政治・経済

今年も異常気象が日本各地を襲っている。その原因といわれるのがCO2排出量の拡大だ。そこで求められるのが再生可能エネルギーの利用だが、これまで日本では遅々として進まなかった。それがここにきて環境が変わり始めた。日本の再エネの未来やいかに――。文=関 慎夫

 

火力発電並に下がった再エネ発電コスト

 

 「世界に比べ10年遅れ」

 これが日本の再生可能エネルギー(再エネ)について語る時によく使われる言葉だ。

 日本の電力のうち、水力発電や太陽光発電、風力発電などの再エネが占める割合は15%にすぎない。しかも8%は古くからある水力発電のため、地球環境対応として登場した再エネ比率はわずか7%にとどまっている。

 ヨーロッパでは既に再エネによる発電量が化石燃料による発電量を上回る国も出始めた。ヨーロッパ全体では、再エネ比率は32%に達する。その後押しをしたのが再エネの発電コストの急激な低下だ。

 例えば太陽光発電の場合、2011年には1キロワット時当たり28セントだったものが、17年には10セントにまで下がっている。風力発電(陸上)なら、11年の8セントが、昨年は6セントにまで下がった。化石燃料の発電コストは5~17セントであり、再エネは十分、コスト競争力のあるものとなった。

 ところが日本の場合、国土は狭く急峻な地形のため、メガソーラー発電をしようにも土地の手当てがむずかしい。風力発電も同様で、最近は大規模な洋上風力発電も計画されているが、陸上よりはコストも高くつくなど地理的条件が厳しい。

 それでも3.11以降は、日本各地に雨後の筍のようにソーラーパネルが設置された。これは再エネ促進を促すため、既存電力会社に対して再エネで発電した電力の全量買い取りを義務づけると同時に、固定買い取り(FIT)価格を1キロワット時42円と高額に設定したことで、新規参入が相次いだ。

 中でも太陽光発電は、遊休地にソーラーパネルを設置するだけでいいため人気が集中。その結果、新たに始まった再エネ発電のうち、8割を太陽光発電が占めることになった。

 ところが、ここ2、3年は新規の太陽光発電の認可量はほとんど増えていない(※太陽光発電所はFITの申請を行い、認可を受けたのち建設となる)。というのも、FIT価格は毎年見直されており、最初は42円だったものが、今年度は19円と半額以下となったためだ。

 そのため現在建設中のメガソーラーも、FIT価格の高かった時期に認可されたものがほとんどだ。太陽光以外でも、FIT価格は発電方式によって細かく決められているが、すべての方式ともに価格は以前に比べ大きく下落している。それが再エネ普及を妨げる。

 それだけではない。再エネの大きな障害となっているのが送電の空き容量の問題だ。再エネで発電された電力は既存電力会社の送電網によって運ばれる。

 しかしその送電網は、電力会社の発電能力に合わせて築かれている。ここに新たな再エネ電源が加わった場合、容量不足になってしまうため、電力会社は接続を断らざるを得ない。

 受け入れるには送電網を増強する必要があるが、その費用は複数事業者で共同負担することになっており、再エネ業者にしてみればコストに直結する。この他、環境アセスメントに長い時間が必要なことなどもコストに反映するため、下がったFIT価格では収益を上げることがむずかしい。このようにさまざまな要素が絡まりあって、再エネ普及がなかなか進まないというのがこれまでだった。

 「でもここにきて潮目が変わった」と言うのは、再エネ施設の開発・運営を行うレノバ社長の木南陽介氏。

 というのも、再エネをめぐる環境が大きく変わりつつあるからだ。

 

政府、金融機関も再エネ投資を後押し

 

 この7月、政府は第5次エネルギー基本計画を発表した。エネルギー基本計画は3、4年に1度発表されるもので、日本のエネルギー政策の中核をなすものだ。今回はそこで「再エネの主力電源化を目指す」と位置付けられた。前回も再エネに関して「導入を最大限加速していき」と書かれていたものの、あくまで火力や原子力の補完的位置付けだった。それがエネルギーの主力にまで格上げされた。

