マネジメント

昨年、創業者の池森賢二氏の会長復帰とともに2008年以来、5年ぶりの社長再登板になった宮島和美氏。「ファンケルらしさ」を取り戻す上で、重要視するのは「スピード」ともうひとつが「人材教育」だ。復帰からもうすぐ1年、改革の進捗状況を聞いた。

 

スピード10倍、期間は3年

 ーー 再登板からまもなく1年がたとうとしていますが。

 宮島 2012年の年末に、名誉会長(当時)の池森に呼ばれて、社長復帰を打診されびっくりしました。実はその年の初めから全社挙げて化粧品事業の改革に努めておったのですが数字が付いてきていませんでした。

 池森が一線を引いてこの10年余り、業績も伸び悩んでおりましたし、新しい事業やサービスが生まれていなかったこともありましたから、オーナー独特の危機感というのがあったのでしょう。それで池森が復帰を決めたのだと思います。

 復帰を決めたことで非常に忙しくなりましたね。さらに、ホールディングという話が出てきて、その前段階としてのカンパニー制に移行することが決定するわけです。普通であれば担当部署もあるんですが、時間がないものですから関係者で話し合い、約3カ月で、3月1日からの新組織と4月1日からの新体制にこぎ着けました。

 ーー めまぐるしいですね。

 宮島 息つく暇もない感じでしたが(笑)、池森が新体制になった時に社員に向けて発した言葉が、「10倍のスピードで改革を行って3年で立て直して退くんだ」ということでした。あとは、それを確実にレールに乗せなければならないものですから、池森がCEOで、私が実行するCOOという立場で役割を分担しました。3年しかないわけですから、当然経営の判断も速くしなければならないわけです。

 ーー 改革はどのように進んでいますか。

 宮島 まず、以前よりガラス張り経営が大事だという池森の考え方から、中国ビジネスの減損や不採算部門の整理を行い、前期は創業来初の赤字決算をしました。また、安倍総理の規制改革の1つである健康食品機能性表示に向けた検討が進められており、私も通販協会の代表として参加しています。これによって、商品の素性を明らかにすることができますし、お客さんが誤認しないようにすることができます。1962年にJ・F・ケネディが提唱した4つの権利がようやく守られることになるんです。これで、消費者もサプリメントを利用しやすくなりますし、業界の浄化にもつながると思います。

 ーー ホールディングへの移行も間近に控えていますが。

 宮島 ホールディングへの移行と同じタイミングで消費増税もあります。この2つに対応すべく、プロジェクトを同時並行で行わなければなりません。3月31日の仕事が終わってから、翌4月1日の朝8時までに両プロジェクトチームが、会社の1つのシステムを間違いなく修正していかなくてはいけないわけです。期末は、駆け込み需要があると思いますから売り上げがはねると思われますが、当然反動があると思われます。そこを含めて3年で以前のような高収益の会社に戻していきたいですね。そのためにも、即断即決、スピードが重要になります。

 

人材教育は「数字」ではない

 ーー 創業の精神に立ち返ると宣言されていますが。

 宮島 「ファンケルらしさ」とは、基本方針にも掲げられているように、いつもお客さま視点で行動していくことです。池森にはお客さま視点しかない。それも自然にお客さまの立場で考えられる。私たちのように訓練して身に付くわけじゃなく、出発点がお客さま側にあるんですね。お客さまが何をしてもらいたいかが分かるんです。

 中内(㓛氏・ダイエー創業者・宮島社長はかつての側近)さんもそうでした。経済合理性やグローバル化が絶対じゃないんです。中内さんは、そんなことに何の興味も示さなかった。創業者なんてそんなものですよ(笑)。哲学を超えて「夢」の実現のために突っ走っていただけ。時代によって変わってはいますが基本は同じ。中内さんであれば「流通革命」であり、池森であれば「無添加を基軸にした美と健康」だけを追い求めています。ですから、池森の理念、精神を受け継いでもらおうと、人材育成に努めているんです。

 ーー ファンケル大学ですね。

 宮島 ファンケル大学というのは店舗スタッフや新任の管理職の教育はもとより、企業が一番大切にしている理念教育も行っています。その理念教育は池森自身が行う池森経営塾です。期間は1年で、いずれ後継者もここから出てくれればと期待しています。以前、米国の某チェーンと提携した企業の研修を見学させていただいたのですが、事業提携する際、本業とはかなり畑違いの分野だったため、社内ではさまざまな意見があがったそうですが、今では日本にしっかり根付き成功を収めています。その会社の方は「事業ではなくノウハウ」を買ったとまでおっしゃっていました。

 今、ファンケル大学のスタッフがカリキュラムをつくっていますが、近い将来、企業内教育組織を「ノウハウ」の域にまで持っていきたいと考えています。

 人材育成組織が人事部門についていて、機械的に教育を行うのではなく、実際に役立つものでなければならないわけです。また、「もっと女性を登用したほうがいい」という意見や「女性の役員比率」についての質問を受けるのですが、役付き女性の数などで判断するのではなく、実際の会社運営でいかに活躍するかが大事で、肩書だけ与えればいいというのは間違いだと思っています。企業の人材育成は形だけでは全く意味がないのですから、見た目や数字にとらわれないようにしています。

 池森改革も残り2年。「ファンケルらしさ」を取り戻し、大きく飛躍してみせますのでご注目ください。

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