マネジメント

あなたの会社に「経営理念」として落とし込まれた言葉はあるか?

 

 御社の「経営理念」、あるいは「社是」は?

 そう問われて、即座に答えられる人が、どれくらいいるのだろうか。

 もし、答えられたとしても、それを「自分の行動指針にしています」と言える人となるとその数はさらに減るに違いない。

 経営理念や社是は、だいたい社長室や社員の誰もが見える場所に掲げられている。

 ひと昔前までは、朝礼などで社員が唱和するといった会社も多かったと言うが、今では社員の多くが、理念の存在すら知らないというのが実情ではないだろうか。

 決して、「経営理念を覚えなければならない」などというわけではない。ただ、理念の生まれた背景や意味を知り、共感できるならば、必ず役に立つものだ。そこには会社創業の想いや使命が込められているからだ。そのパワーを会社全体の推進力にしない手はない。

 「強い会社」の条件とは、なんであろうか。

 強い会社とは、当然業績がいい、利益率が高い。

 資本主義的な観点からいえば、株主価値を最大化している会社が挙げられる。

 しかし、会社は短期利益だけを上げればいいわけではない。永続することが求められる。そこには社会的使命と、関係する人間への責任が浮かび上がる。

 つまり、利益しか見ず、社会的使命や社員を大事にしない会社が生き残れるわけがないのだ。

 本当に強い会社は、目に見えない「社風」というものを行動や目的に落とし込んで醸成し、言語化している。そしてその言葉の力を会社の強さに結び付けている。

 その言葉とは、社会の中での会社の立ち位置、社員と会社との関係などを表しており、背景にあるストーリーとともに大事にされ、それが経営理念や、それに準ずる行動原則という名の言葉になっているのだ。

 その「言葉」は、社内においては意思統一や行動の一貫性につながる共通言語となり、社外においては、その会社を表す言葉となっている。

 何より、経営者がその大切さを一番理解しており、まるで組織の「DNA」をバトンのように大事に手渡し続ける社風づくりに邁進している。

「経営理念」を経営者と社員が共有できているか

 

 例えば、サントリーには、「利益三分主義」という言葉がある。

 事業で得られた利益の一部を社会に還元していこうという精神で、社会と会社とのつながりを表している。また、その活動の源になっているのが、社外の人にも広く知られる「やってみなはれ」だ。

 2代目社長の佐治敬三氏が、アサヒ、キリン、サッポロと大手3社がガッチリとかためていたビール業界に参入する時、創業者の鳥井信治郎氏にかけられた言葉だ。

 社会に還元する。そのために、挑戦する気持ちを持ち続ける。このサイクルが、会社全体に共通した「言葉」として根付いているところに、企業隆盛の原因を垣間見ることができる。

 もちろん「言葉」はただ言い伝えるだけでは、ただの文字でしかない。

 いくら歴史的に評価の高い名経営者の、名言と呼ばれる言葉であっても、その会社の社員に「DNA」として受け継がれていなければ、何の役にもたたない。例え、毎朝朝礼で唱和したところで意味はないのだ。

 日本を代表する大手メーカーの凋落もそこに原因の一つがあるように思えてならない。

 ただ、諦めてはいけない。「言葉」は取り戻せる。

 三井物産では、本文でも紹介するが、過去の2つの不祥事から形骸化していた言葉の魂を取り戻した。

 経営陣と社員が一体になって、創業者や先人の志を振り返り、価値観を共有することで、言葉の真意を改めて感じとり、DNAとして再び体内に入れることに成功したのだ。

 巻頭インタビューに登場していただいた日本航空の植木義晴社長も、破綻前の会社にも、確かに「経営理念」があったが、それは自分たちの言葉になっていなかったと述べている。

全社員が持つJALフィロソフィ手帳

全社員が持つJALフィロソフィ手帳

 だが、ニュースなどでも取り上げられた、「JALフィロソフィ」は、今では確かに社員たちの共通言語になっているのだ。

 その背後には、会社と従業員の信頼関係が新たに構築されたからにほかならない。

 会社を興す時、この世の中を悪くしようなどと思って起業する人はいない。100%社会に貢献したい、人に喜ばれたいと思って仕事は、会社は生まれてくる。

 その原点を忘れれば、いずれ会社はうまくいかなくなるに違いない。

 御社にも、創業当時に抱いた社会に貢献する夢があったはずだ。もう一度振り返り、それを今にどうやって生かすのか、一度、考えてみるのもよいのではないだろうか。

 そして、その想いが言葉になり、経営者と社員とが同じ言葉を共有し、行動した時に、はじめて企業の強みが確かなものになるに違いない。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

「消費者が電力の供給者を自由に選択できる時代へ」―― 再エネ主体の「顔の見えるでんき」をコンセプトに掲げるみんな電力が目指すのは、富が一部の人々に独占されないフェアな世界だ。法人顧客を中心に、同社への支持が集まっている理由を大石英司社長に聞いた。(吉田浩)大石英司・みんな電力社長プロフィール 消費者が発電事業…

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る