文化・ライフ

 若さはあまりに早く過ぎてしまうからこそ、その頃の思い出は特に輝いて心に残っているのでしょうか。大事なことや、つらいこともたくさんあったはずなのに、ふと浮かぶのは眩しい出来事ばかり。先日も心の引き出しから、懐かしい思い出が次から次へと脳裏に……。

 プロ棋士になって2年目、19歳の時初めて大学に教えに行きました。当時は囲碁を打つ大学生が多く、数校の大学にご縁ができ、学園祭にもよく呼んでいただきました。私自身、大学に行きたくて、推薦校も決まっていたのですが、弟子入りしていた木谷道場からのお許しが出ずあきらめた経緯があります。ですから憧れの大学生活を垣間見るのは心弾むひと時でした。校内を案内してくれる同世代の人たち、対局後コンパでにぎやかに会話する時間。とても楽しかったし、皆に優しくしていただきました。一橋大学は11年、理科大は7年行き、気が付くと随分年上になっていました。ほかにも東大、慶応や早稲田にも時々。

 実はこの頃の経験が、いつか私が一人前になった時、学生囲碁界に恩返しをしたいなと思ったきっかけなのです。

 このようなことを思い出したのにはある出会いが。今夏、一橋大学2年生の若者と話をする機会がありました。

「子どものためのジャズコンサートがあり、お子さんたちが3千~4千人集まります。せっかくのチャンスなのでその中から少しでも碁に興味を持ってくれる子どもたちを増やすよう努力したいのです」と。もちろん応援したくなりました。そして彼はその夢を実現しました。10月の末、六本木ヒルズアリーナ内のブースで子どもたちに碁を教えている彼の姿が。王唯任棋士の応援もあり、100人を超す子どもたちが参加。拝見しに行き、とてもうれしく胸がいっぱいになりました。大成功でした。

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