なリアリズムを感じさせ、党内でも説得力を持つ。自民党の世代交代の旗手として、積極的な経済提言を期待したい。

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