 また、3月には洋上風力のための海上利用ルールを定めた新法が閣議決定された。風力発電はヨーロッパにおいて再エネの主力となっており、全電力の10%を占めるまで普及が進んでいる。ところが日本では前述のように適した用地があまりない。そこで期待されるのが洋上風力で、地上に比べて安定的に風力を得ることができるなどのメリットがある。しかし現状では漁業権などとの兼ね合いもあり、環境アセスメントに長い時間がかかってしまう。そこで政府は新たなルールを定めることで、建設までの手続きを簡素化することを決めた。今国会中にこの法案が成立するかは微妙だが、遅くとも秋に予想される臨時国会では成立する見通しだ。これにより日本の洋上風力発電市場は今後、拡大することになる。

 既にレノバは秋田県沖に70万キロワットの洋上風力を計画しているほか、世界最大の洋上風力発電企業であるデンマークのオーステッドも日本進出を表明するなど、今後、参入が相次ぐことになりそうだ。

 また再エネ普及のネックとなっている送電線の空き容量の問題にしても、現在、運用ルールの変更の議論が進展中で、これまでよりも柔軟に送電網を使う方向に進んでいる。これにより送電コストが引き下げられれば、再エネ発電業者の参入のハードルは低くなる。

 金融機関においても再エネをめぐる環境は大きく変わってきた。環境や社会問題への取り組みへの評価を「ESG」と呼ぶが、金融機関はESG投資を加速している。メガバンク3行は、いずれも昨年頃から「化石燃料への投資を減らし、再エネへの投資を拡充する」方針を明らかにしている。これまでは収益面から再エネへの投資には慎重姿勢を崩さなかったが、ここにきて推進へと舵を切った。

 生保など他の金融機関でもこの動きは顕在化しつつあるばかりか、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でも、ESG特性を持つ株式に3兆円を割り当てる決定をした。世界では既にESG投資の潮流が本格化しているが、日本もようやく追いついてきた。

 こうした流れを受けて、事業会社でも再エネへの取り組みが本格化してきた。7月6日には再エネ普及に取り組む異業種連合「気候変動イニシアティブ」が発足した。これはイオンやソフトバンクグループ、パナソニックなど105の企業・団体が設立したもので、今後セミナーを開くなど再エネへの啓蒙活動を進めていく。

 

東京電力が目指す再エネ収益1千億円

 

 「RE100」に加盟する日本企業も増えている。RE100は、事業運営を100%再エネで調達することを目標に掲げるイニシアティブ。発足は14年で既に130近い企業が参加した。日本企業としては、昨年4月、リコーが第1号の加盟企業となった。リコーは1990年代から環境経営を掲げてきたが、それをさらに一歩前に進めたことになる。

 リコーに続いて、積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、イオン、ワタミ、城南信用金庫の7社がこれまでに加盟。いずれも2040年ないし50年での再エネ調達100%を掲げる。世界に目を向ければ既にマイクロソフトやスターバックスが100%を達成しているだけに、日本企業もそれにならいたいところだ。

 このように、政策が再エネへと大きく舵を切り、金融機関の投融資判断や民間企業も電力利用方針も脱炭素社会実現に向けて動き始めた。最近では東京電力が国内外で再エネ発電事業を拡大し、将来的に1千億円規模の収益確保を目指すなど、既存の大手電力会社も再エネ事業に本腰を入れ始めた。環境が整い、参入事業者が増えれば、必然的に発電コストが下がり、それがさらに利用を増やす。そのスパイラルに日本も間もなく突入する可能性は高い。

 今年5月1日、ドイツでは昼間の2時間半、再エネの発電量が国のすべての電力消費量を上回った。国単位で再エネ供給が100%を超えたのはこれが初めてだ。これと比較すると日本の再エネへの取り組みはまだまだ不十分と言っていい。それでも一歩ずつ、確実に前に進み始めている。

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