政治・経済

 ふくおかFGと十八銀行は、2016年2月に経営統合を発表した。しかし公正取引委員会(公取)の審査が長期化している。公取は、経営統合により寡占化が進むと、長崎県内での「競争」がなくなり、借り入れをする事業者が高金利を余儀なくされると問題視している。

 しかし、今どき経営統合で競争がなくなって金利が上昇するなんてことが起きるのか。地域金融のプレーヤーは極めて多重的。地銀以外にも信金・信組や政府系金融機関など多くの貸し手が存在する。フィンテック革命が進行する中、新たな金融事業者も地域の中小企業金融に参入しつつある。地銀2行が統合したくらいでは「競争」がなくなることはない。

 公取は、中小企業は他県では借り入れができないともいうが、資金調達は経営者としては基本中の基本であり、地銀の県内シェア集中によって資金調達の選択肢が奪われるという理屈はあまりに中小事業者を馬鹿にしている。

 また、金利の引き上げは供給不足に追い込むことで可能になるが、人口減少の進行で「右肩下がり経済」の中、地域の金融産業は過剰供給構造に陥っている。この状況下で、県内シェアを高めることだけで金利をつり上げるなど至難の業だ。

 もっと深刻な問題は、競争が必ず消費者利益に資するというドグマがかえって地域の消費者に不利益をもたらすリスクだ。地方銀行は、地域住民や地域企業にとっての身近な金融インフラという公共財機能を担っている。急激な人口減少社会において、経営統合を否定していると、個々の金融機関は過当競争で最低限必要な固定費をカバーできなくなり、顧客密度の薄い地域から撤退していく。

 私たちも地域で公共交通事業を営んでいるので実感として分かるが、競争を煽るほど撤退ペースは加速し、地域における公共財機能の喪失も加速する。金利どころではない大きな社会的損失である。

 わが国の公取の発想は、経済が右肩上がりで、石油や鉄鋼など、巨大な設備投資が必要な規模型産業が主役の20世紀型の頭からあまり切り替わっていない。

 しかし地域金融ビジネスは規模の経済性はあまり効かないし、そもそも今や産業の主役は知識集約型産業やサービス産業であり、古典的な規模型産業ではない。

 そして目下の競争政策の重要課題は、地域においては急速な人口減少と財政難の中で地域の経済社会インフラ機能を維持するために競争のルールをどうデザインするか。他方、世界においてはグーグルやアマゾンのようなデータ独占型のプラットフォーマーによる新たな競争排除の問題である。

 この人類史的に新たな課題の解決には、古びたドグマを振り回すのではなく、社会現実を直視し、知的な創造性をフルに発揮して、新たな競争政策を打ち立てることが必要だ。

 競争政策は経済政策の中心であり、イノベーションの鍵ともなる。もし「法律屋」による「執行機関」である公取がかかるルール創造機能を果たせないなら、政策機関として「競争政策庁」を新設し、そこで世界をリードする新たな競争政策立案を担わせることが必要だ。

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