政治・経済

日本マクドナルドHDの動向に注目が集まっている。業績低迷から同社を再生に導いた原田泳幸氏が経営の一線を退く人事を発表、カリスマ経営者不在の下で再び業績は浮上するのか。 (本誌/大和賢治)

止まらない顧客流出

一線を退く原田泳幸氏

一線を退く原田泳幸氏

 2月19日、日本マクドナルドHDは原田泳幸社長兼CEOが3月25日の株主総会を経て、代表権のない会長に退き、後任として事業会社である、日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長兼CEOが就任することを発表した。

 2004年に業績が低迷していた日本マクドナルドHDのCEOに就任、同社をV字回復に導いた原田氏だが、13年以降は一転して業績が低迷、回復の糸口をつかむことなく経営の第一線を退くこととなった。

後任を託されるサラ・カサノバ氏

後任を託されるサラ・カサノバ氏

 2月6日に発表された13年12月期の連結決算から、同社の置

かれた厳しい状況が認識できる。対前年の売上高は11・6%減、同経常利益に至っては何と56・9%減と、これまで外食の〝勝ち組〟の名を欲しいままにしてきた面影はなく、後継を託されるカサノバCEOは大胆な戦略転換を迫られるのが必至な情勢だ。

 経営危機に瀕していた同社の業績を立て直し〝原田マジック〟とも評された経営戦略に果たしてミスがあったのか。就任時にさかのぼって検証する。

 原田氏がアップルコンピュータ日本法人から日本マクドナルド社長に招聘されたのは、04年のこと。当時、日本マクドナルドは価格戦略の迷走から顧客離れが止まらず業績が急速に悪化、具体的な再建策も乏しくまさに正念場を迎えていた。

 就任早々、原田氏が取った施策はQSC(品質・サービス・清潔)の徹底、翌年からは業績回復の原動力となる「100円マック」を導入する。チーズバーガーやドリンクなどをラインアップした「100円マック」だが、導入に際しては「また価格をいじるのか」など下馬評は散々だったものの、蓋を開ければ大幅な客数増をもたらし、既存店売上高も回復基調へ転じる。

 さらには「100円マック」で来店客を拡大する一方、並行して相次いでキャンペーンを実施するなど、一度つかんだ顧客を逃さない施策で、高価格商品への誘導にも成功する。その後も打つ手打つ手がことごとく当たり、右肩上がりの売上増を実現したことから、〝原田マジック〟とも評された。

 以降も好調を維持してきた同社の業績に黄信号がともったのが一昨年の4月。既存店売上高の前年割れが常態化、さらには、同社の必勝モデルでもあった来店客数も同11月からマイナス基調が鮮明となる。

 要因は諸説いわれているが、最も打撃を与えたのは、IEO(気軽に食事をできる場を提供する)市場の変化だ。以前の取材でも同社広報は、「競合が多種多様な施策を展開したことで、優位に立っていた弊社とのギャップが縮まってしまった」と外的環境の変化を挙げていた。

 競合という意味では、外食チェーン以外に、新手の競合として立ちふさがっているのがコンビニエンスストア(CVS)だ。

 近年、CVSは粗利の高い弁当や総菜といった中食を強化しているが、一方で、最近では店内にイートインコーナーを設ける店舗も増加傾向にある。中食需要を抑える上で、前提となるのは簡便性だ。特に昼食時など時間が限られている場合は、食べるまでの早さという点ではCVSの持ち帰りやイートインの優位性は高い。さらにCVSは単品買いが可能なことから他の外食に比べて安価で済ますこともできる。

 1つに顕著な例がコーヒー。マクドナルドでは08年に100円の「プレミアムローストコーヒー」の販売を開始した。これは原田氏の必勝パターンである来店客数の増加に当初は大きく寄与した。しかし、セブン&アイHDが持ち帰り用コーヒー「セブンカフェ」の販売を昨年1月から開始した後、多くの顧客が流れたという指摘もある。

 そういう意味で、マクドナルドの苦戦は、同社広報が言う外的要因があるのは確かだろう。

ニーズの読み間違い!?

 しかし、消費者目線で言えば違った要因があるとの声も聞かれる。繰り返し述べるが、マクドナルドの必勝パターンは1つに来店客数の規模が挙げられる。重要な役割を果たしていたのが「100円マック」だ。

 しかし、同社は「100円マック」を中止し、新たに「バリューピックス」と命名し、単価を120円〜200円に引き上げた。同社いわく「これまで100円メニューで終わっていた顧客に対し、目先を変えることで、プラス20円〜100円の購買喚起を促した」とのことだった。

 確かに、この施策が功を奏し、昨年5月には14カ月ぶりに既存店売上高で前年を上回ることに成功した。しかし、このカンフル剤の効果も2カ月で息切れ、8月には再び前年割れしてしまう。さらに、この施策は強烈な顧客離れを誘発、5月以降、今年1月まで、来店客数が前年を上回った月は皆無だ。

 「そもそもマクドナルドは安さを求めてくる層と高価格帯商品も受け入れるという2つの層がある。『100円マック』をなくせば来店客数は減るのは必然です。今や高価格商品を受け入れる層に下支えされているのが実態です」(業界関係者)

 これら施策の迷走により失った顧客を取り戻すのは容易ではない。

 原田氏に代わり陣頭指揮を執るカサノバCEOは、04〜07年まで原田氏の右腕として同社の成長を支えるなど日本市場を熟知しているとの見方から、多くの期待が寄せられている。

 だが、足元の状況は予断を許さない。2月に同社が発表した1月の既存店動向では、高単価商品をラインアップした「アメリカンヴィンテージ」キャンペーンが寄与し、売上高こそ対前年を上回ったが、来店客数は依然として前年割れが続く。

 来店客数から完全に客単価アップへとフォーカスしていくのか決断を迫られている。

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