政治・経済

景気回復への期待からか、消費の2極化が顕在化している。価格訴求型商品への一定のニーズはあるものの、多少価格が高くともプチ贅沢を楽しみたいという層も確実に増加している。小売り各社は、これら消費の変化への対応を迫られている。 (本誌/大和賢治)

コンビニエンスストア”ローソン”満を持しての新業態「ローソンマート」

ローソンマートの概要を説明する玉塚元一COO

ローソンマートの概要を説明する玉塚元一COO

 コンビニエンストア(CVS)2位のローソンは2月17日、新業態「ローソンマート」を2月20日に横浜にオープンすることを発表した。この「ローソンマート」は、通常の「ローソン」と生鮮コンビニ「ローソンストア100」の中間に位置するもので、両業態の強みを1店舗に集約、既存顧客に加え、今後、確実に拡大するシニア層も新規顧客として取り込みたい狙いがある。

 ローソンはこれまで通常のコンビニ業態のほか、「ストア100」、健康志向のニーズにこたえた「ナチュラルローソン」、調剤薬局・ドラッグストア併設型といったマルチフォーマット化に積極的に取り組んできた。

 そういう意味では、現状、この「ローソンマート」は、それらさまざまな取り組みから生まれた新業態かもしれない。

 「特に『ストア100』では、生鮮・日配品等、生活者を支援する品揃えでは強烈な学びがあった。特に面積が50坪以上でしっかりとした品揃えができている店舗では、多くのヘビーユーザーの獲得に成功している。『ローソンマート』ではここで培ったノウハウを注入する」とローソンの玉塚元一COOは新業態への意気込みを述べる。

 確かに「ストア100」では生鮮品の鮮度管理、値引きによる売り切り等、「ローソン」では蓄積できないノウハウを吸収、一方で、生鮮品のマグネット商材の価値を痛感してきた。

商品力への自信を語る、安平尚史・ローソンマート社長(中央)

商品力への自信を語る、安平尚史・ローソンマート社長(中央)

 新業態の特徴について「ローソンマート」の社長に就任した安平尚史氏は、惣菜の店内調理、NBとPBを両建で展開することで消費の2極化に対応、さらに「地元密着」、「電子マネーおよびカード決済」、「公共料金の支払い」、「ATMの設置」によるサービス機能充実の4つを挙げている。言うなれば「ローソン」にはあって「ストア100」にはないニーズの高いサービスを、この業態で融合したということだ。

 既存の「ストア100」で顕在化している弱点を玉塚氏は、次のように述べる。

 「ストア100では100円均一という縛りから、商品が小型化にならざるを得ず、2〜3人向けのボリューム感のある商品が実現できなかった。また逆に日配商品では100円という価格が高いと感じられることもあった。ローソンマートでは、価格設定に自由度を付加することで、さらなる品揃えの充実を図りたい」と、これまで取りこぼしてきた顧客獲得へ期待をにじませる。

 玉塚氏の話には、なるほど説得力があるが、しかし、今回の新業態に踏み切った背景には違う側面も存在するのではないか。生鮮コンビニとして「ストア100」には一定の支持があり、日販も決して低くはない。

 だが、ほとんどの商品が100円ということで相対的に利益率は低い。それを払拭するために「ストア100」では、NBの並立販売による粗利ミックスにも着手、ここ最近は利益面の改善にも尽力してきたことからもそれは分かる。さらには通常業態の「ローソン」を取り巻く経営環境も厳しさを増していることも新業態への背中を押したのではないか。

 行政による「まちづくり3法」の度重なる改正といった都市計画の迷走から、近年、地域住民の台所を支えてきた個人商店が減少、高齢者を中心とした〝買い物弱者〟が社会問題になっているのはご存じのとおり。その受け皿として近年、CVSが存在感を高めたことで「ローソン」もまた、その恩恵を被ってきた。

 

「ローソンマート」の成否はミニスーパーとの差別化にある

 しかし、ここへきてイオンの「まいばすけっと」やマルエツの「マルエツプチ」といった大手がミニスーパーの出店を加速、生鮮品はもちろん加工食品でも価格訴求力を武器に勢力を拡大し、CVSの新たな競合として、その領域を浸食している。

 玉塚氏は「ミニスーパーに顧客を奪われているという認識はない」と強弁するが、実際のところ「ローソン」の既存店売上高、来店客数でも、前年を下回る場面も散見される。これはCVS間のパイの食い合いも要因の1つだが、新手の競合として頭角を現しているミニスーパーの存在は否定できないだろう。

 そういう意味では「ローソンマート」の成否はミニスーパーとの差別化にある。

 この点について玉塚氏は、「ミニスーパーのフォーマットはあくまで大型スーパー。われわれの『ローソンマート』はあくまでコンビニの進化型。コンビニならではのサービス、小商圏ならではノウハウが差別化のポイントとなる」と述べるが、果たして消費者にその違いをアピールできるか疑問は残る。

 実際問題として、PB、NBとも大手スーパーのスケールメリットを後ろ盾にする「まいばすけっと」、「マルエツプチ」と価格競争では勝ち目はない。強いて言えば、公共料金の支払いができること、粗利が高く消費者ニーズの高い店内調理による出来立て惣菜・弁当を提供できることがPRポイントだ。

 これら状況を総合的に判断すれと、最低でも50坪以上は必要という「ローソンマート」の店舗面積さえクリアできれば、今回、コンバージョンを予定している「ストア100」以外、住宅立地の「ローソン」からの業態転換も十分に考えられる。

 もっと言えば、この「ローソンマート」こそがローソンの今後の主力業態になるのではないか。

 同社の出店戦略を注意深く見守る必要があるだろう。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る